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【4章完結】罪深き王と贖罪の旅  作者: 伽藍堂
第1章 黒薔薇の騎士と欠けた記憶
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第八話 『記憶の欠けら』


 一方その頃、砦の外に吹き飛ばされたノアは目に見えない敵に襲われていた。


 「どこだ?」


 ノアは剣を手に、周囲を見渡すが敵の姿は無く、足音すら全く聞こえない。

 その為、目を瞑り魔力感知で周囲の魔力を探るがそれすら全く反応しない。


 「魔力感知に反応しない……。範囲外か?」

 「――こっちだよ」

 「ッ!」


 まさかの背後から声が聞こえ、ノアは驚いたが直ぐに後ろを振り向き剣を振る。

 しかし、風を切る音だけが鳴る。


 「バーカ、こっちだよ」

 「ゔっ!」

 

 背後から声が聞こえ、同時に背中を刺される。

 ノアは怯む事なく直ぐに剣を振り抜き攻撃を仕掛けるが、掠りもしない。


 「肺を刺したってのにやるな、お前」

 【剣技・八咫烏(けんぎ・やたがらす)


 ノアは声の発生源である二十メートルほど離れた場所に八連撃の斬撃を飛ばす。


 「届くわけな――ッ!」


 キールはまさか自分の所まで斬撃が届くとは思わず驚き、咄嗟に姿を露わして一撃目を防いだ。

 黒い外套を身に纏い、短剣を手に続く七つの斬撃に攻撃を合わせ相殺する。


 「テメェ、肺を刺されてんのになんでッ」


 一瞬で距離を詰め、懐に入ったノアは渾身の袈裟斬りを浴びせる。

 しかし、外套の下には鎧を身に付けており、剣は身体に届かず外套だけを切り裂いた。

 そして、外套の切れ目から真っ黒い鎧に特徴的な赤い薔薇の模様を見たノアは突然、激しい頭痛に襲われ動きが止まる。


 「――!」


 動きが止まり、隙が出来たノアの首をキールはサッと掻っ切る。


 「ぅゔっ」


 首から噴き出す血を手で抑え、止血を行うが大量の血が止まらず皮膚が蒼白くなり、呼吸不全に陥る。

 

 「っ、んっ……はぁッ」

 「は? マジでどういう事だよ」


 首を切ったのに、倒れないノアにキールは首を傾げる。


 「なんなんだコイツ。まぁ、首落とせば死ぬ………… どうなってんだ、お前の身体」


 流れ出す血が少しずつ減り、傷口が少しずつ塞がっていき治癒していく様を目撃したキールはあまりの出来事に理解が追い付かず固まる。

 そして、ノア自身もコレほどの致命傷すら治る事に目を見開く。

 

 (この()は一体……)


 ノアは生まれつき常人離れした筋力と再生力を持っていた。

 この力に気づいたのは十歳の頃、村を襲った魔物からアイリスを守る為に戦った時に大怪我を負っても直ぐに再生し、自分の数倍ある大きさの魔物を魔術や武器も使わず、素手で倒した事がきっかけで知った。

 ノアはこの力について調べてみたが、力に関する情報は得られず、魔術師に聞いても結果は同じだった。

 そのため、ノアも自分の力について何も()()()()


 「あー、もう考えるのは辞めだ。再生しようが、お前の身体をバラバラにしたらいい訳だしな。【剣技・凶乱刃舞けんぎ・きょうらんじんぶ】」

 

 キールは短剣を縦横無尽に振り回すと、無数の斬撃が乱舞の様に入り乱れてノアに襲いかかる。


 【剣技・八咫烏(けんぎ・やたがらす)

 

 ノアは目の前に迫った無数の斬撃に八連撃の斬撃を衝突させ、斬撃の数を減らす。

 しかし、まだまだある残りの斬撃がノアの身体を斬り裂き通過する。


 「くッ!」


 ノアは身体中を斬られて血を流すが、痛みを無視して相手の懐に入る。


 「チッ、捨て身かよ」

 

 ノアが剣を右薙ぎに振り抜くと同時にキールは暗器を投擲し、首を狙うがノアは暗器に気づき左手を首の前に置いて防ぐ。

 ノアの攻撃でキールの外套が横一直線に切れる。

 キールは後ろに下がって距離をとり、ノアは左手に刺さった(はり)のような暗器を引っこ抜き、捨てる。

 既にノアの身体の傷は殆ど塞がっていた。


 「チッ、毒も効かないのかよ。もぅ邪魔だな、コレ」


 そう呟き、キールは真っ黒い外套を脱ぎ捨てる。

 特徴的な鎧が露わになり、それを見たノアは再び、頭痛に襲われる。


 「――うッ、なんだ」


 痛みは頭の奥底から発生しズキズキと痛みが響く。

 

