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伝えられない
『逢いたいよ…』
嗚咽混じりの涙声が受話器の向こうから聞こえてくる。俺だって逢いたい。逢いたくて逢いたくてしかたない。
だけど、それでもまだ逢うわけにはいかない。逢ってはいけない。
「明日学校だろ?泣いてたら目が腫れるぞ」
そんな言葉、慰めにもならないことは分かりきっている。分かりきっていてもそれしか伝えられなかった。
「なんで、逢いたいって言ってくれないの…」
消え入りそうなただ呟くだけの微かな声に胸が締め付けられそうになる。
「理由は、言ったよな?」
「分かってる」
「俺も仕事頑張るから」
「うん」
突然襲ってくる切なさと恋しさにそれ以上の言葉を紡げなくなる。
もっと気の利いた言葉を言えたなら、もっと気遣う言葉が言えたなら。
「おやすみなさい」
その言葉の先の未来は違っていたかもしれない。