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15.害悪プレイヤーの勝利への方程式

「これ、詰んだかも」


あくまで勘にすぎないが、しかし、牡丹の勘はよく当たる。特に、ゲームに関しては未来視とも言えるレベルでの勘を持っている。

そんなプロゲーマーの勘が、詰んだ可能性があると言っている。


そしてそれは正解である。


それでは、イチイがダンジョンに潜った後の話を、読者の皆様だけに特別にお見せしよう。





イチイがダンジョンに入って数分。思った以上に苦戦していた。


「いやレベル高ぇ!」


そう、適正レベルに達していなかったのである!

そもそもゴブリンの村自体、相当無理をして来た場所なのだから当然である。


「思えばあの妙な間が空いたセリフも、想定していたよりレベルが低すぎて、用意されてないセリフを作ってたからなのかもな…っ」


その通りである。

ゲームの中でNPCに「お前にはまだ早い」と言われたら、それはレベルが低いと遠回しに言われているので注意しよう。


「モンスターの足が遅いのが不幸中の幸いだな。上から落ちてくるスライムに気をつけりゃこのレベルでもなんとかなるわ」


勿論、これはイチイのPSがあってこその話である。


遅いと言ってもそれは「全力で走ればギリギリ追いつかれない」というレベルの話であり、それに何度もエンカウントして追いかけ続けられればいずれはダメージを受ける。そしてイチイのレベルなら2、3発も当たればデスするであろう。


そうならないのは、PKとして多人数を敵に回してきた経験が活きているのだ。


「よし、ついたな。まぁ流石にボスは倒せんだろうし、死に戻りするか」


ボスのいる部屋まで辿り着いたが、流石にレベル差があり過ぎて、まともに戦っては勝てない。

こんな時に、ダンジョンの外に出たい、街まで戻りたいという場合に、自滅してセーブポイントまで戻るという方法がある。これを死に戻り、またはデスルーラという。


イチイはおもむろに短剣を取りだすと、自分の首に突き刺した。





イチイがダンジョンに入ってから30分。死に戻りしたイチイが長老に声をかける。


「よっ。戻って来たぜ」

「むっ、思ったより早かったな。もうクリアしてしまったのか」

「いや?流石にレベルが低いからボス戦はやらずに自殺して戻ってきた」

「お、おぉ…そ、そうか…」


長老が生死感の狂ったサイコパスを見るような表情でドン引きする。


ちなみに、VRになる前のゲームであれば、死に戻りくらい誰でもやっていたことだが、VRゲームになると、実はそうでもない。


リアルさは低くしてあるとはいえ、モンスターに襲われたり、ましてや自分の身体を自分で傷つけるのが怖いという人は今でも多く、VRゲーム登場初期はコアなゲーマーでも弱腰になっていたほどだ。


今ではゲーマーは死んでも「めんどくさい」としか思わず、効率がいいなら自殺もするサイコパス集団に戻りつつあるが。



閑話休題。



「で、結論から言うとクッソ簡単だったから、どっか別の場所に隠した方がいいぞ」

「そんな馬鹿な……」

「足止めならともかく、最後の砦として使うのは論外だぞ」


イチイ含めたコアなゲーマーからすれば、平面の迷路という時点で難易度はイージーであった。

中の広さの割に、敵に襲われながらで30分と考えると、小学生の作った迷路の方がまだマシだとイチイはため息をこぼす。


「なら、異界の勇者殿は一体どんな素晴らしい案を出してくれるのだね?」


皮肉混じりに長老が言うと、イチイはそれにやや困惑しつつも、アイデアを説明した。


ゴブリンの魔術師を引き連れ、精霊が封印されているボス部屋まで向かう。

魔術師がボス部屋のゴーレムを停止させると、イチイが精霊の下まで向かい、封印を解く。


「……ありがとうございます、勇者よ。これでこの地を再び守ることが」

「ベケクン・ヂュゲヂクギ・ミッヂクギ」


魔術師が呪文を唱えると、再び精霊が水晶玉の中に小さくなって封印された。


それを持ってゴブリンを村を出て数分。

瘴気の漂う森の中の、毒沼の中にそれを落とした。

詰み:将棋で相手がどの駒を動かしても王将を取られてしまいなにもできない状態。

ゲームでは、完全に何も出来ることがない、あるいは、ほぼ負けが決まって諦めている時に言う。

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