クリスマスイブの悲劇

作者：ルーバラン

今日はクリスマスイブ１週間前！　大好きなあの子に告白するためにも、うまく誘わないと！　俺、緊張症だからうまく誘えるか心配だもんな、誘うところはメールにしとこかな……さてと、そうと決まったら早速メールを打たないとなー。

『こんばんは！　今日も寒かったねー。もうすっかり冬だね。俺の息もずっと白くなってたよ。ところで、美久さん、来週のクリスマスイブ、空いていますか？　俺空いているんですよ』

……っと、こんなもんでいっか。送信っと。

-----

「はぁ……来週はクリスマスイブだって言うのに、いまだに予定が空いてるなんて……誰か誘ってくれないかなあ……また今年も彼氏がいないメンバーで集まるのもいやだし……」

家でごろごろしながら来週のクリスマスイブの予定を考えていた。この前やった合コンに来てた人から誘いが来たら、とても嬉しいのに……。

「あ、メールだ。えっと、誰だろ？　あ、信行かあ……合コンで盛り上げ担当やってた人だ。結構いい人だったなあ。あ、もしかして、クリスマスのお誘いだったりして！　……何々？」

『こんばんは！　今日も寒かったねー。もうすっかり冬だね。俺の息もずっと白くなってたよ。ところで、美久さん、来週のクリスマスイブ、相手いますか？　俺相手いるんですよ』

……何こいつ？　ケンカ売ってんの？　とりあえずムカッと来た返信しとこ。

『何あんた？　イブは書く仕事があるのよ！　ほっといて！』

送信っと……。ああ、なんかむしゃくしゃする！　ほんとに仕事をしに行こうかな……それはそれで寂しいけど。そういえば信行の相手って誰なんだろ？　後輩の今井さんかなあ？　ああ、腹立つ！

-----

……お、返信来た。何々？

『何あんた？　イブは隠し事があるのよ！　ほっといて！』

美久さん、俺今、ものすごい聞きたい……隠し事って何だ？　ってか美久さん、隠し事があるって言ってしまった時点で隠し事ではない気がするんだけど……。ううん、誘ってみてもいいのかなあ。とりあえず誘ってみようかな。

『それなら、もしよろしければ、来週の今日時計台前で会ってくれませんか？　渡したいものがあるんです』

……と、これでいいよな。送信っと。

渡したいもの……いきなり指輪を送ったりしたらびっくりだよな。クリスマスプレゼントっぽいなにかを渡せるよう考えとこ。

-----

……あっ、なんかまた信行からメール来たし。また自慢メールだったら嫌だなー。えっと、何々？

『それなら、もしよければ、来週の京都境内で会ってくれませんか？　私タイ物があるんです』

……タイ旅行にでも行ってきたの信行？　というか、ここ千葉なんだけど……なんでわざわざクリスマスの週に京都境内で会わなきゃいけないのよ……信行って馬鹿じゃない？

やんわりと断るにはどうすればいいかなあ。

あっ、そうだ。実家の富山に行ってることにしよっと。

『来週は富山に行ってるので、ちょっと無理です。ごめんなさい』

送信っと。これであきらめてくれるでしょっと。

-----

っお、来たなー……

『来週鳩山に言ってるので、ちょっと無理です。ごめんなさい』

鳩山……鳩山……鳩山由紀夫かなあ？　鳩山首相に何か文句言いにでも行くのかな？　そう言えば、美久さんの実家って沖縄だったような……。普天間基地問題、いい加減どうにかしろーといいにでもいくのか？　……そんなわけ無いよな。

でも、来週は無理なのかあ……じゃあ、せめて今からでも会いたいな。

『ねえ、ちょっといい？　俺、今から会いに行きたいんだ！』

……送信っと。

いい返事帰ってきますように！

-----

……またメール来たよ。これだけはっきり断ってるのに……あ、諦めのメールかな？

『ねえ、ちょっといい？　俺、今から愛に生きたいんだ！」

……信行、私に宣言されて私はどう反応すればいいの？

『好きにすれば？』

……まあ、これでいいでしょ。

-----

……おっ、来た来た。『好きにすれば？』……なんか微妙な反応だなあ……行っていいのか悪いのか。

まあ、『好きにすれば』っていうのは来てもいいよって事だよな。よし、それじゃ行くことにしよう。ついでにとても思わせぶりな事を書いて、美久さんの心をゲットだ！

「それじゃ、今行きます。俺さ、美久さんといるときって超幸せなんだ！」

……送信っと。

よし、コート来て、今から美久さんの家に行くぞ！

-----

……また来た。あんなにあからさまに素っ気ないメール送ってるのに、しつこいなあ。

『それじゃ、今井来ます。俺さ、美久さんといるときって調子合わせなんだ！』

「死ね！　お前なんて死んでしまえ！」

信行から来たメールを読んだ瞬間、私は携帯電話を床にたたきつけた。

二度とあいつからのメールなんか読みたくも無い。

これからあいつから送られてきた全てのメールを削除して、完全に着信拒否にしてやるんだから！

美久さんの家まで着いてチャイムを押した途端、冷水をぶっかけられた……ああ、これが美久さんの返事なのか……。

誤変換には気をつけよう。