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King Road  作者: 坂田リン
エピローグ
36/36

誕生日おめでとう



「ルーッ!」


溌剌はつらつとした元気な女の子の声が、1人の青年の耳によく聞こえた。


「わーっ!」

「おっとと。急にくっつくなよ」

「えへへ♡。くっつきたかったんだもーん」


1人の少女が青年の体に抱きつき、成長した体を寄せ付ける。その笑顔は天使と言っても過言ではない。


少女の名前は、マキナ=アーセナル。ルーに救われ旅路を共にしてきた彼女は、月日が流れるにつれ体の成長が著しく表れた。


身長は10cm以上伸び、髪型はユマンのようにロングヘアーとなり顔立ちもより整い、元の天真爛漫てんしんらんまんな性格がより魅力的に映し出され、容姿端麗な美少女へと変わっていた。


さらに本人が危惧していた胸部も、人並み以上のサイズへと変貌していた。


唯一変わってないのは、ルー(かれ)への"愛"だけだ。


ルーの見た目はそれほど変わっていない。落ち着きさが加わり大人びたように見えるぐらいで、マキナが好きなルーのままである。


「お前は相変わらずだな」

「私は変わらない! 私たちのラブラブっぷりをみんなに見せつけちゃおうぜ?」

「でも、こんなところじゃ言える相手もいないだろ」


地面に座りながら、ルーは辺りを見渡しながら告げる。


そこは原っぱが広がっていた。見ていれば、迷い事なんてどうでもよくなるぐらい、広大で、壮大で、とても心が癒される景色だった。今日は空も青すぎるほど快晴で、それがまた美しさを引き出させていた。


2人の背後にはぽつんと建っている木造1軒家。そして家を囲むように咲いている──桜の木。


桃色よりも少し薄い色で、満開に咲いた時が1番美しい。風が舞い花弁がひらりと落ちてゆくその様も高貴に見える。


ルーがこの原っぱを見つけた時、運命を感じた。そして無理を言ってこの地に家を建て、ルーとマキナは2人で住み始めた。


「ふ~ん。ふんふふ~ん♪」

「ご機嫌だな」

「だってルー、最近はずっと一緒にいてくれるもん。忙しかったのはわかるけどさ」

「悪かった。でも、全部リベルたちに任せるわけにはいかないだろ? まだフィーニスが残した根は排除しきれていない。別に世界を丸ごと良くしようなんて思ってない。ただ少しでも……誰かの救いを拾ってあげたいんだ」

「……ルーは優しいね。シエンさんもきっと喜んでるよ」

「そうだといいな」

「おーい! 2人ともー!」


元気な少年の声に、ルーとマキナが振り向く。原っぱの向こうから歩いてくるのは、リベル、ユマン、サラ。そしてその隣にもう1人茶髪の少女がいた。


「あ、リベル君! ユマンさん、サラさん! クラルちゃんも!!」

「久しぶりですお2人とも。て、ボクとはそこまで久しぶりじゃないですかね?」


柔らかい表情を浮かべる少女──クラルがいた。清楚な雰囲気が混じり合い、大人になったという感じが目に見えている姿をしている。


マキナがクラルに近づきお互い手を優しく握り合う。


「今日はありがと! 忙しいのにごめんね」

「大丈夫ですよ。研究も切羽詰まってるわけではないですから」

「今何してるんだっけ?」

「治癒魔道具の力を使って、魔力の常時回復の実験をしています」


クラルはトスラ王国の研究員となっている。クラルが生成する治癒魔道具が高く評価され、国のために、国に住む人々のために役立てて欲しいとシャロット王女から頼まれ、今の地位に就いている。


「常時……回復?」

「冒険者や騎士団の方たちが使っている装備などに、私が魔道具に施している治癒の術式を組み込むんです。魔力で装備の強度を上げたりするなどの魔力操作で、その装備に備わっている魔法術式が機能して、常に自分の体に治癒魔法をかけることができる。簡単に言えばこんな感じです」

