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【4章完結】罪深き王と贖罪の旅  作者: 伽藍堂
第2章 城塞都市と氷帝の冒険者
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第十五話 『情報集めと領主の紹介』


 見開きの目次から、記憶に関係してそうな情報を探す。


 ■■■ガルアース王国歴史書■■■

 ■目次■

 一.王族家系図

 二.魔女大戦

 三.魔神の復活と三英雄の誕生

 四.三王暦

 五.巨神教

 

 「取り敢えず、家系図でも見てみるか」


 ノアは王族家系図のページを開き、目を通す。

 家系図は第二十七代国王陛下の子孫である、第一王子、第二王女、第三王子で終わっている。

 王子、王女の容姿についての記載を見つける。

 第一王子は()()様と同じ、金髪に青い目をしている。

 第二王女、第三王子も同様である。と、記載されていた。

 

 「金髪に、青い目……」


 ノアは記憶で見たアイリスに瓜二つの少女と金髪で青い目の少年が頭に浮かぶ。


 「あ! 兄さんが、言ってた少年って第三王子のレイ様じゃ無いですか? ほら、金髪に青い目って」

 「そうかも、知れないな」

 

 アイリスにそう言われて、ノアはもしもそうだった場合を考える。


 (あの少年が第三王子だとしたら、抱きしめていたのは第二王女って事になる……。で、あの少女は俺の事を兄さんと呼んでいた、そうなると俺が第一王子……そんなわけあるはずがない。だって、俺の髪は黒で、目の色は緑だ。それに、そもそも王都消滅時に俺たちはカラシアに居たんだ。あり得ないだろ……)

 「兄さん?」


 アイリスは固まって動かない、ノアの肩を叩く。

 すると、ノアは体をビクッとさせアイリスをじっと見る。


 「ど、どうかしました?」

 「……いや、なんでも無い。大丈夫だ」

 

 ノアはアイリスを見て、記憶の少女が重なる。

 しかし、どこか違和感を覚える。

 その違和感は髪色が違うという様なものではなく、言い表せない()()()に強く違和感を覚えた。

 

 「なぁなぁ。この剣王様って誰なんだ〜? ノアの剣術も剣王って名前がついてるよなぁ?」


 アルバートが剣王様の文字を指差して、疑問を口にする。


 「それはですね。この世界を魔神の手から救い英雄となった三英雄が一人"ラインハルト"様のことです」

 「なんだそれ! なんかカッコいいぞ! もっと、教えてくれ!」


 アルバートは目をキラキラさせ、アイリスにそう言う。

 アイリスは何か真剣に考えているノアの邪魔をしない様にアルバートと共に部屋を出る案を思いつく。


 「それなら、三英雄の事を物語にした本があるのでそれを読んだ方がいいですね。執事さんにあるか聞きに行きましょう」

 「おう! 早く行こう!」


 アルバートはすぐさま、移動して扉の前でウキウキとしている。


 「悪いな、気を遣わせて」

 「いえいえ、私たちの事は気にしないで大丈夫ですよ」

 

 アイリスはアルバートを連れて、部屋から出て行った。

 一人になったノアは大きく深呼吸して、改めて記憶を思い浮かべる。

 記憶にある情報を求めて――。


 

 ◇◇◇


 アイリスは執事に話しかけて、"三英雄の伝説"という小説を手にした。

 そして、許可を得て屋敷の中庭に入り、木製のベンチに座りアルバートにその小説を読んで聞かせる。

 

 ――三英雄の伝説――

 ある日、大陸のど真ん中に位置する神山の頂上に魔神が復活した。

 魔神の復活は世界を混沌へと変えた。

 世界各地で魔物、魔獣、悪魔が大量に出現し、数多くの命が散った。

 そんな時、一人の剣士が名乗りをあげ魔神を討つ為に仲間集めの旅に出た。

 その者はとある王国で英雄と呼ばれていた"剣士ラインハルト"である。

 ラインハルトは別大陸に渡り、その大陸で最も強いと呼ばれる"槍士ゼルグレス"を仲間にする。

 続いて、もう一度別の大陸に移動して、その大陸で最も強いと呼ばれる"魔術師アステリア"を仲間に引き入れる。

 仲間が揃い、三人はいざ、魔神のもとへ向かい、激闘に次ぐ激闘を繰り広げる。

 そして、激闘の末に三人は見事、魔神の魂を封印した。

 混沌と化した世界が元通りになった。

 

 三人はそれぞれの戻るべき場所へと帰還した。

 世界中の人々は世界を救った三人の英雄を讃え、人族の剣士を"剣王"と龍人族の槍士を"龍王"と翼人族の魔術師を"聖王"と呼ぶ様になった。

 そして、三人の偉業を讃え『三王暦』という暦が使われるようになった。


 その後、魔神を封印した神山に神殿を築き、三王の"最初の子"に魔神の封印の維持を命じた。

 

 ――三英雄の伝説『完』――


 「はい、おしまい。そして、この後にラインハルト様はガルアース王国の姫様と結婚して王様になったの」

 「おー、なるほど! 三英雄! カッコいいなぁ!」


 アルバートは中庭に落ちていた木の枝を拾い、剣王様になりきってブンブンっと振り回しながら宙を飛び回る。


 「とおぅ! 喰らえ魔神め、剣王の太刀ぃい!」

 

 アイリスは剣王様になりきるアルバートを眺めて、幼少期

の頃にノアと一緒に三英雄ごっこをして遊んでいた光景が目に浮かび、笑みが溢れる。


 「フフッ、懐かしい」


 アルバートは気がつくとずいぶん上空で飛び回っており、周囲を見渡す。

 そして、遥か彼方に壁の様に聳え立つ巨大な山脈が見えた。

 それは大陸の中央に存在する世界で最も高い山、()()へと続いている。

 アルバートはそれらを見て、疑問を思い出しアイリスのもとへ戻る。


 「剣王が魔神を封印した英雄なのは分かったけど、ノアの剣術に剣王ってついてるのはなんでたんだ?」

 「それは、剣王流の開祖が剣王様だからよ」

 「なるほどー。ふむふむ」

 

 アルバートは腕を組み、納得した顔で頷く。

 そして、先ほど目にした神山を指差してアイリスに問いかける。


 「今でも、あの山の頂上に魔神の魂が眠ってるのか?」

 「はい、その筈ですよ。封印を維持している現代の三王様が神殿に住んでいるので」

 「そうなのかぁ〜。うーん」


 アルバートは目を瞑り、唸り声をあげながら熟考する。


 「魔神が二年前の王都消滅に関係してるとかは、無いのかな?」

 「それはですね。現代の三王様がはっきりと魔神はその件に関係ないと言われていますから、無関係だと話がついてますね」

 「そっかぁ〜」

 「ちょっと、いいかな?」


 エドガーが突然、話しかけてくる。


 「はい、どうしました?」

 「君たちに紹介したい腕利きの冒険者がいるんだ、悪いが今からギルドに行ってくれるか? 彼を置いて、君たちだけで」

 「いいですけど、その冒険者の方は黒薔薇の件をどこまでご存知で?」

 「彼はこの町で私が最も信頼している冒険者だからね、カラシアからの情報は全て伝えている」 

 「なるほど。では、その方の特徴を教えて下さい」

 「特徴は長い髪に氷の魔法武器……あぁ、彼はこうよばれているよ。"氷帝(ひょうてい)"の冒険者とね」


 情報集めに集中しているノアを置いて、アイリスとアルバートはギルドに向かう。


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