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―第12話―相原さんの歓迎会と、UFOを呼べる先輩

 入っている自分がいうのもなんだが、自分の所属しているこのオカルト研究会はやっぱり変な人の集まりだ。霊能力者、気功師、宇宙人とのコンタクティー。まぁ、一般的にはかかわっちゃいけないやつだ。そういうと、日本人は卑怯だ。オカルトや、宗教に熱心な人に対して多くの人は、ある種の忌避感を抱いている。なのに、神社や仏閣に行って平気でお願いごとをする。適度な距離をもつのがいいんだよ、といわれるかもしれない。この世に生きることに集中するのが正しいんだよ、といわれるかもしれない。それは正しいかもしれないが、でもやっぱりもやもやが残る。


 何の予定もない木曜日の午前中。ごみ出しという仕事を終えた僕は、狭いアパートの一室で、優雅にインスタントコーヒーを飲みながら、相原さんの入部の有無について考えていた。本音は、入って欲しくないハズだった。でも、相原さんがいる研究会は、ちょっとだけ今より楽しくなるかもしれない、とそう思う変な自分がいる。飲み終えた、たった1つのコーヒーカップ、その内側に少しずつ積み重なるシミを無心でこすり洗っていると相原さんからメールがきた。


[お疲れ様です。昨日は、オカルト研究会に連れて行ってくれてありがとう。まだ、部長さんからは具体的な活動をちゃんと聞いてないけど、入部しようかなと思っています。でも、ちょっと昨日部長さんが言っていることがわからない部分が多かったので、それは、また今度小林君が教えてください。]


 文面からちょっとした怒りを感じるが、オカルト研究会は合格したらしい!正直、あれを聞いて入るの?いわば酔っ払いのうんちくを、しらふで部室で聞かされた、そういっても過言ではないのに?とそう思ったが、自分もあのうんちくで大分助けられたことを考えると、相原さんも、そう感じてくれたのかもしれない、とそう考えなおした。感情は、あやふやなものだが確かにあって、それは、現実の出来事に確実にリンクしていて流れていく。先程のもやもやは、もうなくなっていた。


「お疲れ様です」

 午後の[地方都市と街づくり]の講義が終わった後、レポートの材料になるような、資料がないかと過去の資料を見に部室によったら西村部長と赤田先輩がいた。

「お、お疲れさん、さっき相原さんがきて、入部届を出していったよ」

 西村部長が言った。

「小林君、いい子みつけてくれてナイス!」

 赤田先輩が言った。

「いえ、でも、本当は、オカルト要素ない人なんですけど、大丈夫ですかね?」

「大丈夫、大丈夫、ああいう子の方が、多分おもしろいレポートがかけたりするんだから」

「そうなんですか?」

「そう、竹下先輩とかがいい例じゃない」

「あの人は・・・・」

 竹下先輩は、霊感とか気功が使えるとかそういうのはあまり無かったみたいだけど、いわゆるマニアだ。相原さんは、そういうのではないよな・・と思ったが、それ以降をいうのはやめた。

「で、もうさっそく来週の水曜日に歓迎会を開こうと思うんだけど、小林君どう?」

「大丈夫です」

「よかった。中沢先輩が、今度の水曜日なら大丈夫っていってくれたから、あとは副部長の返事待ちだね」


 その日の夜、さっそく赤田先輩から、予定通り来週の水曜日に決まったことと、居酒屋かんちゃんを予約したことのメールがきた。本当は、僕が幹事をしなきゃいけないと思うんだけど、よく赤田先輩は率先して、そういうことをしてくれた。以前「おいしい店を探すの楽しいじゃん」そう言った赤田先輩にはっとさせられて、こうありたい、と思ったことを思いだした。


 ネットで居酒屋かんちゃんを検索する。メニューは、海鮮系が多かった。相原さんは、もう普通に食べられると、言っていたが大丈夫だろうか?一応、メールで聞いてみることにした。

[お疲れ様。今日さっそく、入部届をだしてくれたみたいだね。これからよろしくね。ところで、歓迎会の居酒屋、海鮮系が多いみたいだけど大丈夫?]

