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第12話『まるで第1話であるかのような戦い』

「いくぞ! 皆、用意はいいな!」


 赤いジャケットを着た青年が4人の仲間に声を掛け、揃いのポーズを取る。


『カラットチェンジ!』


 腕に付けてあるゴツいブレスレット状の変身アイテムにそれぞれ別の色の宝石をはめ込み所定の動作をする。と、彼等の身体が眩い光をまといながら戦隊ヒーロー特有の強化スーツに包まれていった。


 『輝石戦隊、ジュエライザー!!』


 5人それぞれにポーズを決め、背後にはキラキラと輝く謎のエフェクトが掛かる。


 そんな、日曜朝の特撮ヒーローモノのテレビ番組を視聴しているような気分で俺は今、拠点であるスーパー銭湯地下の一室でモニター越しに奴等の様子をうかがっていた。


 部屋に設置してある大型モニターから流れる映像は、ブロンズール達の強化スーツ頭部に内蔵されている小型カメラから送られてくるようになっており、彼等の見ている映像がリアルタイムで送られてくるようになっているのだ。


「マジか? まさか、こんなに早く遭遇するなんて!」


 思いの外早い会敵となったが、会っちまったもんはしょうがない。ただ、初の遭遇戦で戦闘員しかいないのでは彼等も拍子抜けだろう。


「至急、追加のブロンズール達とマイロナイトスパイダーを現場に向かわせてくれ」


 一緒に戦いの様子を見ていたウルフコマンドー達に指示を出し、下級怪人の出撃準備を整えさせる。


 あとは、今戦っているブロンズール達が時間稼ぎをしている間に増員メンバーが到着するだろう。


「サビビビー!」


 おおっ、ちゃんと戦闘員用の掛け声まで考えてあるのか。本格的だな。


 ブロンズール達はそんな掛け声と共に、腰に装備している大振りのナイフを抜いて逆手に構える。


「街を恐怖に陥れる怪人共め、許さんぞ! 『オーブスラッシャー!』」


 レッドはそう叫ぶと、特撮ヒーローの武器にありがちなゴテゴテとした剣をどこからともなく出現させ、ブロンズールに斬り掛かってゆく。


 それを受け止めようと、ブロンズールは半ば反射的にナイフを持ち上げる。


 互いの武器がぶつかり合い甲高い金属音を響かせると同時にブロンズールが押されるような形でよろめき、数歩後ろに下がる。


 それに追い打ちをかけるようにレッドが無造作に距離を詰め再び剣を振るう。


 力任せに振るったその上段からの一撃は、標的になつていたブロンズールを庇うように割り込んだもう一人のブロンズールによって防がれる……が、力及ばずそのまま弾き飛ばされてしまう。


「まぁ、さすがに戦闘員用の強化スーツではパワーが足りないか」


「そこそこ頑丈に作っといたから、そう簡単に死にゃあしないさね。折角の初戦闘だ! アイツらには頑張って戦闘データ取って来てもらわなけりゃね」


 俺の呟きに、いつの間にか後ろにいた婆さんが、モニターに顔を向けたまま気楽な様子で答える。


 そうこうしている内に、追加で派遣したブロンズールと下級怪人が到着した。


「調子に乗るのはそこまでにしてもらおうか!」


「誰だ!?」


「我が名はマイロナイトスパイダー! 我等がディスペアー帝国の世界征服を邪魔する愚か者共め、始末してくれるわ!!」


 レッドの問いかけにマイロナイトスパイダーはそう言うと、槍を構えた状態で、背後に控えたブロンズール達と共にポーズを決める。


「何だと? そうはさせんぞ! この世界は俺達が守る!!」


「最初の怪人がスパイダーってのは良いチョイスだ……アイツらわかってんな!」


「お約束ですよねぇ」


 などとレッドは熱く語っているが……それに続くブルーとピンクの呟きが緊張感を無くしている。


「お前達、下らないこと言ってないで戦え! 奴等をたおすんだ!」


 終始熱いノリのレッドが、オーブスラッシャーを銃の型に変形させ、突撃して来るブロンズール達に光弾を連射して打ち込んで一網打尽にすると、その隙に近づいて来たマイロナイトスパイダーが槍の一撃を加えようと斬り込んで来る。


