3.プロゲーマー、牡丹
無人島で借金返してたら遅れました。
申し訳ございません。
フクロウが序盤からいきなり謎に直面して考え込んでいる同時刻、1人の少女は既にある仮説を立て、ゲーマーの勘を頼りに走り出していた。
初見の敵をほぼ最高効率で倒すその少女の名は『牡丹』。
ゲームを嗜まない者であっても名前くらいなら知ってるという方も多いであろう。
『人類最強の格ゲーマー』『ゲームに愛された女』『人力TAS』などと言われ伝説を残し続けているプロゲーマーである。
「見つけた…!」
ゲーム開始から約30分。
誰よりも早く動き始めて、見つけたのは集落である。
まず、実績を見た牡丹は、女神像の作り方が分からないことにすぐに気づき、草原を走り出した。
プレイヤーのリスポーン地点である草原を少し歩くと、焼け野原や、瘴気に包まれ腐った森ばかりで、最初の草原が嘘のようであった。
これを見た牡丹は、どこかにリスポーン地点と同じような草原があり、そこに人がいる可能性があるという仮説を立てた。
そしてゲーム開始から30分という、人によってはまだ何も始まっていない時間に、集落を見つけることができた。
この瞬間、隠されていた『世界実績』の1つが解除され、全プレイヤーが動揺したが、牡丹の名前を見た瞬間落ち着きを取り戻したという。
ちなみに、この時配信などをしていた人達の反応がほとんど同じだったことから、「シンクロナイズドゲーミング世界記録」などとネット上で言われるようにになった。
「すいませーん」
牡丹がNPCに話しかけると、そこにいた人達が警戒と怯えを孕んだ目で見てきた。
「怪しい者ではありません。私は貴方達を助けに来ました」
しかしそこは流石のプロゲーマー。両手を上げ警戒心を解きながら、落ち着いた声で説明した。
「私は女神様により召喚された異界の者です。貴方たちを、この世界の危機を救うため、多くの仲間とここにやってきました」
「な、なんだって…!?すぐに聖女様にご報告しなければ!こちらにきて下さい!」
まるで最初から台本があったかのような完璧なセリフを当たり前のようにアドリブでやってのける。
当たり前だが、これはプロゲーマーなら誰でもできる訳ではない。竜胆牡丹だからできるのだ。
まるで最初から答えを知っていたかのように、最速でフラグを回収し、聖女とやらに会えることになった。
「聖女様!!この人です!」
「うむ、ご苦労であった。して、お前さんが女神様の遣いであるか」
出てきたのは聖女と呼ばれた小さな少女。どうやら、この少女がこの集落での権力者のようであった。
「して、女神様はなんと言っておられたのだ?」
「女神様も余裕がないようで、多くは聞いておりません。
ただ一言、女神像を作れとだけ」
「ふむ……女神様か……。作れる者を探させておこう」
「ありがとうございます。それで、この世界で一体何があったのでしょうか」
情報を得るべく、何があったのか、ゲーム始まる前に起こった事件を、聖女は語り始めた。
『ゲーム用語解説』
TAS:ツールアシステッドスピードラン(英語: tool-assisted speedrun)の略称。
主にゲーム内で可能な限り最適な動きを再生することを目的としたコンピューターのようなもの。
この作品の登場人物、牡丹は、その無駄に無駄のない圧倒的なプレイスキルから、人力TASと呼ばれている。