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灰が消える迄  作者: 宇久血
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第3話 条件付き再開

皆様ご愛読ありがとうございます宇久血です。

自分のモチベの高さに心底驚いております。

第三話 条件付き再開という言葉に散りばめた意味も考察しながら読んでみてください。

個人視点が二人分書くことの大変さを知りました、、

無事に大学を終えた櫻庭と後藤、二人は大学の講義終わりにご飯に行く約束を取り付けていた。

櫻庭 「新島から連絡きてる、、」

私自身あんな体だけの関係が嫌だった。世間話をしてセックスをするだけの余所余所しさを帯びていながら

互いに体をすり合わせるあの使い切りのマッチ棒のような関係が嫌で嫌で仕方がなくて中身すら見ようとせず連絡を無視した。

後藤との食事中ふとこんな会話が始まった。


後藤 「経済学部の西村君ってかっこよくない?」


私は昔から人に興味を示すことがなかったので理解に苦しんだので一度曖昧な相槌で返した。


櫻庭 「そうだね、瑞希の好きそうな爽やかイケメンだもんね〜」


後藤 「凛花ちゃんは気になる人とか居ないの?」


と聞かれてしまった。私はほんの瞬きをする一時に新島がよぎったが、昨日も会ったからかと決めつけて忘れることにした。


食事を終えて会計の時に財布を出そうとしたら肝心の財布がどこにも見当たらない。心当たりが山程あり到底検討も付きそうにない。悲壮感を出す私に忘れているものがあった。それは新島からの連絡である。

私は急いでカバンの奥底に眠っているであろうスマホを探す。

新島から私宛に送られたメッセージを見るために。

カバンを掘るように漁る私を嘲笑するかのように隣の椅子にスマホがあった。

恥ずかしさから赤面になったであろう私の昂る感情を抑えて私はメッセージを見た。


やはりそうだった。新島は私を気にかけて財布忘れてるけど、どうする?といった旨のメッセージと

返事ないからバイト行ってくるね!という二通のメッセージが届いていた。

先の私は自身の憶測だけで新島を悪である、と決め付けて新島からの連絡を未読無視していたが実際のところ新島は私を気にかけてくれていたのだ。雑なセックスしかしないくせに…と自分を納得させるように心のなかで愚痴っていた。

食事代は瑞希が快く全額負担してくれて次ご飯行くときは私が払うという約束を結んで解散した。

実際問題私は新島に会いたくないが世界はどうもうまく行かないらしい。

私は新島のバイト先へ向かうためゆっくりと歩いていった。




22時43分バイトが終わった。事務所へ向かう途中に後輩の男の子と話しながらロッカールームへ向かった。

このバイト終わりに仲間と語り合う時間が新島にとってはとても大事な時間であった。

この時間に吸う煙草ほど見に染み渡るものはない。言うなれば運動後に飲むスポーツドリンクだ。

バイトという運動を終え体が欲しているスポドリという煙草を体に浸透させているのだ。

新島は未成年である。

精密に言えば成人ではあるがタバコを吸える年代に居ないのだ。フリーターであり金髪ウルフであることから成人に見えるから煙草を買えているのだ。

通り314番のセブンスターのソフトを選んでいる。

なぜ新島がタバコを吸っているのか。それは新島の過去に遡る。新島は温室育ちのお坊ちゃまであった。

何をするにしてもマナー、マナーと両親から厳しく育てられてきていた。子供というのは天邪鬼だ。

やるな、と言われたことはしたくなってしまう。そういう性なのだ。

新島絆もその性に逆らえずに居た。煙草だけは絶対に吸うなというのが親父の口癖だった。

なぜだめなのかと聞かれると上品に見えず大変低俗であるからだと言うのだ。

俺にはそれが全く理解できなかった。

手を口で覆い一息で吸って嗜むように吐く。

この一瞬が何者にも代えがたい気持ちを抑えて大人びたように吸う人間を見てきて

何度羨望の目を向けたことか。

いざ吸って見たのは中学3年生の冬。忘れることもない人生で初の禁忌を破ってしまった。

落ちていたよくわからない煙草の空箱に覚束ない手付きでマッチに火をつけて初めて吸ったあの日。

煙に咽て出てくる涙は憧れが現実に変わった嬉し涙なのか理想の味とは程遠く辛味を感じたこの味に絶望した涙なのか。今でもよくわからない。そこからグレている友達などに聞いて回っては時々吸っていた。

今では吸い慣れたものだが当時は味の違いや火の付け方、警察の視線、

世界すべてが敵に見えるくらいには警戒していた。

高校の修学旅行先で見た人生初の煙技には心を魅了され強い憧れを抱いたものだ。

温室育ちだったあの礼儀を重んじる心が日々薄れていくのを実感した。

そして俺は親父にも関係を切られてしまった。親父から毎月6万の入金を見るたびに俺の人生の空洞を広げていく。空の心を埋めるためには金ではなく愛が欲しかったんだということに気づいた。

また嫌なことを思い出してしまった。そんな濁った思いを忘れるために薄汚れた煙を吐いたんだ。


ふとそんな事を思い出して居たら一件のメッセージが来ていることに気づいた。

あ、櫻庭から返事きてるじゃん。


櫻庭 「バイト先の最寄りって高田馬場だったよねそこで待ってて!取りに行くから。」


新島 「了解」


また冷めた返事をしてしまった。そう少し後悔しながらも高田馬場駅へ向かった。


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