 「トラウマでも思い出したか? 黒薔薇なんてこの国で知らない奴なんていねーしな。いや、今ではこの大陸中で有名か、()()()()()()犯罪者組織ってな」

 「だ……黙れ!」


 ノアはキールを鋭い目つきで睨みつける。


 「なに? イラついてんのか? 犯罪者如きに滅ぼされる愚王の国の可哀想な民さんよ!」

 「――黙れ! その口を閉じろ!」


 ノアは内から込み上げてくる、抑え切れない怒りの感情に支配される。

 すると、身体から黒い()()()が煙のように立ち上る。


 「なんだ? 黒い……煙?」


 ノアは地面を強く蹴り、キールに突っ込む。

 黒い煙のような()()()が尾を引く。


 「――はやッ」

 

 ノアは一瞬で距離を詰め、剣を上から力任せに振り下ろす。

 キールはそれを紙一重で躱したはずが鎧ごと胸部を縦に真っ直ぐ斬られる。


 「クソ、なにしッ――」


 躱したはずの攻撃を受け、鎧が破壊され、胸部を斬られて混乱しているキールに対してノアは止まる事なく力任せの剣で殴るように斬りかかる。

 キールはその剣を短剣で受け止めるが、力負けして吹き飛ぶ。


 「クソ! 人間の力じゃねーだろ! どうなってんだ! ――ヴッ」


 キールは吹き飛ばされて、ノアから離れた事で少しだけ興奮状態が落ち着き、今になって胸部の痛みに気づく。


 「チッ、どうする? 一旦引くか……いや、ブチギレて隙だらけなんだ、冷静にやれば殺れる」


 キールは短剣に魔力を込めて、武器に宿った魔法を発動させる。

 宿っている魔法は"透明化"姿を消す事が出来る。

 キールはその場から姿を消して、更に外に出ている魔力を完全に遮断し気配も消す。その状態でノアに接近する。


 一方ノアは内から込み上げてくる、怒りの感情を必死で抑え様としているが一向に鎮まらない感情と葛藤していた。


 (何なんだ、この感情は。鎮めようとしても何かが…………まるで、もう一人の自分が何かを伝えようとしてる? ような感情。でも、今はそれどこじゃ無いんだ、早く、アイリスとアルバートの下に――――)



 その時、記憶に無い記憶が断片的に脳裏をよぎる。


 ◆◆◆


 月明かりで照らされた地面は、辺り一帯が大きく抉られた状態で遠くの方には崩れた壁が存在する。

 その光景を、自分は巨大な穴が空いた城から眺めていた。


 「兄さん……。私は――――」


 隣には少女が立っており、この景色を眺めながら涙を流していた。

 少女の声はアイリスに似ていたが、何か違和感を覚える。

 そして、少女の顔を見ようとしても暗くてよく見えない。

 

 視界が激しくぶれて、光景が変わる。


 ◆◆◆


 「――――、私は――――を……」


 目の前にアイリスによく似た()()で青い目の少女が涙を流しながら、床に倒れ血を流す同じ髪色と目の色を持つ少年を抱きしめている光景。


 再び、視界が激しくぶれて、光景が変わる。


 ◆◆◆


 「し……ね……」


 床に座り込み、虚な目をした少女は手を突き出し、正面に居る()()()()()を身に付けた、赤い髪の女に白い光を放つ。


 「ざ――!」


 赤い髪の女は手に持っている虹色に輝く剣で防ごうとするが、光に触れた瞬間に剣が砕けて下半身が消し飛んだ。


 再び、視界が激しくぶれて、光景が変わる。


 ◆◆◆


 「――ぐあぁああ!!」


 身体中が破裂し、ぐちゃぐちゃに変形し、再生を繰り返す。

 なぜ生きてるか分からないまま、自分はもがき苦しんでいた。

 

 「―――、力――なッ――ぐぅおぁ!!」


 何かを言おうとして、喋れなくなり、()()()が爆ぜた。


 ◆◆◆




 「なんだ、今の…………」


 ノアは脳裏をよぎった、断片的な記憶の数々に完全に理解が追いつかなず、固まってしまう。

 その隙を見てキールは再び、首を狙う。

 今度は首を切断するつもりで斬りかかった。


 「――ぐッ!」


 その時、胸部の激しい痛みが全身を走り、潜めていた殺気が漏れる。

 完全に隙を突いた攻撃だったが、漏れた殺気にノアが気づき反射的にカウンターを仕掛ける。

 しかし、その攻撃には闘気が込もっていない。


 闘気は魔術と異なる(すべ)で魔力を使い、身体能力の上昇や闘気での攻撃や防御などをする技術である。

 その為、闘気の込もっていないノアの攻撃は本来の剣士であれば通じないがキールは魔力を遮断する為に闘気を纏っていなかった為、カウンターが致命傷となり倒れる。


 「くっそ……ざけんな……」

 

