―第14話―UFO合宿出発
UFO合宿初日、朝7時、車を所有している徳留副部長と、赤田先輩が、車を出してくれるので一旦大学に皆で集まった。
「梅雨は明けましたけど、ちょっと曇りですね・・・指宿はどうでしょう?」
そういうと、中沢先輩が
「大丈夫、友達の宇宙人が、しっかり約束してくれたから」
と自信満々に言った。
「もしかして、その宇宙人って、顔が、猫みたいに毛のある宇宙人ですか?」
相原さんが聞く。相原さんは、今日まで中沢先輩と部室で顔を合わせた時があったみたいではあるが、宇宙人のことを聞けていなかったようだ。
「そのとおり!挨拶にきてくれたかい?随分遅かったようだけど」
中沢先輩が満面の笑みでいう。
「えぇ・・・まぁ。でもUFOを見た後って言っていませんでしたっけ?」
「そうお願いしたんだけど、「それなら、明日にでも行っておくよ、いいだろう?」と言ってくれたんだ」
「そうなんですか、でもなぜか日本語で話しかけられたんですけど、なぜ宇宙人が日本語を話せるんですか?」
「ふむ、もっともな質問だ。結論からいうと、彼は日本語を話していない」
「どういうことですか?」
「彼は、なんて言ったの?」
「今度空の上から会えることを楽しみしているよ。この星に生まれた兄妹よって言っていました」
「きざだなぁ・・・。まぁ、いいや。彼は、彼自身がそのように思った想いを、君の思考回路に、直接届けたんだ。その想いを感じた君は、勝手に脳内でその日本語に変換したというわけだね」
「えーと・・・」
「例えば、君が、僕に対して「大好き」と思ったとする。そうすると大好きという感情は、言葉にならなくても大好きなんだ」
「大好きではありませんが、どういうことですか?」
「これは手痛い・・・。つまり、大好きという言葉に出力される直前の感情を、直接相手の脳に叩き込めば、相手が、勝手に大好きという言葉に変換してくれるってわけさ。そう、それがテレパシー!あの宇宙人はテレパシーを使う種族だからね。ついでに言っておくと、日本人の霊能力者が、違う言語圏の幽霊と話しても、日本語で聞こえたりするのも同じような理屈なんじゃないかと僕は思っているよ」
「ふーむ、ということは、夢の中ではなくて、実際あの宇宙人と会ったとしたらそのときの会話も、テレパシーで行うんですか?」
「そうだね。だけど、それには、地球人の思考回路のキャパシティーの問題もあるから、場合によっては人間側にあわせて、同時翻訳装置っていう補助的なものを使って、それでやることもあるかな。でも、テレパシー、気づかずに日常生活の中で使われていることもあるんだよ?」
「そうなんですか?」
「例えば、人と話していて、相手が言い終える前に、その内容がわかって、次に発する言葉を準備することがあると思うんだけど、それには、テレパシーが使われていることがある。もちろん、経験則的なものであることの方がずっと多いだろうけど、そうでない場合もわりとあるのね。あとは、言葉がなくても以心伝心したときとかね。言葉は、発声する時間が必要だけど、テレパシーなら一瞬!言葉がなくなれば、その能力はいやおうなしに復活するんだろうけど・・・言葉は便利だけどそれによって、埋もれた能力もまたあるってことだね」
「うーん、そうですか・・・なんとなくわかりました」
「二人とも、話はいいですかね?そろそろ出発ましょうか?」
徳留副部長が声をかける。
「あ、すみません」
相原さんが、あわてて荷物をトランクに運ぶ。
「ところで中沢先輩、私のところには宇宙人来てないんですけど?」
と赤田先輩がいう。
「いや、うん、ごめん、相原さんのところしか頼まなかった・・・」
「じゃぁ、またお願いします」
赤田先輩は不満そうだ。
徳留副部長の車に西村部長と、中沢先輩が乗った。僕は、赤田先輩の車の後部座席に座る。相原さんが助手席に座った。
「この研究会、女性は、私一人だったから、相原さんが入ってきてくれてほんと助かったよ」
前を行く、徳留副部長の車を負いながら赤田先輩が、声をかける。
「女性は、ずっといなかったんですか?」
「私が、1年生の時には、神原先輩という4年生の先輩がいたんだけどね」
「へ~、どんな人だったんですか?」
「地元では結構有名な神社の、一人娘でね、部室にある、いくつかの神道系の祭具は、神原先輩が残してくれたものだったりするんだ」
「そうだったんですか、僕も知りませんでした」
一応、僕も、話の中に入る。
「すごかったよ。神社に生まれたからって、霊感の有る無しはあまり関係ないんだけど、神原先輩は、霊感もすごいうえに、除霊をする能力もすごかった。それこそ、もう神原先輩を見たら、幽霊の方から逃げ出すってくらいに」
「幽霊の方から逃げ出すってすごいですね・・・、以前、聞いた、幽霊に憑かれやすい人、憑かれにくい人があるってお話と関係があるんですか?」
「うん、まぁそうなんだけど、例えば、相原さんは、憑かれにくいって言ったけど、本来、相原さんはすごく、エネルギーに満ちていて霊も寄り付かない人なのね。食欲がない時期があったって言っていたけど、そうでない普段は、人一倍あるでしょ?」
「ええ・・・まぁ」
「そういうふうに、特に憑いても悪さができなさそう、居心地悪そうって悪霊が判断するようなエネルギーに満ちた人がいる一方で、近づいたら除霊されちゃうって悪霊が考えるような、ある意味攻撃的なエネルギーを持った人もいて、神原先輩はそっちだったんだ」
「それって、神社とかお寺とかでの修行が関係あったりするんですか?」