[お疲れ様!赤田先輩にも、聞かれたけど大丈夫だよ。実は、ちょっと恥ずかしいんだけど、あの食べられなかったときが、なんか夢だったみたいに、今は元通りおいしく食べられるようになっちゃって・・・]


 大丈夫そうで、安心したとともに、赤田先輩が、ちゃんと先日の西村部長との会話を聞いていて、気をつかってくれたんだなと思い、さすがだなぁと思った。


 久しぶりに中沢先輩がサークルに顔を出した歓迎会の水曜日、徳留副部長は直接居酒屋で合流ということだったが、先に軽く中沢先輩と、相原さんの顔合わせをした。中沢先輩は、見た目だけは、結構普通、というかさわやかな人だ。少し高めの身長に、短くも長くもないさらっとした髪、線は細目で、中性的な顔立ち。清潔感もあってUFOについて語りさえしなければ、多分もてるような人だ。あと、笑っているよりも、黙っている方がかっこよくて、たいてい笑っているからなかなか残念ではあった。

「変な人間ばかりいる研究会だけど、そんなに悪くないところだから楽しんでね」

 と、中沢先輩がいった。

「いや、中沢先輩が一番変ですから!・・・だって私宇宙船に乗ったことないもん」

 赤田先輩が、笑いながら大きな声で言う。

 相原さんは若干引いていた・・・前回から、引き続き、たたみかけられそうだ。大丈夫だろうか。


 居酒屋かんちゃんは、学生街のはずれにある。キャンパスからは400メートルくらいだから、皆で歩いて向かう。

「小林君って、お酒飲めるの?」

 相原さんとは、お酒を飲んだことがない。というか、喫茶店以外、一緒にどこかへ行ったことがない。

「うん、まぁ、結構飲めるほうかも、ただ、一定のラインを超えると、これ以上はダメだって自分でわかるから、そこからはあまり飲まなくなっちゃうけどね」

「へ~、それはいいかもね」

「相原さんは?」

「うーん、自分は強くはないかな、すぐ赤くなっちゃう」

「まぁ、他のサークルとかとは違って、そんなにたくさん飲む研究会じゃないから、大丈夫だと思うけど、無理しないでね」

「ありがとう」

 居酒屋かんちゃんの看板が見えた。看板の横でたたずむ赤ちょうちんは、まだ、この街の中で控えめに見える時間だった。


「では、新しい新入部員の入部を祝って・・・」

 西村部長が、音頭をとる

「かんぱーい」

 最初の一杯は、全員ビールだった。僕がアルバイトをしている、居酒屋きんまさきでは、酎ハイや、カクテルを一杯目から頼む若い人達も多くなってきていたから、相原さんもビールだったのは少し意外だった。ちなみに、この研究会でお酒が一番強いのは、西村部長か赤田先輩だ。西村部長は、酔ってても、酔ってなくても、スイッチが入るといつでもハイテンション。赤田先輩は、するどい目つきが更にするどくなるが、ずっと飲み続ける。徳留副部長は、少しお酒に弱くて、ある程度飲んだらブレーキをかける。中沢先輩は、飲めることは飲めるが、結構お酒に飲まれるのが、たまにきずだった。

 相原さんは、最初の一口目で、ジョッキの半分くらいまで飲んだ。ん、結構飲むな・・・。

「いただきます!」

 出てきた、刺身盛り合わせを前に相原さんが手を合わせる。手を合わせるのはもちろんいいが、声が大きい。ものの数分で、相原さんの顔は赤くなっていた。続けて出てきた料理を率先して食べている。すぐにビールの1杯目が空になった。西村部長と赤田先輩もそれを見て飲み干し、一緒に2杯目を頼んだ。僕と、徳留副部長、中沢先輩は、まだ半分だ。

「ところで、中沢先輩、せっかくなんでUFOとか宇宙人のことについてきいていいですか?」

 3杯目のビールを注文したとき、相原さんが、目の前に座っている中沢先輩にいう。

「もちろん、大丈夫だよ、相原さん、UFOとか宇宙人に興味があるの?」

 2杯目から焼酎の水割りに変えた、中沢先輩が答える。

「あるというか・・・疑問があって、中沢先輩、UFOってなんで地球にきているんですか?あと、UFOの中に宇宙人って本当に乗ってるんですか?無人じゃないんですか?有人の意味ってないですよね。」

 と聞いた。相原さんは、多分、いや、もう間違いなく酔っている。

「お、相原さん、いいね!そういう姿勢こそが、オカルトの発展につながるんだ!」

 西村部長が、はやし立てる。

「そういえば、中沢先輩、まだ私、宇宙船乗せてもらってませんけど・・・」

 赤田先輩が、割って入る。中沢先輩、そんな約束をしていたのか・・・

「何をばかなことを!相原さんまでそんなことをいうのか、僕は悲しいよ・・・」

 中沢先輩が大げさにこたえる。

「いえ、だって、UFOがきていたとしても、わざわざ遠い地球に宇宙人本人が乗り込んでくるのってリスクしかないじゃないですか。高度な文明なんでしょうから、いくらでもリアルな情報送れるでしょうし」

「ふふ、相原さん、宇宙人はもう、地球のことなんか、地球人よりもよくわかっているんだよ。だから、情報という意味では、こんなにたくさんのUFOが来る必要も、宇宙人がUFOに乗っている必要も本当はないんだ。でもね、たいていのUFOには宇宙人は乗っている。だって観光にきている宇宙人が大部分なんだから!」