「つまり……治癒魔法を持っていない人たちも自分で回復することができるってこと? それすごいね!」

「試作品を俺の騎士団でも使わせてもらってるんですが、すごいですよ。魔法は全員が使えるわけじゃないんで、とてもありがたいです。流石、癒しの神様だ」

「や、やめてくださいよリベルさん。私はそんなんじゃないです。だけど嬉しいです。この国に来れて、やっと両親の思いを継げたなって思えてます」


満足そうな表情を浮かべるクラル。彼女はここに来て、自分のやりたいことをやっている。


「でも用心しろよ。世界は良い奴ばかりじゃない。どっかのクソ野郎みたいに、お前の持つ力を奪いにくるかもしれないからな」

「そこは大丈夫ですよルー兄さん。俺らがいるんで」


リベルが自信満々な返事をする。その姿に「頼もしいな」とルーが返した。


「さあ、そんなことより始めましょうよ、花見!」


リベルが催促する。実は割と楽しみにしていたのである。ルーもマキナも腰を上げ、シートを下に引くなど準備を始める。


「そういえば、アカさんは元気にしてます?」

「ああ。たまに都に行って顔を見てるよ。元気そうだった」


ドラゴンであるアカは自身の住処──竜の都へと帰って行った。「主らなら、いつでも歓迎する。遊びに来るといい」と言い残して。


シャロット王女もアカの姿を見た時は驚愕を隠せなかったが、ルーたちに言及しようとはせず、特に何も訊かなかった。


今は静かに暮らしている。


「今日の花見に呼ばなかったんですか?」

「何年も仲間たちに会えなかったんだ。そっとしといた方が良いだろ?」

「それもそうっすね」


準備を終え、全員地面に敷いたシーツの上に座る。四方八方を見れば、そこは桜の絶景だけが視界を覆い尽くす。


「さあリベル様。私が作った料理をご堪能──」

「なにしれっと変えてるのよ。8割は私が作ったんだから。あなたはおにぎり握っただけでしょ」

「むっ……ちゃんと愛を込めて握りました」

「やっぱ料理できる女は魅力的に映るのよ。はいリベル、あーん♡」

「ちょっと! 私が先です!」


ぎゃあぎゃあと、リベルを取り巻く彼女たちが争う。マキナがそんな光景を見て笑う。


「楽しいね」

「ああ……そうだ。マキナ──」



「誕生日おめでとう」



ルーが口にした言葉に、マキナははっと目を見開いた。


「……覚えててくれたんだ」

「なんだよ。1年前もその前の年も祝っただろ? みんなで祝うために、今日を花見の日にしたんだから」

「うん……でも、やっぱり嬉しいな。こうやってちゃんと言われるの」

「その気持ちはわかる。それを当たり前にしていこう。この先何回も訪れる誕生日を祝って、美味しいもん食って、幸せになろう」

「……うん。大好きだよ。ルー」

「俺も大好きだ」


そう言った後、ルーはポケットから小さな箱を取り出しマキナに渡した。ずっと前から考えて買った、マキナへの誕生日プレゼント。


それを見たマキナは涙を流した。それは悲しくて出た涙ではない。嬉しくて涙が溢れ出てしまった。


涙を袖で拭いて見せたマキナの笑顔を、ルーは一生守っていきたいと、心からそう思った。




「ルー。私を救ってくれて、ありがとう」




END    

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。初めて1つの作品を完結させることができました。書いていてとても楽しかったです。残念ながら、PV数はあまりよろしくなかったのですが、誰か1人でもこの作品を読んでいる時に、「これ面白い!」、て思ってくれたら、嬉しいことこの上ないです。

この作品を面白いと思ったら、感想、高評価、ブックマークをよろしくお願いします。


最後に僕が言いたいことは──王道展開最高っ!


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