 倒れたキールの首に剣を突きつけトドメを刺そうとした時、砦から大きな崩落の音が響いて来る。


 「アイリス、アルバート。無事で居てくれ」


 すぐさま砦に向かって駆け出す。



 ◇◇◇



 ノアの下に崩落の音が届く少し前、砦内ではアイリスが手下たちと交戦を続けていた。


 「テメェーら、疲弊した魔術師一人殺すのにいつまでかかってんだよ!」

 

 黒薔薇の騎士の男は手下たちの無能さに苛つき、怒声を上げる。


 「そんなこと言ったってアクスさん、アイツ逃げてばっかでろくに戦えないんですけど」

 「――はぁ? 口答えする暇あんなら、とっとと()れよ。殺すぞ?」


 黒薔薇の騎士の男アクスは、手下たちに対して殺気を出す。

 殺気を受けた手下たちは飛行魔術で距離をとり続けるアイリスに再度、攻撃を仕掛ける。


 「はぁ、はぁ……【初級魔術マテリアル・ヴァルテン】」


 アイリスは物体を操作する魔術で瓦礫を操り、手下たちを迎撃する。

 しかし、その攻撃は手下に当たっても闘気による防御で大して効いていないが、足止めになっておりその隙に飛行魔術で距離をとり、ノアが来るのを待っている。

 アイリスは既にまともに戦う程の魔力が残っていない。


 「チッ、息も上がって魔力の残量も少ない奴にいつまで……ったく使えねーな。団長もなんでこんな雑魚共を入れたんだよ」


 アクスが手下たちの愚痴を吐いていると、数名の手下がアイリスが瓦礫に隠して放った光魔術で倒されるのを見て大きなため息を吐く。


 「テメェらの(かしら)は痕跡残して付けられるし、テメェらは大勢で一人の魔術師も殺せないし……もぅ、要らねーわ。全員、死ね【剣技・黒円下惨けんぎ・こくえんかざん】」

 

 アクスはそう言うと剣を真っ黒に染め、ぐるっと一回転して全方向に黒い斬撃を飛ばす。


 「ヤベェ! 伏せろ!」


 手下の一人が呼びかけ、皆一斉に地面に伏せる。

 アイリスも手下と同じく伏せようとしたが、斬撃の魔力の流れを読み取り、咄嗟に防御魔術を展開する。


 「ハッ、やっぱ()鹿()は使い物になんねーわ」


 アクスが小さな声でそう呟くと、一番近くに伏せていた手下の体が真っ二つになり、次々と手下たちが無惨に切られて行き、黒い斬撃は砦の真ん中にある低い塔の下部分をズタズタに斬り裂き、アリサとアルバートの下に迫る。


 「――アルバート! 下はダメ! 上に逃げて!」


 アイリスはアルバートに危険を知らせるが、アルバートはアリサと一緒に地面に伏せており、塔の崩れる音が邪魔して聞こえていない。

 黒い斬撃が二人に迫り、当たる直前――


 「――ッ!」


 黒い人影が二人の前に現れて、迫り来る黒い斬撃を相殺した。


 「怪我は無いか? アルバート」


 そう呼ばれ、顔を上げたアルバートは目元に涙を浮かべ、声を上げる。


 「遅いぞ! ノア!」

 「あぁ、すまない。でも……あとは任せろ」


 力強く言ったノアは鋭い眼差しでアクスを捉える。

 アクスはキールに殺されたと思っていたノアの登場に目を見開く。


 「は? なんで、テメェ生きてんだ…………あの野郎、勝手な事してやられてんのかよ! ったく、笑えねーな。だから俺は最初っから盗賊団なんて使えねーって言ったんだぜ、団長」

 「団長? お前じゃ無いのか」

 「さぁ〜? ハハッ、勝てたら教えてやるよ」

 「そうか、なら……」


 ノアは深く腰を下ろし、剣を持ち直して構える。

 

 身体中に闘気を巡らせて、それを一気に限界まで高める。


 【剣王流奥義(けんおうりゅうおうぎ)剣王の太刀(けんおうのたち)




 「――ッ!」


 「ハッ! いいな、お前!」


 ノアはアクスとの距離を一瞬で詰め、首を狙って剣を振り下ろす。

 その剣をアクスは真っ黒に染め上げた剣で受け止めた。


 そして、アクスとノアの戦いが始まった――


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