表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

第一話 最底辺の転生

俺の名前は山本一郎。いや、かつてはそうだった。三十五歳、派遣社員。毎日上司に怒鳴られ、同僚に無視され、SNSで承認欲求を満たすだけの空虚な人生。ある日、過労で倒れ、目が覚めるとそこは異世界。薄暗い洞窟、湿った土の匂い。体を確認すると、緑の肌、尖った耳、貧弱な体躯。ゴブリンだ。それも、群れの最底辺。

ステータス画面が浮かぶ。HP10、攻撃力3、防御力2。ゴブリン仲間にすらバカにされる存在。だが、頭に声が響いた。

【転生特典:『創造の筆』スキル獲得。描いたものが現実に具現化。ただし、代償が必要。】

チートスキルだ! 試しに地面に棒で「リンゴ」と書くと、赤いリンゴがポンと出現。だが、頭がズキンと痛み、HPが8に減った。代償は体力か。強力だが、使いすぎると死ぬ。

ゴブリン集落は地獄だった。強いゴブリンが食料を独占、弱い俺は殴られ、ゴミのような残飯しか与えられない。地球の職場と変わらない格差社会。絶望しかけた夜、森の奥で少女を見つけた。

金髪、青い瞳、ボロボロの服。鎖で繋がれ、地面に座り込む。彼女は呟く。「もう、誰も信じない……」俺はこっそり近づき、リンゴを転がす。彼女は驚き、俺を見て微笑んだ。「ゴブリンなのに……優しいの?」

彼女の名はミリア。十七歳。人間の貴族の奴隷だったが、逃げ出し、ゴブリンに捕まった。貴族社会では、貧民はゴミ同然。ミリアは貧民街出身で、親を貴族に殺された過去を持つ。「私、生きる価値ないよね……」

俺は首を振る。声が出ないので、地面に「価値ある」と書く。ミリアの目が潤む。「ありがとう……君、なんて名前?」

俺は「イチ」と書く。ミリアは笑う。「イチ、友達になってくれる?」俺の心が温まる。地球で得られなかった絆だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