元凶
アタナシア王国現国王の名前は、フィーニス=ヴラク=フィナル。
先代国王とその王妃が謎の変死を遂げてから、若くして王位を継いだ人物。
その彼の王としての振る舞いは賢王そのもので、アタナシア王国の発展と繁栄に尽力を注いでいた。
早期に親を失った苦しみから立ち直り、国のために生涯の身を捧げている彼の生き様に、全国民が感涙した。
フィーニスは多忙を極めていた。
多くの大臣たちとの会談、集会。意見案の取り決め。自国や周辺諸国の情勢調査。発見した課題の解決策、打開策の法案。公爵や騎士団長との食事会。
様々な業務に勤しまれながらも、日夜国のために身を削っていた。
「ふぅ……」
フィーニスは王宮の玉座に腰を下ろしていた。多忙にも関わらず正気に満ち溢れている横顔は、まるで"疲労を感じさせなかった"。
「…………」
ふとフィーニスは目を閉じた。王宮は静寂に包まれる。
……
…………
………………
……………………
「来たな」
バゴォン!!
突如、玉座の間の天井が破壊される。パラパラと岩の破片が床に落ち、"4人の人間"が舞い降りた。
「……ああ。鳴き声が聞こえる。懐かしいな……竜の声を聞くのは」
「テメェがフィーニスだな──」
「ようやく会えた。仇に」
「来たのか、ルー。『魔才』の1人よ」