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―第15話―UFO合宿

 

「うーん、気持ちいいね!」

 運転をしてくれた赤田先輩が空に向かって背伸びをする。


 8時半前、到着した開聞岳ふもとのキャンプ場。空は綺麗に晴れていた。


「よし!じゃぁ、まずはテントの設営だ!」

 徳留副部長が、いやにはりきっている。


 テントの設営なんかしたことのなかった僕は、徳副部長の指示に従いながら、テントを組み立てる。手は、器用な方だったから、割とスムーズにできた。テントを固定するペグうちで、手を叩いちゃったけど、なんだか、ちょっと楽しい。二人用のテントが3つできたところで、テントの中で、準備をして、登山に向かう。体力には自信がないけれど大丈夫だろうか?


 薩摩富士とも呼ばれる開聞岳は、標高900メートルほどだが、青い空の中にどうどうと立っていて、とても高く見えた。


 登山を開始すると、さっそく、体力がある組と、ない組にわかれた。ある組は、西村部長、徳留副部長、赤田先輩、相原さんだ。僕と、中沢先輩は体力ない組だった。西村部長は、案外体力があるらしい。


 息を切らしながら登ると、なんで、UFOを見に来たのに登山をするのか、なんだかちょっと腹立たしく思って

「登山をするのってUFOを見るのと関係があるんですか?」

 と聞いてみた。

「直接はないね」

「ないんですか?」

「ない。けど、ここはパワースポットだからね。僕の専門外だけど、社もあるし、この螺旋状の登山道、円錐型の綺麗な山。UFOが現れるところは、パワースポットが多いんだけど、僕は、それを体験しておくことも重要だと思っていてね。パワースポットは、UFOが観光をするに足りる素敵な場所だから」

「そういうものなんですか」

「UFOが、僕達の世界をどう見ているか、山頂から、ちょっとは、そんな気分が味わえるかもしれないよ。波長が合えば、小林君もUFOとコンタクトが取れるようになるかもしれないしね」

「それは・・・体験してみたいですね、ところで、UFOをカメラでとってもいいですか?」

「いいと思うけど、多分撮れないよ?」

 そう言って、中沢先輩は息を切らしながらにやりと笑った。


 山頂には、13時ちょうどぐらいについた。先行部隊は、昼ご飯も食べ終わっていて、それぞれに狭い山頂で上手に風景を満喫している。徳留副部長と、相原さんは、気功のポーズをして、赤田先輩に写ルンですで写真を撮ってもらっている。


 見回すと海に挟まれた半島の形が綺麗に見えた。ところどころに小高い山がみえるが、それ以外の僕達が立っていた平野部は、海との高低差がほとんど無いようにみえて、ちょっと池の水が波を打ったら、すーっと浸水してしまいそうだ。僕達が住んでいる世界は、とても繊細な均衡でなりたっているんだと思うと、なんだか、怖さにも似た感覚をもった。これを畏れ・・・とでもいうのだろうか。


 中沢先輩が、青色しかない空を見上げている。


「何を見上げているんですか?」

 赤田先輩が聞く。

「星」

「見えないじゃないですか」

「見えないけどあるじゃないか」

「そりゃあるんでしょうけど」

「ここの真上あたりにUFOがくるからね」


 他の登山客がいてもお構いなしだ。西村部長は、なぜか裸足になり、岩の上にたつ。僕は買ったばかりの214万画素のデジカメでそれを写真に収めた。


 登りよりも、きつく感じた下り、途中、砂に足を取られすべりながらもなんとかおりてきて、車で温泉に入りにいく。足が、結構きつい。運転をしてくれる、徳留副部長、赤田先輩に感謝だ。


 向かった温泉は、指宿名物の砂蒸し温泉だ。砂蒸し温泉は、地熱を持った砂浜で横になり、従業員の方に上から砂をかけてもらう一風変わった温泉だ。県外から来た人には多分すごく受けがいい。ただ、自分は、あまり長く入っていられたことがない。一度、伊集院君ときたときも、砂の中で、体が自由にならないのがなんだか怖く思えて、あまり長時間入っていられなかった。


