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プロローグ



一人の男が神の怒りに触れた

その怒りが黒い雨を降らす



なんて事のない普通の町

でも、その町には黒い雨が降る


なんて事のない普通の町

だけど、それが当たり前


なんて事のない普通の町

それは、色を失くした悲しい町



「ダメだ!それを取ってはならぬ!」

「うるさい!こんな事をして何のためになる!」



 この町にはある神様が祀られている。

 その神様は大昔にこの町を大雨から守り、大病を治したという。

 そんな言い伝えから、この町では神様が祀られた祭壇が作られ災い事が起こると儀式を執り行なうようになった。

 儀式は祭壇に”ある”物をお供えする事によって効果を発揮するという。

 幸か不幸か、この儀式を行えば災いが消え去る事が度々あったそうだ。

 しかしその儀式……今となっては一部の集落の人間にしか伝わらなくなってしまった。


 今、行われているこの儀式も祭壇に”ある”物をお供えしなければならない。


 それは「捧げしモノ」と呼ばれている。


 その「捧げしモノ」を今盗もうとした男がいた……


 名前は鴉御(アミ) 秀久(ヒデヒサ)、大財閥鴉御家の次男である。

 彼はなぜそれを取ろうとしたのか?

 彼が最後に残した言葉はこうだ。



「僕は変わろうとした、変わった結果がこれだ。神が怒ろうが、言い伝えがどうだとか関係ない!これが答えだ!」



 彼は非常に内気で陰気でパッとせず冴えない男だった。

 学校の成績は大体一番、ではあるが虐められていた。そんな秀久の事を父親は認めなかった。


「鴉御家たるもの、男らしくあれ!」


 これが秀久の父親、鴉御家当主の光助の口癖だ。

 しかし、秀久の性格はなかなか直ることはなかった。

 そんな秀久には兄がいた。顔もよく性格も良く、勉強も出来てスポーツも万能だ。次期当主は兄で文句なしだと言うほど完璧だった。

 ところが、兄は突然病魔に襲われて寝たきりになってしまう。

 これには光助も大慌てで、秀久を跡継ぎに見合う男に仕立て上げようとするが、小さい頃から兄と比べられ何事にも劣っていた秀久はもう歪みきってしまっていた。

 微塵も成長しようとする気のない秀久に耐えかねた光助はこう言った。


「お前も少しは男らしくなれ!そんなものでこの鴉御家が大きくなると思っているのか!!本当はお前なんかに頼りたくはないんだ!!」


 思わず溜まりに溜まっていたものが出てしまっていた。

 そこで、秀久は覚悟を決めて跡継ぎになる事を決めた。

 だが、なぜ秀久は「捧げしモノ」に手を出してしまったのか……



 この一件以来、神の怒りにでも触れたかのように黒い雨が降った。正確に言えばこの国は色を失った。

 国民全てが、色と言う色を認識できなくなってしまい見えてる色は白か黒。

 この一連の騒動をこの国は「黒雨事件」として調査するが、原因は分からないまま時間だけが過ぎることになった。

 その後鴉御家は町中から非難を受け、当主の光助はあまりの非難の多さと跡継ぎを失いガタガタと崩れていき、1年も経たずに一家心中を図って死んでしまった。



あれから18年。

まだこの国の雨は黒い。



 どこにでもいる1人の高校生。彼は他の人よりどうにも黒い雨が気になる。

 彼を中心にこの国は色を取り戻していくことになる……



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