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―第13話―僕が霊と話さなくなった理由とカメラの購入

「どうしよう・・・私、昨日宇宙人の夢見ちゃった・・・」


 翌日、次の講義までの時間の暇つぶしに部室によった僕は、そこにいた相原さんにそう言われた。

「え、そうなの?合宿終わってからって言ってなかった?」

「うん、そうなんだけど出てきたの。なんか、思っていたのと違って、猫みたいに顔が毛むくじゃらで、体は、人間と同じように手足があるんだけど、頭に比べて体が小さくて、服も、映画で見るような宇宙人の服じゃなくて、なんというかおしゃれだった・・・。[今度空の上から会えることを楽しみしているよ。この星に生まれた兄妹よ]って・・・。口は動いてなかったように見えたけどなぜかちゃんと日本語で言われた気がする・・・」

「中沢先輩とあんな話をしたから、見たただの夢ってことは?」

「そうかもしれないけど、すごく生々しくて」

「うーん、中沢先輩に言ったら、すごく喜びそうだね」

「そうだよね、ところで、私、昨日、中沢先輩に、いろいろ聞いていた気がするけど、失礼になってなかったかな?」

「いや・・そんなことはないと思うけど・・・あまり覚えてないの?」

「覚えてはいるんだけど、なんか結構素で話していた気がして・・・」

「まぁ、大丈夫でしょ」

 ・・・あれが素なんだ・・・

「そうかな」

 ・・・いや、多分・・・



 土曜日の午前中、いつも通り何もすることがない僕は、今日も静かなアパートで、1人インスタントコーヒーを飲んでいる。そういえば、僕がオカルト研究会に入ってから、UFOがテーマになったことはなかったなとそう思った。中沢先輩は、普段は水曜日の研究会も余り参加していなかったし、参加してもオブザーバー的な立場で、僕が入部してからテーマの担当者になったこともなかった。


 僕は、UFOに関しては、テレビで見るくらいしか知識がない。そして、小さいころから幽霊は怖くない自分が、UFOや宇宙人は怖かったことを思いだした。小学校2,3年生ぐらいだっただろうか、その時に見たテレビ番組で、UFOに連れ去られる人の話があって、僕は、父に、「怖い」といった。そうしたら、父が、「ものすごい低い確率だから、連れ去られることはないよ」と答えた。僕は、それになぜか怒りを感じて「でも、だれか連れ去られるんだよ!かわいそうだよ!」と父を困らせた。


 多分、ただ見るだけの幽霊より、物理的に危機を感じさせる、宇宙人の方が小さい頃の自分にとっては、怖かったのだろう。そして、誰かが連れ去られる、その人に降りかかる苦難を理不尽に感じたのだ。そういった意味で、小さい頃の自分には、今の僕にはないやさしさがあったのかもしれない。


 そういえば、幽霊に関して、怖くはなくてもネガティブに感じはじめたのはいつ頃であっただろうか。小さい頃の自分の記憶をたどると、最初、僕は今とはずいぶん違う感覚で幽霊に接していたことを思い出した。


 記憶の中にある、最初の幽霊は、多分、幼稚園の送迎バスからみた、白い着物をきた女性の幽霊だ。多分、というのは、さすがにその頃の記憶はもう曖昧になっているからだ。ただ、記憶にある限り、他の園児を下すために止まった送迎バスからみた雑木林の中に、まさに、漫画の中にある幽霊のような、足元が透明に消えかかっていて、少し前かがみで長い髪が顔を隠している、そんな女性の幽霊をみたのだ。

 まだ明るい時間帯のはずだが、その雑木林は僕がみたときには、夜のように暗く感じたのを覚えている。そして、その時、なぜか僕は[かわいそう]と思ってしまったのだ。そして、僕は「大丈夫?」と声をかけた。

 その時の、その幽霊には、どうやら僕はとりつかれてしまったようで、原因不明の風邪のような症状になり、地元の祈祷師さんに祓ってもらったようだが、その時のことはまったく覚えていない。


 それから、僕は、道路で車にはねられた猫を弔ってやる祖母の傍らにたたずむ猫の幽霊や、なぜか首だけの、侍の幽霊、霊柩車を上空からぼーっと眺めてついていく幽霊などを見るたびに、どうかちゃんと成仏できますように、と心の中で手を合わせるようになっていた。

 そういうことをしていたから、僕は、怒りにも似た感覚で、幽霊を怖いと人が言うことや、幽霊を怖いものとして扱うテレビ番組に嫌悪感を抱いていた。子供らしく単純な思考だが、「みんな元は人間だったんだよ?そしてみんなも同じように死んで幽霊になるんだよ?なのに、怖がられたらかわいそうじゃないか!一人で寂しい幽霊がいたら助けてあげなきゃ!」とそう思っていた。


 今にして思えば、僕が幽霊に憑かれる原因は、多分これだった。そして、その純粋さも年とともに薄れ、中学生の頃には、日中に幽霊を見ることはほとんどなくなっていた。ただ、幽霊の存在を感じてはいて、高校生の頃には、金縛りに僕をあわせる幽霊が嫌いになっていて、受験勉強の邪魔になっていたから、幽霊との対話を拒んでいたのだ。


 そんなことを思い出していたら、赤田先輩に祓ってもらった幽霊、もちろん、悪霊ではなく、女の子とおばあちゃんの方の幽霊であるが、少し悪いことをしたかなという気分になった。小さいころの僕とは違い、かなり邪見にあつかった。金縛り中、女の子の方の幽霊が足元にでてきて、僕は、女の子に名前を聞いた。そうしたら、その女の子が、名前を答えた。知らない名前だった。そして、それを聞いた僕は、「何をしにここに来たんだ!」とかなり強い調子で言ってしまったのだ。女の子は、何も答えなかった。金縛り中は、自分も苦しいことが多いから、つい強い口調になってしまうことが多くて、逆にそれで、霊を祓うこともできていたから、それをその女の子にもしてしまったのだ。


 もし僕が、小さい頃のやさしさをもっていたとしたら・・・そして、話をちゃんときいていれば、成仏させてあげられたかもしれない。赤田先輩は、そういえばちゃんと対話をしていた。僕もそうなる必要があるのだろうか。そんな気持ちが少し芽生えた。


 中沢先輩は、言葉の端々にUFOや、宇宙人に対する愛情が、あふれているのが見て取れた。そうか、それがきっとUFOや宇宙人とコンタクトをとれる理由なのだなと思った。


 僕も中沢先輩がいうように、同じ宇宙に生まれた存在としてUFOや宇宙人を好きになることができるだろうか?そう思った僕は、前々から趣味の候補の一つとして、買う機種まで検討していたカメラを買いに、2カ月分のバイト代を手にして、家電製品店に向かった。だって、UFOを見るんだったら、写真にとらなきゃ!でも、やっぱり失礼かな?もし失礼ならその時は、撮るのを控えるか考えよう。


 後日、中沢先輩から日程の調整を頼まれた僕は、いくつかの候補日を上げて他の部員に、連絡を取り、日取りが決まった。場所は、中沢先輩指定の開聞岳ふもとのキャンプ場。なぜか登山と、キャンプと温泉もセットになった。時期は、梅雨が明けるか明けないかの7月中旬だ。[梅雨は大丈夫ですかね]と中沢先輩にメールしたら、[その日は晴れにするように宇宙人に言っておくから大丈夫]、と謎の返信がきた。


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