万感
「絶対!絶対会おうね!」
感情を抑え込むような、そんな声から、気付けば、あっと言う間に3年の月日が過ぎていた。
カタンカタンと揺れる車窓に流れる景色は、ただ淡々と時刻を刻むのに俺は早る気持ちを抑えきれずにいた。
『やっと』
俺はポケットの箱を確認して、彼方の方へ視線を向けた
『ここだ』
そう零さずにはいられなかった。初めての場所、初めての景色の筈なのに、何度も通り、何度も見てきた景色。思わず、大きく息を吸う。
改札を抜け、人の流れに合わせて歩く。
そこには、ずっと見たかった笑顔があって、ずっと触れたかった存在があって。
『あぁ…』
そう溢れた
人目は気にしなきゃいけなかった。それでも、抱き締めたこの手を離したくなかった。
「ありがとう」
そう耳元で聞こえて、やっと彼女の顔を見ることが出来た。困ったような、でもどこか紅潮した顔がたまらなく愛おしかった。
この時間がいつまでも続けばと願った。
重なり合った身体、絡めた指先。一緒にいられる時間を余すことなく満たすかのように求め合う。
ピリリと鳴り響くアラームが、その終わりを知らせる。
「やだ……」
抱き締めた腕の中、胸に感じる涙。言葉はもう紡ぐことは出来なかった。
ただ、強く抱き締める。それだけだった。
「これ貰ってくれると嬉しい」
ポケットから、小さな箱を取り出し彼女の前にひざまずく。
駅の自動販売機の前。
戸惑っているのか、口元を抑えたままジッとこちらを見つめた瞳はすこずつ潤んできていた。
いつも付けていられるようにと、二人でいいよねと話していたチョーカー。
「いつも一緒だよ。どんなに離れていてもね」
溢れ出す涙をそのままにした彼女の頭をそっと撫でた。