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29.2人1組のボスはだいたいクソ

イワヒバとフクロウの2人がボス部屋の扉に手をかける。

流石に1日経つとフクロウもゲームしたくなってきたのか、イワヒバちゃんの援護をするとか言い出したので、今回なフクロウも一緒に攻略をする。

男にだって二言はあるのだ。


【『双子の精霊』メラ&ニクス】


扉を開けるとまずボスの名前が表示され、2体の精霊が現れる。

それぞれ白と黒の着物を着た、小さな子供のような見た目の2人が、ふわふわと仲が良さそう飛び回っている。

ちなみに白い方がメラ、黒い方がニクスである。


「『コウヅラッウダ・ウィヒ』『隠密』」


フクロウがイワヒバの大剣に、エンチャントの魔法を掛け、自身は狩人のスキル『隠密』でヘイトを消す。


2体のヘイトがイワヒバに集まり、一斉に魔法の弾幕が襲いかかる。


「『バーストスラッシュ』!」


アーツを使い、なぎ払いで襲い来る魔法の弾幕を相殺する。


アーツというのは、強力な威力の代わりに動きを強制されてしまう側面もある。

MPの消費や隙も多さから当然連発はできないので、使うタイミングを考えなくてはならない。


イワヒバはそれが異様に上手いのだ。

隙を晒した敵に当てるのであれば誰にでもできる。スキルを当てやすくする為に作られたものだからだ。

だが、飛んでくる魔法の弾幕をなぎ払いの一撃で打ち消すのは容易なことではない。

使う位置やタイミングを綿密に調整して、ようやくできるかできないかということを、その場の判断でやってのけたのだ。


だがバケモノはイワヒバだけではない。


「『致命の一撃』」


フクロウもまた、凡人ではない。

ゲームの為だけに格闘技や武術を習得し、ゲームの為だけに体を鍛え、ゲームの為だけにありとあらゆる知識を詰め込んだ男だ。決してただのロリコンではない。

それらの技術はスキルの効果を最大限に引き出し、宙を舞う敵の背後に回り込み、『致命の一撃』を与えることができる。


ニクスに守られるように背中に隠れていたメラを一撃で倒す。

だが、厄介なのはここからだ。


『aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』


メラを倒されたニクスの咆哮により、2人にデバフがかかる。


「イワヒバちゃん!無理に動こうとしないで!」

「わかった!!」


VRゲームにおける『身体力へのデバフ』は、単に素早さ関係が逆転するだけではない。

現実的に言い換えれば、『突然筋力が落ちて身体が動かしにくくなる』ということだ。つまり操作感が変わる。


ふぅっと息を吐く。

フクロウにヘイトを向けるニクスを見据え、剣を構える。


「『マジックブレード』」


珍しく静かに剣を振る。

すると、エンチャントした魔力が斬撃として飛び、ニクスに命中する。

怯んだ隙を見ると、それまで防戦一方だったフクロウが反撃の一撃を当てる。


【『双子の精霊』メラ&ニクスを撃破しました】

【『白魔術の書』を入手しました】

【『黒魔術の書』を入手しました】


「やったー!」

「ナイス、ホント上手だったよ」

「おにーさんの作戦のおかげだよ。わたしはその通りに動いただけだからね」


本来、初見で攻略方法を教えて一緒に戦うというのはあまり好ましくないのだが、今回は時間がなかった。


「じゃあ村まで戻ろうか。待たせちゃ悪いしね」

「うんっ!」


もう既に忘れている読者もいるかもしれないが、一応このゲームにはメインストーリーがある。

4体の精霊を解放せよというのが目的だったはずなのだが、イチイの企みにより毒沼に落とされ進行が止まっていた。


普通なら詰んだと思い運営にバグの報告メールでも送るところだが、いい意味で頭のおかしいゲーマーが100人も集められている。つまりまともな人間はいない。

ヒメ達を中心に「毒沼の水全部抜く作戦」が決行され、1週間以上経っていた。

そしてついさっき、ようやく救出されたのだった。


その連絡を受けてしまったので、早くボスを倒して帰らなければいけなくなり、仕方なく作戦を教え2人で戦っていたのである。


「一応待ってもらってるけど急がないとね、走るよ!」

「うんっ……ってはや!?ま、まってぇ!!」


ここで身体力の差が出てしまった。

イワヒバは攻撃と耐久にしかほとんど振ってないので足が遅い。困った。


「じゃあ肩車して運んで!!」

「えっ」


病院で寝たきりのイワヒバにとって普通の生活とはファンタジーである。

広大な外の世界以上に、平凡な日常への憧れが強い。例えばパパに肩車してもらうなど。


「スゥーー……」


フクロウはフクロウで、「ロリのふとももに顔を挟まれるとかまずくないか?」という邪な感情でフリーズしていた。


「どーしたの?」

「……あぁ、うん、そうだね。それがいいね」


一見誘惑に負けたように見えるが、これは理性の勝利である。

その証拠に表情は何よりも真剣で、さらにアーツや魔法でできる限りのバフをかけているのだ。



その日、幼女を肩車しながら物凄いスピードで走る姿が目撃され、しばらく語り継がれたのは、また別の話である。


フクロウが完璧な作戦を立てた&プレイヤー側も2人だったから簡単に倒していたが、ソロでやると本当に厄介なボス。

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