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スイマー  作者: ハッピーエンドの
3/5

出会い 1

「ぎゃうっっっっ」


少女ーー井筒仁絵は、短い悲鳴とともに弾き飛ばされた。

巨漢の肉壁は想像以上に硬く厚く弾力的で、井筒の攻撃など一切通らず、彼女はゴムまりのようにはじけ飛んだのだ。


井筒の小さな身体は地面の上をグルグルと二回転し、大胆なM字開脚を晒して停止した。


真っ白いセーラー服のスカートははだけ、下着こそ見えはしないが乳白色の太ももはあられもなく剥き出しになっている。


「ぐふふふふっ」


巨漢が卑猥な笑い声をあげる。


「さぁて どんな風に嬲ってやるかなぁ」


濁った嗜虐を吐き出し、卑しい顔を欲望に歪ませながら、巨漢は目の前でぐったりと倒れ込んでいる井筒の肢体を眺める。触手のように長い舌がでろんと口からはみ出してくる。


ジュルジュルと音を立てる舌はまるでそれ自体が別の生き物のようだ。


巨漢の手が、人形でも掴むかの勢いで井筒に向かって伸びてくる。


ーー瞬間。


何かがぶつかった。


「!?」


バラバラと地面に何かが落ちる。

ぶつかったのは紙袋のようで、そこからいくつもの箱がこぼれたらしい。

それぞれ色とりどりの可愛らしいラッピングにリボンがついている。


「「だ、誰だっっっ!?」」


声を上げたのは巨漢と、実は井筒もだった。

が、巨漢の声にかき消されていたため誰も彼女の声には気づかなかった。


ともかく、井筒と巨漢は紙袋の飛んできた方向に視線を向ける。


水平線に侵食されている太陽の残光が映し出しているのは長身の少女。

長い黒髪が北風になびいている。


「通行の邪魔です」


長い黒髪の少女ーー中野理真が言う。

巨漢と、井筒を順番に眺めながら。


そしてゆっくりと近づく。


「お、お前…… 中野…… スイマーの中野理真……か 」


たじろぎながら巨漢は言った。

言いながら背後に視線を配る。

退却路を確認しているのだ。


理真はまだプロテストを受けていない。正式なスイマーではないのだが、アマチュアでの戦績によりデビュー間近の大型新人としてマスコミに取り上げられる事も多いため一般認知度は高い。


スイマーは水中女子格闘技である。


だが、本当に強いスイマーは地上でも強い。


定説である。

ほぼ無敗を誇る巨漢が知らないワケがない。

もちろん自分の目の前に居るのが期待の大型新人中野理真だという事も理解した。


「チィっ」


巨漢は未だ地面に座り込んでいる井筒と理真を交互に眺め、口惜しそうに奥歯を噛んだ。

巨漢は背後にある公園出口を確認しながら後ずさり、そのまま退却するーーようにみせかけ、次の瞬間その巨体にまったく似合わない瞬発力を使った。


右手をハンマーのように振り上げ、理真めがけて力一杯叩きつけてくる。


確かに、優れたスイマーは地上でも強い。が、いくら期待の大型新人とはいえ、理真はまだデビュー前だ。

その実力が証明されている訳では無い。


巨漢は瞬時にそろばんを弾き、攻撃する事のメリットを選んだ。


上手くいけば地面でヘタっている少女と中野理真。二人同時に……


卑猥な想像が顔面を醜悪に歪ませる。


巨漢の腕が振り下ろされる。

どこを狙っているとも分からない大雑把な攻撃。

だがこの巨体が放つパワーは伊達ではない。

掠っただけでも相手は相当なダメージを受けるだろう。


そう。掠りさえすれば。










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