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King Road  作者: 坂田リン
後章:救われた人々
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暗殺者アサシンの気配消去はフィーニスにも通用する。


フィーニスは気づけず、また聖魔剣(エクスカリバー)の刀身が斬られた。


斬撃を受けた瞬間には、フィーニスはリベルの仕業だと悟った。


(いや待て……あいつに両腕はなかったはずだ)


黄金の刃で引き裂かれ、破壊の光で引きちぎった。


リベルの"力"を使うための"手段"を奪った。間違いなかった。リベルという存在は、完全に盤面から外したはず。


(どうやって……)


フィーニスは首を回し見つめる。地平線の先まで見渡せる魔眼(まがん)が捉えたのは──



("義手ぎしゅ"?)



ユマンの肩を借りているリベル、そして、"右腕の義手"。


ピンと来たのは、ルーが持っていたはずの魔法── 奇械兜鎧アガートラムだった。


道具(それ)か……)


リベルは笑っていた。しかし前のような不気味な笑みではなく、妙にすっきりしている様子だった。


「目覚めたよ」


リベルがそう言った気がした。


余所見(よそみ)すんなっ!」


ルーの声が轟く。黒魔剣こくまけんの刺突を放とうとしている。


聖剣が折られフィーニスがリベルを確認するまで、ほんの刹那の出来事だった。


それでもルーはフィーニスの懐まで潜り込めた。


(だからどうした?)


フィーニスは開いた左手を腹の真ん中に置く。その手は黄金に輝く、神の手だった。


(リベルでもない貴様如き、そのなまくらも破壊してやる!)


炎剣えんけんの剣先が左手の甲に当たる。黄金の輝きが津波のようにでかく、恐ろしく、押し寄せて来る。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


だがルーの炎と黒が、黄金を塗り潰し呑み込んでいく。


煉瓦れんが色のような灼熱の炎火が、ルーの雄叫びに鼓動するように燃え盛る。


「貴様……どこにそんな力が……っ!」

「いっけえええええええええええええええっ!!!」


……ポタ。


神の手から──血が一滴、そして──


ドシュッ!!


「……っ!」

(よしっ!!)


左手の甲ごと貫き、腹部を突き刺した。


「"まだまだこれからだろっ!"」


空の手の左手を握り、殴りかかる寸前で胸部で止め──発散。


「んん……っ」


超近接打撃、寸勁すんけい。数メートル吹き飛んだおかげで、刺さった黒魔剣が抜かれた。


フィーニスの顔は俯いてよくわからない。わかることは、刺し傷の再生速度が明らかに遅い。


(よし効いてるっ! "これ"もまず一発目っ! さっきまでのチート魔法は一時的だが使えない、ならまだチャンスはあるっ! まだ……まだっ!)


決して目を離さない。絶対に殺す。動く理由が、動く体が、動く感情が、この身を支配している限り。火が消えない限り──


「…………そうだなあ」




「もういいや」




顔を上げたフィーニスの両目が……"赤く染まる"────血が吹き出す。


「ぶは……っ!」


好機を取り戻したルーだったが、突如、"体内部"に痛みが発生し、吐血を漏らす。その間にもフィーニスは動く。


自身の掌に"あかまなこ"を出現させる。背後にひるがえし、その眼見つめるは1人の少年。


「ぶふっ!」


遠くにいるリベルも吐血する。用が済んだら瞼を閉じ、掌の眼は消え、瞳は元の色に戻っていた。


「こ、こ……」

「いちいち答えるのにも飽きてきたな。複合魔法如きで私を超えたつもりか? いくら魔法を阻害できても全ての魔力回路を阻害することはできない。私の言った言葉を覚えているか? "本来ならわざわざ貴様たちに触れずとも勝負は決する"、と。全部…………私にとっては茶番だったんだよ」


今放った魔法の名は、"内部破壊ないぶはかい"。真紅に染まった視界に入る獲物は、内部から破壊される。


骨、筋肉、内臓、神経。制限も欠点(デメリット)もなく、どこを破壊されるかはランダム。先の一撃で2人は死んでいた可能性があった。


今この瞬間も、フィーニスの気分次第で、ルーが1秒後に死に至る可能性は大いにあり得る。


「私は合わせていたんだ。貴様らのレベルにな。殺す手段が一体いくつあったと思う? 私は、"無駄死にをしに来たんだ"とも言ったな。この言葉の意味が少しは理解できたか?」

「はっ……ムカつく言い方……」

「しっしー。私が喋ってるんだ」


フィーニスは伏してるルーの頭を踏み潰す。


もう刺し傷は塞がってしまった。思わずフィーニスの口角が上がってしまう。


人を見下すフィーニスが見ている光景は、何千回と見てきた絶景だった。


「罰だよ。貴様らはまだ生き続けてる国民の前で公開処刑にしよう。この惨状は貴様らが全て背負い、多くの罵詈雑言を浴びさせられた後、ギロチンの刑に処す。シエンよりも無残な最期を授けようではないか。国民は私を救世主と崇めるだろう。そしてその後……何人かを残しそれ以外を殺す。くひひいひひひひひひひひひっ。胸が躍るなあ。今からでもその景色が想像つく。その後はどうするかなあ? 今度は逆にどっかの愚連隊を指揮するか?」

「……この性悪しょうわる魔王」

「ふむ……まだ終わらないか。シエンもそうだった。星がギラギラ輝いてるみたいに、最後まで目は死んでなかった。ま結局死んだが。なんだ、"まだ何か残してるのか"?」

「……」


無言を貫く。もう指1本動かせないが、死んでない目をいつまでもフィーニスに向け続ける。


「……ま、興味ないが。シエンも浮かばれんな。無念に支配されるだろ? それも私は何度も見てきた。死に際の言葉、言動には何も感情は湧かないが……"顔"は別だ。だから貴様は少し不十分だ。"想い人"でもいれば良いんだが……これなら先にリベルの方を始末した方がよさそうだな」


フィーニスの期待がリベルに移る。ルーは魔力で必死に体を動かそうとするが、内部が破壊されたせいで魔力回路にうまく魔力が流れない。


(見得切ったばっかだろ……もう……終わるのかよ)


本当に力が入らない。覚悟をどれだけ決めようと、心が体に追いつかない。


(無駄死にじゃないだろう……せっかく救ってもらった命を……ここで終わらせるんじゃねえ……っ!)


自らを叱咤しったする。だがそれでも体は動かない。


「動……け……動けよぉっ!」


やはり動かない。ルーの言葉は、最早フィーニスは聞いていない。


動かなければ……動かなければ……動かなければ……ルーがそう言い聞かせていた、時────



ドンッ!



「……あ?」


フィーニスの横顔に何かが当たった。避けることもできたが、避ける必要もないと判断した。


「これは……魔力弾?」


気配探知魔法が上空に反応を示す。フィーニスは視線を上げる。



そこで目にしたのは────



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