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神様といえども万能では無いらしい

「私は、死んだはずでは?」

「そう、君は死にました~~~!!!」


首に圧力がかかり、首の骨が折れ、そして意識が無くなったはずである。

なのに、今はまた意識がはっきりとある状態で、目の前で白いでかい鳥がふざけた口調で何かを言いながら踊っている。


「でも、死に際の君の願いの力はすごかった! だから、神様はあなたの願いを叶えてくれると言いました~!」


なるほど?

これは、前世知識によくあった「回帰して破滅を回避しつつ復讐を果たす」ってヤツだね? 

まちがいない。私はそういうのに詳しいんだ。


「では、何歳ぐらいの頃に回帰させてくれるんですか?」

「回帰じゃないよぉ?」

「は!?」

「やり直せるならぁ~って考える前に、願ったことがあるでしょ?」

「……」


まさか?


「呪ってやる! 呪ってやる!って! すっごぉ~い執念だったよ! それはもう、神様に願いが届くぐらいに強い思いだったよ! 良かったね! 神様が願いを叶えてくれるってさ!」

「呪いをサポートしてくれる神様がどこにいるのよ!」

「ここに!いるよぉ~!」


まさかの、呪ってやるという方の願いが受理されていた。

そんなばかな。


「ほら、下を見てみなよ」


 白いでかい鳥が翼を下に向けた。

 釣られて視線を下へとむければ、そこは処刑場だった。

 縄にぶらさがっている赤いドレスの私。

 半開きの口からはだらりと長い舌がたれ、目玉がとびだしそうなぐらいにみひらかれている。

 ドレスの裾からみえる足には、片方だけ靴が残っていて、色々な液体がそこから滴り落ちている。

 

「うっ」


 自分の姿だとしても、とても見ていられる姿ではなかった。

 目を背ければ、元婚約者が王女の肩を抱き、身を寄せ合って処刑場から出て行く姿が見えた。

 王子様の姿はすでに無い。


「自分が死んだって、実感できたぁ?」


 目の前に鳥の顔がにゅっと飛び出してきた。少し獣臭い。

 

「私、もうちょっと美人だと思ってたわ」

「死に方によるよねぇ。あの人達は、よっぽど君が憎かったのかね。苦しい処刑方法選んだよね」


 聞き捨てならないセリフが聞こえたぞ。


「処刑方法に、種類があるの?」


 確かに、前世の中世ヨーロッパならギロチンという処刑道具があった。あれは、一瞬で首を切り落とすので処刑者の側には慈悲深い処刑具だと言われていた。

その前の時代でも、斧で首を落とすとか服毒するとか、あまり苦しまない処刑方はあったと記憶している。

もちろん、今回の私のように首吊りだとか火炙りの刑といった苦しませる系処刑方もあったが。


ただ、私はこの世界に転生してから人の処刑なんて見たこと無かった。

平和な国だったのだ。


「だいたいさ、魔法がある世界なのに処刑方法がこんな古臭い方法なのに疑問もたない?」

「伯爵令嬢としてお(しと)やかに育ったのよ。処刑方法になんて興味を持つ間も無かったわよ」


足下では、処刑人たちが粛々と私の体を片づけている。

犯罪者として処刑された私は、家の墓には入れないだろう。

家族は大丈夫だろうか。連座で処罰を受けるなんて事にならなければ良いのだけれど。


「なんか、テンション普通だけど復讐心なくなっちゃった?」


デカイ鳥が小首を傾げて私の顔をのぞきこんできた。


「そんなわけ無いでしょ。憎いわよ。ただ、痛みや苦しみが消えて処刑された実感が薄くなっちゃったのと、驚きすぎてどう受け止めて良いかわからなくなっちゃってるだけよ」

「良かったぁ~。それじゃあ、呪いで復讐がんばってね!」


デカイ鳥がそう言って手を振った。

キラキラひかりながらその体が透けて行っている。


「ちょっと待ちなさいよ! これからどうすれば呪えるのかとか、この体でなにができるのかとか説明は!?」

「君は悪霊になった! 君の可能性は無限大だ!」

「説明になってない!!! 回帰出来ないなら普通に転生させてよ! こんな不幸な人生忘れて、新しく幸せな人生を送れるようにしてよ!」

「すでに叶えられた願いを撤回は出来ないよぉ~。神様の意思に逆らうことになるからねぇ~」

「そんな!」

「安心しなよ~。呪って…って…呪…まくって満足…れば成仏……るからねぇ~」

「ちょっと!」


キラキラの残滓を残して、デカイ鳥は消えてしまった。

悪霊になった! が説明になってるとでもおもってんのか、あのデブ鳥め。



デカイ鳥に対して立てていた腹が収まってくると、周りを見回す余裕が出てきた。

気がつけば処刑部屋にはもう誰もおらず、静まりかえっていた。


私は天井近くの空間に浮かんだ状態で立っており、服装は処刑された時に着ていたドレスのままだ。


そう、ドレスなのである。


王女とのお茶会に出席し、毒を盛ったと言われて拘束され、尋問、収監、裁判とすべて終わるまで着替えることも許されなかった。

普通、囚人服みたいなのに着替えさせられるものじゃないの?

しらんけど。


私は、この世界ではごく普通の伯爵令嬢として育った。

前世知識で才女として扱われ、王女の遊び友だちとして扱われたが、それ以外は普通の伯爵令嬢だった。


処刑方法にどんな種類があるのかなんて知らないし、犯罪者がどんな扱いをされて、どんな流れで処刑に至るのかも知らない。

私のこの扱いが、妥当なのか不当なのかもわからないのだ。


もちろん、冤罪だよ。

私は王女に毒なんて盛ってない。その直前まで、親友だと思っていた王女に盛る理由がない。


最後の王女と婚約者の言葉と表情。あれで、私をハメた動機はだいたいわかった。

絶対許さない。


そして、私が禁固刑や流刑じゃなく、処刑になったからには実家にも累が及ぶ可能性がある。

それはなんとか避けなければならない。

お父様もお母様もお兄様も弟達もみな私を愛してくれていて、私も愛していた。


前世で家族と折り合いの悪かった私は、この世界で家族愛を手に入れたのだ。

壊してなるものか。



悪霊となった私の目標は二つ。


私の冤罪をはらし、家族を守ること。

私をハメた人間を恐怖のどん底に突き落とし、生きていることを後悔させてやること。


そこまでしないと満足して成仏なんか出来ないだろう。


悪霊令嬢として貰ったアディショナルタイム。

呪って呪って呪いまくってやる!


首を洗ってまってろよ! 性悪王女と浮気令息め!

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