 それをフォローするようにグリーンが割り込んで槍の攻撃をオーブスラッシャーで受け止めた。


「あなたも気を抜いてるんじゃないわよ」


「すまん、グリーン。助かった」


 レッドは再びオーブスラッシャーを剣へと変形させ、グリーンと二人がかりでマイロナイトスパイダーへと斬り掛かる。


 何度目かの激しい打ち合いが続いた後、グリーンがマイロナイトスパイダーの攻撃を食い止めた際の一瞬の隙にレッドが変身アイテムに付いている宝石をオーブスラッシャーに取り付ける。


「くらえ、フラックススラッシュ!!」


 するとオーブスラッシャーが眩い光を放ち、その光と共に強烈な一撃をマイロナイトスパイダーへと叩き込んだ。


「ぐわぁ!! お、おのれ……こんな所でやられるとは……」


 大きな炎と爆音を響かせながら、マイロナイトスパイダーが倒された……かに見えたその瞬間、突如、空間が歪みメイド服姿の少女……我等が幹部の一人。ヘリオドールが姿を現す。


「な、何者だ!?」


わたくしはヘリオドールと申します。どうぞお見知りおき下さいませ」


 ヘリオドールは両手でスカートの裾を軽く持ち上げるようにして挨拶をする。


 その後すぐに、彼女のヘッドドレスに付けられている歯車型の飾りが音を立て回転をはじめる。


 その状態のまま彼女は地面に両手をつく。


 すると、ヘリオドールの前方に水晶の結晶体のような形の鉱物が何本も地面からせり出し、その間から倒されたハズのマイロナイトスパイダーが巨大化して復活した。


「では、今回はこれにて失礼致します」


 ヘリオドールは再び空間を歪めると、その空間の歪みから消えて行った。


「やっぱり巨大化したか」


「想定内だ。行くぞ、こっちも応戦だ!」


 左腕の変身アイテムには通信機能も仕込まれているらしく、レッドがどこかに連絡を取ると、どこからか巨大なワシ、ゾウ、ライオン型の三体のメカがこちらへ向かって飛んで来る。


『合体!!』


 三体のメカはそれぞれ形を変え、組み合わさることで巨大ロボットへと姿を変えた。


『完成! アニマジュエラー!!』


「おぉ……これぞ正義と悪の戦い! モニター越しだと特撮感が凄いな!」


 今は木曜の夕方だが、日曜朝な気分にさせてくれる熱い展開! こういうノリは大歓迎だ。


 巨大マイロナイトスパイダーとアニマジュエラーの戦いは、お互い武器を持たずに拳での殴り合いが続いた後、マイロナイトスパイダーが手から糸を出し、アニマジュエラーを糸で縛り上げると、どこからか取り出した槍で斬りつけてゆく。


 勢いのある連続攻撃にたまらず倒れ込むアニマジュエラー! 当然のように近隣の家も潰されてゆく。


 しかし、商店街にジュエライザーが現れてから、巨大化しての戦いに至るまでに、実は少しづつ人気のない場所へとお互い移動しての戦いになっていた。


 当然、「危ないから人気のない所へ移動しましょう」なんてことはお互い言い出さないが、暗黙の了解のように戦いながら少しづつ移動していた……という訳だ。


 移動した場所にもいくつかの家が残されていたが、ほとんどが空き家であることも調べてある。


 ん? 戦いの最中にこういう注釈が入ると、テンション下がるって? あぁ、それはすまなかった。では、続きをどうぞ。


 地面に激しく叩きつけられながらも立ち上がってきたアニマジュエラーは、どこからか両刃の片手剣をとりだす。


『スピネルブレード!』


 巨大マイロナイトスパイダーとの白熱した剣の打ち合いが続き、戦いが膠着状態こうちゃくじょうたいになってきたその時、再び巨大マイロナイトスパイダーが糸を使ってアニマジュエラーを行動不能にしようとする。その時。


『灼熱剣!!』


 アニマジュエラーの剣が熱を帯びて赤く燃え上がる。


 そのまま飛んで来た糸を切り裂いて、消滅させると、アニマジュエラーは灼熱化した剣を大上段に構えた。


『ジュエルフィニッシュ! 晶炎断!!』


 レッド達の叫び声と共に繰り出された縦一閃の強力な斬撃によって巨大マイロナイトスパイダーは真っ二つにされ爆散した。


「よし、敵は倒したぞ! 街の平和は俺達が守ったんだ!」


 こうして、両陣営の初戦闘は正義の使者である戦隊ヒーロー側のジュエライザーが勝利を収めたのであった。

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