みずたまり
よく水溜まりを見ている子だった。
大雨の後はいつもの何倍も時間をかけて歩くことになった。すべての水たまりをじっくりと観察するからだ。しかし、それ以外は全く手のかからない不思議な子だった。
私にとって初めての子供だったのでそういうものかと思っていたのだが、周りの話を聞いていると少し特殊だと感じ始めてきた。しかし、私はわが子が水たまりを見る目が本気だったのでそれを注意することはできなかった。ある大雨が過ぎ去った日、私はわが子に聞いてみた。
「なんでいつも水溜まりみているの?」
わが子はなぜそんなことを聞くのだろうといったように目を真ん丸にした。
「お母さん、いつも水溜まり見ているから気になっちゃって」
「いっぱいいるから」
「いっぱい」
「うん。みずたまりだといっぱいみえるから」
「なにがみえるの?」
「あれ」
水溜まりから目を離さずに上に指をやった。指の先には雲が漂っていた。確かに水溜まりを反射させてみる雲は見ていて楽しいのかも知れない。
「いつもと違うように見えるもんね」
「うん」
私はわが子の無邪気なリアクションに少し救われつつ手を引いて進もうとした。
「あぶない」
わが子は危機を感じたようでそういうといつもより強く手を引いた。
「どうしたの?」
「ううん。だいじょうぶだった。」
「何があったの」
「おんなのひととぶつかりそうだったから。」
「え?」
先ほどまで誰もいなかったはずである、あたりを見回したが当然のように誰もいない。
「ちょっとまって」
そういうとわが子は水たまりを見始めた。
「大丈夫だったみたい」
水溜まりの端に幽かな波紋が現れた




