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実はあったチュートリアル

大分遅れました、すいません…!

では、お楽しみください!

オープニングを見終わり、景色が歪み、真っ白な何もない空間から、草原へと景色が変わっていく。


「うわっ…と。ほえー……!」


VR空間とはいえ、外の世界を見たことのないイワヒバにとって、受け取る情報全てが新鮮だった。

見える景色が、肌を触る風の感触が、晴れの日の暖かさが、土の匂いが、ダイレクトに脳にインプットされる。


ゲーム内のいい景色など飽きるほど見ているゲーマー達ですら、グラフィックの進化の度に一々感動しているのだ。


なにも知らないイワヒバが、運営が「魅せる」為に作った景色を見て、涙がでていることすら気づかないまま、呆然と立ち尽くすのであった。


【おーーい!】

【大丈夫?】

【これ大丈夫か?】


およそ10分、フリーズしているイワヒバに視聴者がコメントを打つ。

最初は、涙を流すイワヒバを見て、病気のことを聞いていた視聴者は一緒に感動していたりもしたものだが、流石に10分もフリーズしているのを見ると、本当にフリーズしているのでは?と心配の声があがっていた。


「はっ……ご、ごめん、ちょっと、びっくりしちゃって……。えっと、ゲームの不調とかじゃないから安心して!」


ようやく気がついたイワヒバが、涙を拭いながら視聴者達に語りかける。


「よし、じゃあさっそくいこうか!えっと…………どこにいけばいいの?」


牡丹のようなゲーマーとしての勘どころか、ゲーム自体やったことのない彼女には、そもそもどうすればいいか分からなかった。


【ステータス画面開けば色々わかるよ】


と言われたので、まずはステータス画面を開く。

ステータス画面の使用は、VRゲームに限らず、どのソフトでも基本的に同じ仕様である。


「えーっと…まず、女神像を作れーっていうのと、村に行けばいいらしい?」


【女神像はもう田中が作り始めてる】

【まずは村にいこうね】

【今はもうマップみれば村の位置はわかるはず】


「えーっと…じゃあ、村まで一直線にいけばいいんだね?あと田中って誰?」


【創造神】

【創造神やで】

【創造神って言われてる、物作りなんでもできる人】

【なんでも作れる人が女神像作ってくれてる】

【お前ら創造神じゃわからんやろ】

【まぁ一般人には理解できないからしゃーない】


「ふーん…?まぁ、じゃあそれについて私がなんかやることはないんだ。

えーっと、あと他に見ておくところは……あ、チュートリアルってなに?」


【え、チュートリアルなんてあったんや】

【チュートリアルあるんだ】

【まあ、練習みたいなもん】

【初心者ならやるべき。誰もやってないけど】

【練習みたいなもんだからやっとけ】

【チュートリアル初めて見た】


チュートリアル。それは、ゲームを始める時に、基本操作を教えてくれるものである。

初めてプレイするゲームならチュートリアルをやるのを推奨されているが、ゲームに慣れている者の中には、チュートリアルスキップ派というのがいる。

簡単に言えば、「ゲームなんてやればわかる、早くゲームしたい」という層である。


つまり、ここにいるほとんどのプレイヤーはチュートリアルをやっていないのである…!


「ふーん、じゃあやってみようかな」


『チュートリアルを実行しますか?』というメッセージにYESと選択すると、イワヒバの目の前にモンスターが現れた。


「えっと…『レッサースライム』だって。かわいいね」


『レッサースライム』というモンスターは、青色のゼリー状のプルプルとした身体を持つ、大人の膝下くらいの大きさの丸々とした固形のモンスターである。

つまり、『スライム』と聞いてほとんどの人が思い浮かぶド○クエの雑魚モンスターを思い浮かべて貰えれば良い。


『攻撃をしましょう』というメッセージを見ると、イワヒバはしっかりと剣を握りしめる。

そして、その小さな体躯に見合わない大剣を振り上げ、「えいっ!」と可愛らしい掛け声で振り下ろす。

攻撃がレッサースライムに当たると、メッセージがポップアップされる。


『お見事!攻撃を当てることができましたね!』

『相手に「傷」を作ることができました!