 今回は、砂の熱を感じながら、地下から、マグマが噴き出てこないだろうか?とあらぬ心配をしてしまってやっぱり長く入っていられなかった。だって、暖かいってことは、マグマがあるってことだから・・・。そういえば、山頂でも、その風の中、立って景色を見ることにビクビクしていた。どうやら、僕はかなり怖がりな人間のようだ。他の人は、どうして怖くないんだろう?西村部長と徳留福部長は、かなり長く入っていた。中沢先輩も僕と同じくらいでさっさと上がってしまった。


 再度キャンプ場にもどってきて、夕食を作る。夕食はカレーだったが、徳留副部長が、すごくカレーを作るのが上手で、レトルトカレーしか食べない一人暮らしの自分も、今度作ってみようかという気にさせられた。僕は、飯ごうでご飯を炊く。台風で停電が2日続いたときに、庭でやった経験がいきた。相原さんは、躊躇なく人参を切っていた。


 UFOは、夜の1時を過ぎる頃に現れるということだった。シートの上で、焼酎を飲みながら、雑談をして、その時間を待つ。


 満点の星空。僕は、いつ星空をみただろうか?そう思った。いつでも、かわらず頭上にはあったはずなのに。そして、その何光年、何万光年と離れた星から、途方もない旅をして僕の目に飛び込んできてくれた光。僕の目がその光の終着点になったことに奇跡と、そして少しのさびしさを覚えた。


「そろそろかな、向こうの方に行って、UFOを呼ぶから、皆は、ランタンの明かりを消して、静かに、僕の頭上をみていて」


 中沢先輩が、開聞岳の方向へ歩いていく。僕達とは、結構離れた場所までいった。立ち止まり、空を見上げる。僕の耳の中から音が消え、そして時間感覚も消えた。


 すると、西村部長が

「お」

 と声を出し、真上を見上げた。


 釣られて目線を真上に向けると、上空そう遠くないと感じられるくらいのところに、3角形の一辺は100メートル以上もあるだろうか、空に浮かぶ、巨大な宇宙船があった。3辺の先は青く光り、その、UFOの底面からは、ところどころ光がもれている。


 確かに・・・現れた。とても不思議な感覚だった。音もなく、ただ光。パラパラ漫画の空に、次のページでいきなりUFOが描かれていたかのような・・・、僕の記憶は、連続していなかったのだろうか。


 その光は、ゆっくり回転しそして、最後に回転をとめ、少し傾き、そしてパラパラ漫画のページから消えた。


 一瞬僕の記憶は、あいまいになり、次に見たのは、月にあやしく照らされた、ほとんどなかったはずの雲と、それを浮かべる壮大な星空だった。カメラは、僕の手元で、役割を果たすことはなかった。


 中沢先輩が、歩いてくる。

「どう?宇宙人に挨拶はできたかい?」

 相原さんは、言葉が出ない。が、ただ、相原さんの目じりからすーっと涙がこぼれている。

「相原さんは、あの宇宙人・・・もしくは星に縁があるのかもね」

 涙に気づいたであろう中沢先輩はそう言いながら、僕の方に目を向ける。

「写真はとれたかな?」

「いえ・・・」

「そっか、でもまたチャンスはあるよ」

「今回のは、かなり大きかったですね、すごいものを見せてもらいました」

 徳留副部長がいう。

「うん、母船で来てくれたみたいだからね」

「どこの宇宙人なんですか?」

 西村部長が聞く。

「どこかね、天の川銀河のどこかだったと思うけど、よくわからん」

「天の川銀河って・・・広すぎですね」

 西村部長が笑う。

「開聞岳の上空って言っていたじゃないですか・・・」

 赤田先輩が、いう。

「いや、思いのほかサービスしてくれたよ」

「サービス精神旺盛なんですね」

「そう、僕のソウルメイトだからね。これで君たちに会いに来たことがわかるだろう?ってそういってくれたよ」

「ソウルメイトなのに、どこの星かもわからないんですか」


 時刻は、いつの間にか深夜2時を過ぎていた。


 次の日、テントの中で目が覚めた僕は、「ここどこだっけ?」と、そう思った。そして、我に返り、お金を貯めて望遠レンズ付きのカメラを買うことを決めた。


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