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9.100日後に英雄となる少女

前回よりかなり遅れてしまいました!覚えてますか!?

しかし、今回はなんといつもの3倍の量書いたので許して下さい!

『グロウワールドオンラインへようこそ』


とある病院の病室から、1人の少女がログインした。

少女は生まれつき免疫力が低く、一生を無菌室で過ごし、喘息、心臓病、小人病、視力障害、聴力障害など、数々の病気や障害を持って、この世に生まれ落ちた。


少女が生まれた時、医者はもって1週間の命だろうと言ったという。

だが、奇跡的に生き延び、現代医療の力もあって、なんと16歳になっていた。


奇跡は重なり、これだけの身体的な障害を抱えながら、脳にはほとんど影響はなく、VR空間の中でなら、健康体の人間と同じように会話をすることも可能であった。


少女は、病室と言うには広く、世界と言うには少し狭いVR空間と、現実の病室を行き来して、いつか医療が進歩して普通に暮らせるようになる日を夢見ながら、静かに暮らしていた。


そんなある日、『グロウワールドオンライン』のソフトと配信のセット、そして運営からの招待状が届いた。


招待状には一言。

『己の存在を世界に示せ』


少女の人生は、孤独であった。

病院の関係者や、同い年くらいの入院患者とは時々話すが、せいぜい少女が死ねば忘れられる程度の関係性だと思っていた。


だから、死ぬ前に自分が生きた証が欲しいなんて思ってしまったのだ。


そんなわけで、配信を開始して、ゲームをスタートさせる。


「……よし、まずはキャラメイクだね……ってうわ……」


GWOのキャラメイクは、まず現実の自分の姿が映し出され、そこからいじっていく方法でアバターを作り上げる。

しかし、映し出された少女の『現実の自分の姿』というものは、たった100cm程の小さな身体に、アルビノの病的に白い肌、痩せこけた身体というものである。

まるで亡霊のような自分の身体に、自分で驚いてしまっていた。


「久しぶりに自分の体見たけど、普通に気持ち悪いわね……」


【こんにちは!初見です!】

【大丈夫ですか?】


すると、初の視聴者がやってきた。

100人しかプレイヤーのいないゲームで、しかしこれだけ注目されているゲームの配信は貴重である。

SNSで宣伝などしていない少女ですら、既に1人見に来るくらいである。


「あっ、大丈夫です。ちょっと病気の関係でこうなっているだけなので〜」


なにも大丈夫ではない。

1人目のリスナーは思考した。

これは迂闊に突っ込んでいい話なのだろうか、特に隠したり誤魔化したりする様子はなかったが茶化していいような話でもない気がするいやしかし心配してもしつこいだろうし本人が大丈夫だと言っているのだからいらん心配をする必要はないだろう……。


刹那の思考の末導き出された最適解のコメントを打つ。


【大丈夫じゃなくて草】


馬鹿にするわけでもなく、しつこく心配をするわけでもなく、極普通のツッコミとして受け取れる最適解……というより無難なコメントを残した。


そしてコメント見た少女は思った。

……草、ってなんだろう……?


