赤いサンゴ
「赤いサンゴ」
「深海のサンゴは、ゆっくり育っていくの
時間をかけて、やがては紅く美しい
サンゴの宝石になるのよ」
「お母様、私はその宝石になりたいわ」
「ええ、そうね。きっと貴方なら私たちの希望に」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それでは、皇女殿下のお言葉です
「戦いの末、我が国は勝利を収めました。
我々は、勝ち続けねばなりません
皇帝陛下のため我が国にその身を捧げなさい」
ため息が出る。これではただの飾りだ。
平和や勝利など、どうでもいい。
息子を産むことを拒み娘を女帝にすると言い続けた
お母様は父に殺された。私の目の前で。
「女は勲章だ。国を収めようなどと、おこがましい」
幼い私に剣を突き付けそう言い放った父の目は冷たく、恐ろしかった
傲慢で残虐なあの男を王座に座らせておくことはできない。私が許さない。
「お父様、演説が終わりました」
「上出来だ。自分の役目を忘れないようにしろ」
「お父様、私は宝石になりたかったのです。
勲章ではなく、紅く輝く美しいサンゴの宝石に」
お母様、ご加護を
爆音が響いた。城下町からだ。
「貴様、何事か!」
「反乱です。この日のために準備してきました」
「小娘ごときが、面白い。それでどうする?私を殺すのか」
「いいえ、あなたが殺すのです。流石はお父様、これは素敵な剣ですわね。飾りとは違う、人を殺すための剣」お母様、いまおそばに
白いドレスが紅く染まる。
この紅は反乱の象徴となる。
この男の好きにはさせない。私が許さない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気がつくと海の上に立ってた。水平線がどこまでも続く世界では歌が響いている。
ああ、お母様がいる。お母様。お母様。私は
「あなたは、希望になるのです。
国の、私たちの希望となりなさい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「皇女殿下!」
病室に声が響く反乱の指揮を任せた私の側近の声だ
「皇帝は討ち取りました!我々の勝利です!」
「私は、」
「刺さった剣は奇跡的に急所を外れたようです」
また死に損なったのか私は。
お母様は私に希望になれとおっしゃった。
今の私は、もう勲章でも宝石でもない。
生きなくては、お母様の為に。
それでは女王陛下のお言葉です
「我らが愛した王妃を殺し、私さえも殺した残虐な皇帝は死んだ。血で汚れた歴史はここで終わらせる必要がある。私たちは変わる。そのために私は生き返ったのだ。新しい時代を共に作ろう!」
守るのだ。お母様が愛した、この国を。




