表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血石   作者: 花葵
4/199

【第一部 国生の里】 4話 裏切り


「龍が謀反を企てている」



その言葉に貴丞の顔から一瞬で笑みは消えた



(まさか……龍殿は御影ではないか!しかも咲宮様の……実の……)



認めたくはない。そんな馬鹿なことがあるものかと

だが、咲宮はそんなことを冗談でいうような人でもない


「……理由はお分かりなのでしょうか?」


何とか言葉を絞り出す


「たぶん私のもつ血石だろう」

「!」


思わず咲宮の胸元に視線をむけてしまう

血石――よほどの力がないと作れない。力の結晶

宮様は代々の宮様の血石を、宮になるときに引き継いでいると聞いた


「わたしと宮を交代するつもりらしい……な。兄上は」

「馬鹿な……。いくら龍殿とはいえ、咲宮様から力づくで奪えると本気でお考えなのですか?」


その返答に目を伏せ、咲宮は少しだけ前かがみになるようにして貴丞に近づいた

ここまで間近になったのは子供の頃ぶりで、一瞬どきっとしたが、その真剣な面持ちに貴丞も少し身を寄せた


「ちょっとわけありでな。いずれは元に戻るが……。私の力は近いうちに一度ほぼ完全に消えるだろう」


(完全に?!)


「それは……龍殿もご存じだと……?」

「御影はみな知っている。その間、誰にもわからぬよう補佐するのは彼らの役目だ」


確かにその通りだ

宮様のそんな大ごとが広まれば、龍殿と言わず、不埒なことを図る輩は必ずでてくる


しかし、なぜ龍殿は今頃?


貴丞の問いが聞こえたかのように、咲宮がまっすぐに貴丞を見つめる


「そうだ……。わたしは別に兄上を追い落として宮になったわけではない。わたしが生まれた時、兄上自身が辞退したのだ。次の宮は自分ではなく、わたしだと。だが今、間違いなく兄上はこれを狙っておる」


咲宮は自身の重なった半襟の胸元にそっと手を重ねた

やはりそこに代々の宮様の血石をもっているのだろう


「それで……わたしには何を?」


自分の役目がわからず、貴丞は素直に尋ねた

数人いる里長の中では貴丞の戦闘における力はとても低い。現在の長の中では最弱と言っていい

里長の会合においても昔はよく馬鹿にされたものだ。今でもよく思っていないものがいるのも事実


「よく聞け、貴丞。……今回この里が戦いの場となる」


弾かれるように顔をあげ咲宮を凝視した


「わたしが各里に数人潜ませているのは知っているだろう?」


秘密裏においているはずの監視を、知っているのだろう?と聞かれて知っていますと馬鹿正直に答える長はいない

だが、貴丞は基本的に咲宮をごまかすのは好きじゃない


「存じています」


少しの間の後、それでもまっすぐな視線で答える貴丞に咲宮はよくする口角を少しあげて笑んだ

何故かはわからないが、普通に笑うより、素の咲宮っぽいこの笑い方も貴丞はとても気に入っている


「この里に配置しているものがすでに数人行方不明になっておる。……そしてこの里の近くで龍も消えた」


貴丞はその事実にわずかに眉をよせた

監視がどこにいるのか、誰なのか。貴丞は知らなかったし、それは知る必要がないと思っていた

だから側近たちにもその存在を話していないし、特に見つける気もなかった


だがなぜここなのだ?


国生の里が戦いの場になると咲宮が言ったからにはそうなのだろう

だが、なぜ?


「……詳しいことはおいおいわかる。わたしもまだ完全に把握してはおらぬ」


咲宮の言葉に考え込んでいた顔をあげた

だがその次にでた言葉にそれまでの考えはすべてふっとんでしまった





「とりあえずわたしはしばらくここで世話になる。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