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第10話『絶望の帝国』

 人間と区別の付かないほど……という比喩などではなく、本当に人間と区別出来ない出来の外見をしたメイド服姿のアンドロイドが徹夜明けの俺と婆さんを静かに見つめている。


 流石は超古代文明のロストテクノロジーと超高性能AIを搭載した特殊仕様のアンドロイドだ。


 名前は組織のイメージに合わせて宝石、鉱物系の名前をチョイス。今回はアクアマリンやエメラルドにもなる緑柱石の一種である宝石の名を取って『ヘリオドール』と命名。


 ヘリオドール。別名をゴールデンベリルとも言う黄金に輝く美しい宝石のように、その美しい容姿や、うねるような豪奢な縦巻きロールの金髪も名前に合った派手な印象に仕上がっている。


 遺跡内のボスであったロボットは激戦の末、頭部を破壊された状態であった為、頭部にはデバイスから超高性能AIを搭載。砕けた頭部の復元と、骨格状の内部フレームで一部を新素材で作り直し組み合わせる。


 外部装甲は全て剥ぎ取り、ナノマシンや人の皮膚に近い上に耐熱、耐水、防刃にも優れた特殊ナノスキン装甲に換装。


 右手首には俺の趣味で、某有名ロボットアニメの青い機体に搭載されているような電磁ワイヤーが仕込まれている他、婆さんの趣味で近接格闘戦を主体にしたバトルスタイルにするために、色々な格闘技のデータをAIに学習させてある。


 用途に応じて様々なオプション交換が出来る為、武装は順次換装させるかもしれない。


ちなみに、コイツをサイズ調整し、人型のアンドロイドタイプにしてまでわざわざ幹部怪人にしたのは理由がある。


 このヘリオドールには、特撮戦隊モノの悪の組織によくある、敵怪人がやられた時に巨大化して復活する。というのがあるが、それが出来る幹部怪人としての役割を担ってもらう。


 その為、特殊スキルとして対象を巨大化、縮小させる能力を付与させてあり、オマケのちょっとしたアクセントにメイド服のヘッドドレス部分に歯車を象った飾りを付けてある。


 そんなカンジで惜しげも無く希少素材やら何やら新技術やら詰め込んでいるヘリオドールの制作には、アイレ程ではないが結構な制作費が掛かっている。


 その為、組織の運営資金も大分心許なくなって来ており、それを補う為の案として今拠点としているこのスーパー銭湯を営業出来る状態にし、そこから収益を上げる。という話が持ち上がっているのだ。


 それで、文明崩壊した異世界で過酷な集団生活をしている婆さん達の中から従業員を募って働いてもらう事にした。


 彼等の生活をフォローするのと同時にこちらの人材確保にもなる。という一石二鳥なアイデアではないだろうか。


 ただ、話によると彼等の中には長い戦いの中で大きな怪我や四肢の欠損等の重篤な怪我を負った連中もあるという。


 と、いうことで、婆さんをスカウトする時の条件として、彼等の治療と、その中で希望者がいれば組織の戦闘員や従業員として雇用する。とネロが話をしていたようだ。


 そういった連中をまさに邪悪なる組織の総帥としては闇の眷属として改造。


 鍛え上げ、世界征服における尖兵として昼も夜もなく8時間労働。残業極力なしで過酷に使役してやるのだ。ふははは。馬鹿め、休憩など75分しかやらんわ!


 と、そんなカンジで婆さん達とのやり取りは纏まり、重篤な怪我人達を治療し、同時に初期の肉体強化改造を施す。


 その内、適正値の高い者を2名程下級怪人へと改造する。かくして新たに幹部改造1アンドロイドに下級怪人2名、戦闘員15名が加わった。これで何とか悪の組織として最低限の活動が出来るようになった気がする。


「総統」


 もう徹夜上げだし今日のお仕事は終了でいいよね? と、部屋に戻ろうとした時に不意に呼び止める声がした。


「アイレか。どうした?」


「組織の名前がまだ決まっておりません。この際ですからもう決めてしまいましょう」


「あ~、そう言われてみれば、まだ決まってなかったか。どうしようかな……」


 などと考えていると、トゥリーとピャーチがやって来た。


 首にタオルをかけ、手にソーダ味のアイスを持ったその姿からして風呂上がりなのだろう。


 ふらりと現れた突然の乱入者を加えて組織のネーミングを考えているが、徹夜明けの頭ではなかなか良い名前が浮かばない。


 他の三人も意見を出すが、しっくり来るものがなかなか無い。そんな中、齧り付いた場所が悪かったのか、ドカリとイスに腰かけた勢いかは分からないが、ピャーチの持っていたアイスが、棒から滑り、床に落ちてしまった。


「あぁ~、やっちゃったねぇ」


「!? な、なんてことだぁ~。わたしのゴリゴリさんソーダ味がぁ~。絶望……絶望しかない~」



「絶望? 絶望……」


 絶望か……絶望は確か英語でディスペアーだったような。響きは悪くない。ならば、悪の組織らしく、世に絶望をもたらす帝国という意味を込めて『ディスペアー帝国』というのはどうだろうか。


「いいんじゃない? 悪の組織っぽいよ」


「わたしの尊い犠牲のあってのこと~」


 こうしてひとつの求人広告から始まった悪の組織は『ディスペアー帝国』として始動した。


 1年間、正義の味方たる戦隊ヒーローとの熱く激しい戦いが始まることになるのだ。


 とりあえず一眠りしてから。

ヘリオドール「ザ〇とは違うのですよ。ザ〇とは」

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