29.閑話休題、報酬と称号を見るだけ
強制ログアウトされたイワヒバだったが、10分ほどした後すぐに戻ってきた。
「確かにちょっと眠くなったかもだけどさー、それくらいで大袈裟だよ」
「イワヒバちゃん、それは眠くなったんじゃなくて気絶だよ……」
「似たようなもんだよ。それに病院の許可は貰ってここに戻ってきたから大丈夫だよ!」
「うぅん……まぁそれならいいけど……」
イワヒバは「さて」と元気よく言い、話題を転換する。
「それより、色々見せた方がいいよね?貰ったやつ!」
「あぁうん。急に配信者としての意識が高くなったね?」
「よく考えたら見てくれてる人がいるんだから、その人達がわかるようにしないといけないなーって」
「すごい!天才!!」
フクロウはどさくさに紛れてイワヒバの頭をクシャクシャと撫でた。ノータッチとは一体なんだったのだろう。
しかし、そんなフクロウの内情を知らない視聴者には、微笑ましい光景に見えているらしく、「てぇてぇ」というコメントが溢れかえっている。
「よし!じゃあ紹介していくよー!まずは……『龍牙の大槌』だね。武器だね!デカい!!!」
アイテム欄から取り出された『龍牙の大槌』は、イワヒバが思わず叫んだように、相当な大きさだった。
ギルグが使っていた物と同じなのだが、如何せん小さなイワヒバが持つと、余計に大きく見える。
「ここで数値も見てこう」
「あ、そうだね。えーっと…うん、攻撃力+100!?これ使っていいの!?」
「装備条件みてごらん」
「あっ、物理攻撃50に、物理防御と身体力が25ずつ必要なんだ。うーん、攻撃力と防御力はともかく、身体力には全然振ってないからなぁ…」
残念なことに、『龍牙の大槌』は装備条件を満たしていないようだ。
試しに振り回そうとしても、重くてまったく扱えない。
「今のところ使えないし、使える見込みがないから、もしかしたら正式版に持ち越しできるかもって噂だよ。
イワヒバちゃんらしい武器だから取っておいて欲しかったんだ」
「あぁ!だからこっちを優先したんだ!ありがと!!」
フクロウがわざわざ裏ボスから勧めたのは、こういう理由もある。
ただ、実を言えばそれだけではない。ないのだが、その意味もなくなってしまったため、フクロウは曖昧に微笑むことにした。
「まぁ、そんなとこ。じゃあ、次は称号を見ていこうか」
「はーいっ!」
称号の効果は口頭で読んでいくのは大変なので、画面にステータス画面だけ映す方法をフクロウに教えて貰い、称号のテキストを映し出した。
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【称号『巨岩騎士の討伐者』】
ギルグとの勝負に勝利した者に与えられる称号。
ギルグは魔法嫌いで有名であったが、それゆえ魔法への対策もすることが困難であったという。
称号セット効果:魔法防御力+5%
【称号『巨岩騎士』】
『巨岩騎士』ギルグの魂を解放したものに与えられる称号。
かの騎士は己と同等の力を持つ者を求め、力を示した者には己の力を与えようと約束していたのだという。
称号セット効果:『ギルグの大槌』の使い手となる。
【称号『火事場の女王』を獲得】
限界を超えたダメージを叩き出した者に送られる称号。
世の理を曲げてまで、成し遂げたいことがあったのだろうか。
称号セット効果:???
【称号『手負いの獣』を獲得】
傷つきながらも、単独で強者に勝ったものに送られる称号。
死への恐怖をものともせず戦う姿は、まさに獣と言えよう。
称号セット効果:HP上限が半分になるが、与ダメージが2倍になる。
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「え、なんか称号多くない……?」
フクロウはそのセリフを声に出すだけで精一杯であった。突然の未知の情報に、思考がフリーズしてしまったのだ。
「そうなの?」
「う、うん。1番上の『巨岩騎士の討伐者』、これが通常、ギルグを倒した時に貰えるものだよ」
「ふぅん……」
しかし、イワヒバはまだことの重大さが分かっていないようだ。
「普通はそれ1つしか貰えないはずなのに、イワヒバちゃんはいくつも貰えてる。しかも、その称号は全プレイヤー中イワヒバちゃんが初めて取った称号だよ!!」
「そ、そっか」
若干勢いがありすぎたようで、流石のイワヒバちゃんでも若干引いている。
内心かなり傷つきつつも、表面上はいつも通りを装い、フクロウは解説を続けていく。
「特にこの称号『巨岩騎士』はかなり優秀だと思う。ちょっとこの称号セットしてみてくれないかな」
「わかった!!!……えーっと、称号のセット……あ、ここかな?」
「そうそう、それでさっきの『ギルグの大槌』を持ってごらん?」
「え?……あ!すごい!軽い!」
フクロウの読み通り、称号セット効果の『ギルグの大槌』の使い手となるというのは、『ギルグの大槌』を必要ステータスが足りなくても扱うことのできるという効果だった。
「ぶっ壊れ称号だよこれ!イワヒバちゃん、これずっと付けておくといいよ!」
「おぉ…!っていや!他の称号は見なくていいの!?」
イワヒバにツッコまれ、冷静さを取り戻したフクロウは、コホンと1つわざとらしい咳払いをし、話を戻す。
「そりゃあ、勿論見るけどね。とはいえ、『手負いの獣』は強いけどその称号ほどじゃないし、『火事場の女王』はまだ詳しい効果が分からないからね。
ここではまだ材料が足りないし、僕が後で考えておくよ」
「なるほど!わかった!!」
「多分なにもわかってないね!?でも聞き分けのいい子は嫌いじゃないよ!
ということで、今回の配信はもうここまでにしようか」
と、時間も大分かかってしまった為、1度終わらせようとしたが、
「……え?ここのボスは?」
ちゃんと目的を覚えていた賢いイワヒバちゃんの発言により、そのまま続行となった。
次回!襲いかかる双子の敵に大苦戦!?




