2.ゲーム開始
フクロウがゲームに入り込むと、真っ白な何もない空間から始まった。
「ふむ…ここは一体…?」
世界観は剣と魔法のファンタジーだと聞いていたので、予想外の場所に少し戸惑う。
すると、ホログラム映像のように目の前に美しい女性が現れた。
瞬くような金色の髪に、古代ギリシャを思わせる純白の衣。背中からは大きな翼が生えている。
その出で立ちは、天使か、あるいは女神を思わせる風貌だ。
「よかった……!来て下さったのですね……!
時間がありません、まずは『女神像』を作って下さいっ…!おねが……しま…………」
フクロウを見て、安堵の表情を浮かべると、焦燥感を感じさせる声で、女神像を作ってほしいと言う。
セリフが途切れ途切れになっていき、壊れたホログラム映像のように女性の姿が掻き消えると、空間が歪み、瞬く間に広大な草原へと景色が変わった。
ほぼ同じタイミングで他のプレイヤーも転移してきている。
「おぉ……凄いですね……」
ワープというのはVRでないゲームであれば、当たり前に使われていた演出であった。
しかし、VRゲームになってからは、いきなり景色が変わることによる違和感や、バグなどによって転移が失敗するなどの問題があり、プレイヤーの転移は、簡単に言えばどこでもドアのような演出が主流であった。
それを空間を歪ませる演出によって、違和感をある程度解消して、外から見たら完全に違和感なくワープしてきてるように見えている、ということに驚きを隠せずにいた。
「いやぁ、今の凄いですね…見ました?今どきこんな派手なワープの演出は初めて見ましたよ」
VRでは中々見られない演出に興奮を隠せなかった。
同じ光景を見ていた視聴者も「これはヤバイ」「変態技術すぎw」と言った語彙力のないコメントから、先程の演出から少し考察したコメント、さらには「テンション高いフクロウさんかわいいw」と言ったコメントまであった。
「コホン……さて、それではゲームをはじめましょうか。
まず、女神像を作れと言われましたが……あ、ステータス開ける見たいですね」
フクロウはゲーム実況用のカメラを一人称視点にして、視界の端にあるアイコンをタップして、手際よくステータスウインドウを開く。
この当たりの操作は他のゲームでもよくあるメニュー操作なので、
「ふむふむ……職業やらスキルやらの項目があるので、今後手に入るのかもしれませんね……。
で、実績のところで目的がわかるみたいですね」
『実績』と書かれた場所をタップすると、説明文が表示された。
・実績
プレイヤーが特定の行動をとることで実績が獲得できます。
「世界実績」はプレイヤー全体で共有され、誰かが達成することでストーリーが進みます。
「個人実績」は、自分が達成することで、経験値や称号などを与えられます。
「なるほど、つまりプレイヤー全体の目標としてこれが提示されているわけですね。そして今わかっている実績は『女神像を作れ』と『拠点を作れ』だけですね……」
そしてしばらく、ステータスウィンドウを弄りながら項目をチェックしていると、ふとあることに気づきこう言った。
「はて、女神像ってどうやって作るのでしょう」