予め設定された「急所」か、作った「傷」に攻撃を当てると「クリティカル」になり、1.5倍のダメージを与えることができます!』


「よし、もういっ…かいっ!」


先程と同じように、大きく振り上げ、思い切り振り下ろす。

しかし、当然と言えば当然だが、素人こ振るった剣が、まったく同じ場所に当たるということはなく、普通にダメージを与えるだけになってしまった。


「ありゃ…難しいな…」


【やっぱ難しいのな】

【まぁしゃーない】

【クリティカル当てるのは慣れればできるから】

【モーションアシストをONにすれば簡単に当てられますよ】


すると、またメッセージがポップアップされた。

『モーションアシストをONにしますか?』


「ん?モーションアシスト?」


モーションアシストとは──


【モーションアシストはゲーム内での動きをある程度自然な形でサポートしてくれるシステムです。簡単に言えば、誰でもある程度様になった動きができるようになります。優先的に急所を狙うシステムになっているようです】


地の文の説明より早く、有能解説ニキがコメント欄に現れ解説してくれた。


「おぉー!ありがと!」


解説をみたイワヒバは、YESを選択してモーションアシストをONにすると、まず、構えからそれっぽくなっていた。

「えいっ」という可愛らしい掛け声は変わらず、しかし、その剣はしっかりとモンスターの傷を捉えていた。


スパァン!という気持ちの良い音ともに、レッサースライムはポリゴン片になって散っていった。


「やったー!」


【おめ!】

【おめでとうございます!】

【おぉー!】

【チュートリアル助かる】


「すごいね、これ、楽しい!」


【楽しそうでなにより】

【ええなぁワイも早くやりたい】


『レベルアップしました!ステータスポイントを振り分けることができます!』


レベルアップのメッセージとともに、ステータスウインドウがポップアップされる。

GWOでは、レベルが1つ上がるごとに2ポイント振り分けることができる仕様である。


「んーと……どうしようか?」


【とりあえず攻撃かな】

【好きに振るといいよ】

【攻撃に全振りで良き】

【耐久方面は後回しでいいかな】

【攻撃と防御】

【今は攻撃に振ると良いです。全体としては、防御力に高めに振ることで弱い攻撃なら技がキャンセルされない為、大剣の大振りな技を振るチャンスが増えます】

【なんかガチ勢いて草】

【なんでそんな詳しいんや…】

【長文ニキおっすおっす】

【まあとりあえず攻撃でええやろ】


また謎の長文ニキが解説してくれた。どうやらかなりこのゲームの仕様について詳しいようである。


「おっけ!じゃあ攻撃に2振っちゃうねー!」


ステータスを振り終わるとチュートリアルの続きが表示される。


『スキルレベルが上がって、『アーツ』が使えるようになりました。

『アーツ』は特定の動きをする、あるいは、技名を叫ぶことで発動します』


「ん?アーツ?えーっと……これか。

じゃあいくよ……『バースト』!」


イワヒバが技名を叫ぶと、派手なエフェクトとともに体が勝手に動き出す。

少しの溜めの後、高くジャンブして、一気に振り下ろされる!


攻撃がレッサースライムに当たると、粉々に破裂して、HPが全損した。


『以上でチュートリアルは終わります。冒険をお楽しみください』


メッセージがでて、チュートリアルが終わる。


「おぉー…体が勝手に動いた…!

じゃあ、行こうか!まずは村まで行けばいいんだったね」


チュートリアルを終えて、小さな少女は、大剣を携えて村へと旅立つのだった。



いつも感想、評価を頂きありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 【異世界でお買い物】と申します。 小説でチュートリアルを体験するのは、 とても新鮮な気持ちです。 さまざまな登場人物、そのドタバタした群像劇、 心躍る気分で拝読させて頂いています。…
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