「中沢先輩、前は地球動物園の保護にきているって、言ってたじゃないですか!」

 赤田先輩が突っ込む。地球動物園・・・なんじゃそりゃ・・・。中沢先輩は、大学院に進学してから出席率が低くなったようだったから、僕の知らない話も多かった。僕は、話をききながら、徳留副部長と、気功で焼酎の味を変える実験をしている。

「いや、それもあるんだけど・・・」

「なんで、わざわざ観光に来るんですか?」

 相原さんが追撃する。

「そんなのは、そこに山があるからだよ!」

「んーと」

「相原さん、旅行にいくでしょ?」

「ほとんど行かないですね」

「冷たい!まぁ、でもいいや、旅行だって、登山だって、行きたい人、行きたくない人がいて、それはお互いに理解はできないんだ。僕と君のようにね・・・」

 中沢先輩も、もう出来上がっている。

「はぁ?」

 相原さんの声だ・・・。相原さんと中沢先輩は今日が初見のハズだが・・・。

「中沢先輩、私も理解できないですよ、中沢先輩が約束を守ってくれないこと」

 赤田先輩の目も、もう出来上がっている。

「とりあえず、旅行や登山とか行く人、行かない人がいるんだから、宇宙人だって来たい人、来たくない人がいるでしょ?そこに素晴らしく美しい星があるから、行く。ある意味、あの世と、この世との距離以上に、遠い場所に兄弟がいる。そこに行くのに理由なんていらないんだ」

「んー、わかりました」

「・・・相原さん、実はやっぱりUFO信じていないよね?」

 落ち込んだ演技をしながら中沢先輩が聞く。

「いえ、信じていないことはないですよ、いるんだろうなぁ、とは思うんですけど、いたら、もうちょっと通信位は公にできたっていいじゃないですか」

「それは、まだ宇宙人の求める基準に、地球人が到達していないからそうなっていないだけなんだよ」

「じゃぁ、なんで中沢先輩は、そんな宇宙人とコンタクトが取れるんですか?」

「それは、宇宙人にも様々な団体、地球でいう国家、そしてそのような連合みたいなものもあって、そういう団体の立場と、個々の宇宙人が観光する立場とでは、違うから。その個々の宇宙人とは、コンタクトが取れるんだよ、ルールはあるんだけど」

「そのルールってなんですか」

 相原さんも結構、追い込む。僕は、焼酎を飲みながら、そのおいしさに気功云々の前に、この焼酎のお湯割りは、前割だ、間違いない、とそう思った。

「それは・・・、地球や、宇宙人にとって、危険となる物質や生命などを、作らない、もってこない、持ち帰らない、の3原則であったり・・・」

「なんか、きいた話ですね」

 西村部長は、げらげら笑っている。

「よーし、わかった!今度UFOを呼んで見せてあげよう。でもルールがあって宇宙人本体とは、今は会えない。ただ、もしかしたら夜寝ているときにテレパシーで夢の中に現れてくれるかもしれない。UFOを現実で見た後、夢の中に出てきてくれたら、それは、さすがに信じてくれるでしょ?」

「ええ、まぁ。でも、なんで寝ているときなんですか?夢じゃ本当かどうかわからないじゃないですか」

 相原さん、割と攻撃的なんだな。僕と話していた時は、抑えてくれていたのだろうか。

「それは、寝ているときの方が、テレパシーで意思疎通がはかりやすいからね。僕位になるとちょっとした瞑想で大丈夫だけど。相原さん、例えば、起きている状態で、夢と同じレベルで、映像を想像することができるかな?」

「それは・・・難しいですけど」

「想像するっていうのは、クリエイトするという意味での創造と、そう違わないんだ。で、テレパシーは、その創造する能力のキャパシティーを必要とするんだけど、そのキャパシティーは、人間が、起きているときには、覚醒に持っていかれているから難しい。だけど、寝ているときは容易になる。そういうことなの」

「じゃぁ、訓練すれば、日中でもコンタクトできるようになるんですか」

「自分だけの問題じゃなくて、宇宙人が応えてくれるかどうかという問題があるから、絶対とはいえないけど、可能性は大いにあるよ」

「なるほど・・・やっぱり、まずは、私は見たことのないUFOを見てからですね」

 中沢先輩が、がっかりしたふりをする。

「むう、ならば、今のテーマが終わったら次は、UFOを呼んでみよう宇宙人歓迎飲み会合宿だ!」

 どうやら、次のテーマが決まってしまったらしい。

 赤田先輩が

「え?乗せてくれるんじゃないんですか?」

 と突っ込む。

「なかなか、交渉が難しくて・・・」


 外にでると、赤ちょうちんが、目に悪いくらいにいきいきと赤く燃えていた。


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