13.まるでRTAのような
田中がYESのボタンを押すと、女神像に光が集まり、派手なエフェクトを撒き散らす。
光は次第に強くなっていく。その場にいた全員が眩しいと感じる程に。
光が収束し、目を開けると、女神像に重なるように女神が現れた。
プレイヤー達の注目が集まる中、コホンと咳払いをし、女神が口を開く。
「えー、皆様、ありがとうございます。あのままでは危うく消滅してしまうところでした……」
「一体、何があったのです?」
田中が女神に質問する。
「そうですね……まずは、この悲劇の全容をお教えしましょう」
──『それ』が現れるまでは、人間は他種族と共存していました。まだ魔族なんて言葉で人類が分けられていなかったころがありました。
しかし100年前、突如として『それ』が現れました。
『それ』は毒のように、病のように、人々を侵していきました。
分かりやすく言い換えるのなら、信仰でしょうか。
とあるペテン師が、人々に言いました。
──神などいない、と。
言葉巧みに騙され、勢力が拡大され、次第に敵対するようになり……その者達は「魔族」と呼ばれるようになっていきました。
『それ』の名は──
「──魔王。それが、人類を滅ぼそうとし、そして私を殺そうとした者の正体です」
「なぜ、魔王はそのようなことを?」
「私を殺せば、世界ごと消滅しますから。新しく世界を作って神にでもなろうとしているんじゃないかと……」
よくあるパターンであった。
勿論、これはあくまで女神による推測でしかないので、魔王の本当の目的は測れないが。
しかし、ここにいるゲーマー達は、よくあるテンプレートということで、特に疑問を挟むことはしなかった。
むしろ変にオリジナリティを出そうとしてネタみたいな目的にされる方が困るというものだ。
「まあ、それで、人間と人間以外の種族が戦争になってて、気がついたらこんな有様に……」
女神が目を伏せて言う。
プレイヤーは、あくまで冷静に、そう、冷静に、そして一斉に同じことを思った。
即ち──こいつ無能なタイプの女神だ、と。
女神の言っていることを簡単に言えば「気づいたら戦争になってて、気づいたら人類がほぼ絶滅していて自分も消滅しかけていた」ということだ。ボーッと生きてんじゃねえよと言いたい。
この世界が一神教でないことを願いながら、プレイヤー達は女神の話を聞く。
「ということで、まずはこの地を浄化しなければなりません。4体の大精霊を解放して、この地を不浄の地にした『岩石龍ウロボロス』を討伐してください!」
『火、水、風、土の大精霊が封じられた祠がマップに追加されました』
なるほど、これが次の目的か、プレイヤー達はスタートダッシュを切ろうと準備を始めようとすると、
「そして、貴方達に祝福を与えます…!」
『「ジョブ」が解放されました。メニューからいつでも選択することができます』
「「「「お、おぉ…!」」」」
なにやら少しタイミングがおかしかった気がするが、気を取り直してメニューをひらk…
「貴方達を強化するため、更なる試練を与えます…!」
すると、ゴゴゴゴゴ……!という音と地響きと共に洞窟や塔が現れる。
『試練の洞窟が解放されました』
「「「「「!?」」」」」
突然、一気に解放されて戸惑うプレイヤー達であったが、ふと、ある事を思い出す。
「あ、そういや色々すっ飛ばしてたんだった……」
そう、本来なら村にいる鍛冶屋の息子が、木製の小さな女神像で間に合わせるはずであったのを、創造神田中によって一気に鉄の、クオリティの高い女神像が作られてしまったのである。
それによって、本来少しずつ情報とコンテンツが小出しにされるはずだったものが、一度に全て解放してしまい、会話イベントが一度に発生してしまったのである。
運営の想定では、早くても2週間はかかる計算であった女神像のイベントは、女神より有能な人間達によって1日で突破されてしまったのだった。
「1人用のオープンワールドRPGじゃねえんだから……。まあいいや、まずはジョブを確認……」
気を取り直して、プレイヤー達がジョブを確認しようとすると、
ポーン
と、システムアナウンスの通知音がなった。
【土の大精霊が解放されました】
一体何があったのでしょうね。
そういえば1人、この場にいないであろうプレイヤーがいますねぇ。
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