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出会い 3
「あ、あなたは何を言ってるんですか?」
「それはコッチのセリフだ!」
井筒は地面の砂を掴むと、苛立ちをぶつけるように理真へ向けて叩きつける。
「…………」
通りすがりに見た理真の目には、井筒が一方的に巨漢の男に嬲られているように見えたのだが、それは少し違うのだろうか。いや、しかし、こんな小さく華奢な少女が?
様々な疑問が脳内を過ぎる。
とりあえず目の前にいる井筒は自分とは言語が通じ合わない存在なのだろうという結論だけは導き出した。
「申し訳ありませんが、私闘は禁じられていますから」
「ウソつけ! お前さっき、あの巨漢とヤル気満々だったろが!」
「あれはーー」
理真の言葉を待たず、井筒は立ち上がりその勢いを利用したミドルキックを理真の腹部へーー
ーー無論、当たりはしない。
攻撃を孕んだ風だけが通り過ぎる。
「……ちっ」
不意打ちの攻撃を難無くかわされ井筒が舌打ちをする。
だがその瞳は喜びに満ちていた。
不意に現れた長髪女に獲物を逃がされた気分だったが、コイツの方がやりがいがありそうだ。そんな顔だ。