SNSなど見たこともない少女にはあまりに理解不能な言語であり、多分誤字であろうとスルーすることにした。


結果、ツッコミが滑ったみたいになってしまって、視聴者君だけ変な空気に包まれてしまった。


【こんにちは!】

【初見です】

【はじめまして】

【初見です、キャラメイクから見せてくれるのありがたい】

【こんにちは】


と、そんなこんなで、キャラクターメイクで遊んでいたら、視聴者が集まってきた。


「わ、いっぱい来た…!キャラクターメイクの案があれば送ってきてください!」


ということで、視聴者も混じえてキャラクターメイクをすることになった。


【そのままでよくね?】

【身長はもうちょい高い方が楽かも】

【それでいい】

【身長がかなり低いですが、現実の身長と差がありすぎると動かし辛いですよ!】

【身長は流石に低すぎる】

【いや、むしろ下げれるとこまで下げよう】

【それより髪長くしてみて】


「お、おぉ……すごい勢い……。あ、身長はまだ弄ってないんで、現実との差はないです」


【え?】

【ん?】

【え?】

【は!?】

【嘘やん】

【何歳ですか?】

【何歳?】

【まさかのリアルロリ…?】

【流石に嘘やろ…】

【もしかして:小人病】


「嘘じゃないですよー!ええっと、あ、そうです、小人病です!あ、年齢は16です」


【あっ…】

【嘘っていってごめんね】

【すまん】

【ギリギリ合法じゃなかったか…】

【合法ロリキタ】

【切り抜き班はよ】

【合法ロリだ!!!】

【正直すまん】

【16ならまだ合法じゃないで】

【合法……じゃないかぁ……】

【身長何センチですか!?】

【病気ならしゃーない】


嘘松扱いを反省するもの、合法ロリを見つけ拡散する者、よく考えれば合法じゃねぇなと思い直す者と様々であった。


「あーいえ、大丈夫ですよ!ありがとうございます!ちなみに確か105とかだったと思います」


だが、たくさんのコメントがある中で、病気を疑ったり、馬鹿にしたり、気味悪がったりする者はいない。

それは、少女にとって、ありがとうを言うには十分な理由だった。


「じゃあ、キャラメイク続けていきましょう!やっぱ、身長は多少伸ばした方がいいですかね?」


【そのまま】

【伸ばした方がやりやすいのは確か】

【100cmアバターを使いこなせるのは君だけだ!よってむしろ下げよう】

【もう下げちゃった方が個性でるよね】

【そのままで】


「じゃあ…下げます!」


100cmアバターを使いこせるのが自分だけという言葉は魅力的であった。

できれば目立ちたいという目的もあり、「わかってる」行動を的確にしていき、キャラメイクが終了した。


「ええっと…職業と武器を決めるのね」


職業選択はMMORPGでの最初の関門である。基本的に気軽に転職できるとはいえ、プレイスタイルを大幅に変えるのは一般人には難しく、最初のキャラメイクで今後のプレイが決まると言っても過言ではない。


が、β版で最初に選べる職業は旅人のみなので、武器選択に移った。


初期の武器の種類は『片手剣』『大剣』『短剣』『ハンマー』『弓』『槍』『素手』の7種類である。

初期の武器で選んだ武器スキルが手に入るため、武器選びはかなり重要になってくる。


「えっとねぇ、私あんまり動き回るのは無理だから、動かなくていいやつがいいかな。血圧とか心拍数上がると死ぬから」


ゲームの中とはいえ、動き回れば心拍数が少し上がったり、息が荒くなったりするものである。脳が勘違いを起こすのだ。


少なくともこのゲームでは、多少の


【弓かな】

【弓はなんだかんだ動いてる】

【大剣とか槍とかリーチ長いやつ】

【弓はシステムの補正あっても難しいって言ってた】

【魔法があればなぁ】

【槍】

【弓だろ】

【大剣】

【ハンマーは使いにくそうだからやめとけ】

【小さい子がでかい剣持ってるの好きだから大剣】


「とりあえず、試し振りしてみます!槍か大剣かな!」


ゲーム的なアシストがあるとは言え、弓は玄人向けであることには変わりない。

リーチの長い大剣か槍を使って、できるだけ動かずにプレイしたい。


「まずは大剣…っ!よっと…!」


大剣というと定義が曖昧になるが、初期武器の大剣はクレイモアと呼ばれるタイプのものである。

両手で運用する武器で、1m程の長い刀身と一撃の威力が大きいのが特徴だ。


「で、槍は…ってデカいわね!?」


初期武器の槍は2mと、槍としては本来標準か、少し短いくらいであるが、身長100cmの少女には長いようだった。


「ま、まぁ、リーチは長い方がいいしね…」


尚、【槍としてはちょっと短いし、多分これからもっとデカくなるぞ】というコメントが決定打となり、大剣を使うことに決まった。


「よし、これで終わりかな…あ、名前かぁ…」


『名前を入力して下さい』というメッセージが流れ、少女は思案する。

ネットの常識を知らない少女でも、流石に本名がダメなことは知っている。というより、病院の人に教えて貰った。


「んー…まぁ、イワヒバでいいか。ちょっと可愛くないけど」


少女の本名、岩井ひばりの一部を抜き取って適当に決め、ようやく新世界へと旅立つのだった。



挿絵(By みてみん)

イワヒバの花の花言葉は「長寿」らしいです。

きっと長生きしますね!!!

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