「おっ、するどいね、相原さんも、もう立派なオカルト研究会部員だね。そう、例えば、神社とかお寺とかの神主さん、お坊さんとかは、さっき言ったみたいに、特に霊感がない人も多いんだけど、それでも、じゃぁ、お祓いとか供養ができないかっていうとそういうわけではないのね」
「私もちょっとそこのところを疑問に思っていました」
「うん、まず、霊能力者でも勘違いしてる人が多いんだけど、霊やあの世の存在を見たり霊を祓ったりするときに、自分の魂だけでそれをしているケースは、そう多くはないんだよね。そして多くの場合は、別の何かの存在に、見せられていたり、力を貸してもらっているのね」
「そうなんですか」
「うん。そして、私もそうなんだけど、除霊とかの時は、その別の存在に手伝ってもらってたりするのね」
「はい」
「そうすると、実は、力を貸してもらうという点で、別に幽霊とかあの世のものとのコンタクトが双方向で取れる必要もなかったりするの」
「だとすると、つまり・・・見たり、聞いたりすることはできなくても、その想いに対して、力を貸してくれる存在がいて、除霊とかをすることができるっていうことですか」
「正解!まぁ、力を貸してもらうという点だけでいうと、一般の人が神社や、お寺に行ってお願いをするのもそれを目的としているね。もっとも、お願いをしたからといって、力を貸してもらえるかどうかは、その人次第だけど。でも、霊感のある小林君だってそこは全然気づいていなかったのに・・・相原さん、理解が早いね」
「すみません・・・」
急に手裏剣が飛んできた。僕は、霊能力を煩わしいと思っていたからそこに考えがいたらなかったんです・・・とは言えなかった。
「それで、見えないけど力を貸してもらえる存在に、やっぱり、神主さんとかお坊さんはなりやすいのね。特に霊に関係することは。そして、更に、日ごろのお勤めで神主さんやお坊さんの魂自体の性質が悪霊の魂とは、まったく相いれない状態に磨かれていて悪霊に対して強い状態になるの」
「なるほど~。つまり、神主さんや、お坊さんは、力を貸してくれる存在がいる上に、本人自身の魂の性質も、悪霊に対して強いってことなんですね」
「そう。まとめると、霊感の有無、力を借りることができることの有無、自身の魂の強さの強弱や性質があって、目的を達成するためには、その中で霊感が不要な人もいるっていうこと。神原先輩は、霊感があって、力を借りることができる上に、その魂の性質が悪霊に対してすごく強いのね。そして、小林君は、霊感はあるけど、力を貸してくれる存在をシャットアウトしちゃう上に、魂も磨かれていないという・・・」
「はい・・・すみません」
ぐうの音も出ない。
「あっ!そうするとあれですか?私、すごく疑問に思っていたんですけど、いわゆる霊能力者が、自由自在に、死者と話せるとするじゃないですか、そしたら、未解決事件とか、歴史の謎なんて簡単にわかるはずだと思うんですけど、そうじゃないのは、そういうことは、自分のみの力だけでは無理で、そういったことに力を貸してくれる存在が、必要だから、力を貸してくれない限りわからない・・・・ってことなんですか?」
「いや~、本当にするどいね。これは、部長が喜びそう・・・。うん、まぁ、そういう側面も一部あるのね、でもそれだけじゃなくて・・・、んーちょっと自分では、そこは説明しづらいかな。変に話すと勘違いさせちゃいそうな内容だし・・・西村部長に聞いてもらった方がしっかり説明してくれるかも」
「西村部長ですか・・・、今日はUFOの日なのでまた別のときにでも聞いてみます。ところで西村部長は、何か霊が見えたり、気功ができたり、そういうのはあるんですか?」
「うーん、あの人は、霊感があるといえば、あるし、ないといえばないし・・・これまたちょっと説明しづらい人なんだよね」
「そうなんですか?」
「直感系・・というか、自分から意識して幽霊を見たりとか、あの世の存在に働きかけたりとかは、あまりできないみたいなんだけど、あの世の存在に働きかけなくても、勝手に、そういった存在が西村部長に力を貸して西村部長の頭にときおり見せてくれる・・・という感じ。修行らしいことはしていないように見えるけど、さっき説明した、霊感なくても力がある神主さん、お坊さんと同じような能力があるかな。まぁ、そうなるために一生懸命頑張ってる、私からしたらちょっとうらやましくもあるよね」
「へ~、西村部長もすごい人だったんですね」
「まぁ、ああいう直感系は、オカルト分野以外の方が、向いていたりもするんだろうけど」
「そうなんですか?」
「うん、ここは、オカルト研究会だから、オカルトの話がでるけど、普通はそうじゃなくて、あの世とのつながりを意識してない人の方が、大多数でしょ?」
「そうですね」
「その場合、そういう人たちは、神様とか仏様とか、そういう存在の加護を得られないのかというと、そんなことは全くなくて、その生き方に、勝手に力を貸してくれたりするんだ」
「へ~」
「西村部長は、現世に生まれてきた以上、それが当たり前の形だっていっていたね。自分はオカルト研究会の部長をしているくせに」
「それを聞いて安心しました。私、あまり信心深くなくて」
「いいのいいの、それで。でも、そうだからといって、特に神仏や霊を意識的に遠ざけているわけではないでしょ?」
「はい、意識・・・すらしていなかったって言った方が正しいかもしれませんが」
「小林君は、意識的に遠ざけていたからね、そうじゃなきゃ大丈夫よ。まぁ、ご先祖様への感謝の気持ち位は、持っておいて悪いことはないけどね」
「重ね重ねすみません・・・」
赤田先輩と、相原さんは、笑ってくれている。
朝早く起きて、おかしなテンションで誰かと行動をする。なんかちょっとだけ懐かしくて、そして楽しい。




