0.とある少女とVRMMO
物心ついた時には、わたしの意識は既にバーチャル空間にあった。
生まれつき病弱で、病気や障害で寝たきりのわたしみたいな人は、みんなVR空間の中で生活している。
わたしの場合、興奮したり運動して血圧が上がると血管が切れて最悪死ぬ。
身体は脳と連動しているから、例えVR空間の中であっても激しい運動はできない。
そもそもわたしは生きてるだけでも奇跡なんだとよく言われる。
生まれて直ぐに死ぬと言われたらしいけど、今の医学がすごいのか、わたしは運良く生きることができている。
1%に満たない成功率の手術をもう何度も潜り抜けた。麻酔が効かなかった時の手術の痛みも気合いで耐えた。
こんな調子だから、いつ死んでもおかしくないけど、逆にこれだけ奇跡が起きているんだからいつか外に出られる日がくるかも、なんて考えちゃう。
そんなわたしに、今日お客さんがきた。
生まれた時からVR空間で本を読んだり景色を眺めたりする程度のわたしのところにくる人なんて、両親かお医者さんだけかと思ってたけど、今日はどうやら違うみたい。
なんとかって会社のなんとかって女の人が来て、最新のVR機器とVRゲームのテスターになってほしいって頼まれた。
VRゲームっていうのは……わたしでも知ってるくらいだからきっとみんな知ってるよね。それをプレイした映像を配信サイトにアップしてほしいらしい。
でも、わたしはゲームすらできないほど病弱だから他の人に頼んでって言ったら、「貴方でもできると分かれば、安全性が証明されるので貴方に頼んでいるのです」だって。
少し難しい話もあったから要約すると、どうやらVRゲームは脳に悪影響だって人がいてウザいから、脳に負担の少ないものを開発して、それをわたしが使ってるのを見せれば宣伝になるんだって。お仕事だからお金も貰えるらしい。
まぁ確かに、とわたしは思わず苦笑した。
VR空間のわたしのアバターは、年齢にしては少し小型だけど、可愛らしい容姿をしている。だけど、病院のベッドで寝ているわたしの身体は、お世辞にも生きているとすら思えない。
そんなわたしが使えるなら、確かに凄いことなんだろう。
「もちろんリスクがゼロというわけではありませんので、我々としても強制はできません。ですが……とっても楽しいですよ」
その言葉に、わたしの心は少し揺れ動いた。
冒険には危険が付き物で、でもだからこそ楽しいのだと、出会った時とは打って変わって楽しそうに語った。
わたしは楽しいって感情をよく知らない。でもこんな顔ができるのなら、きっとすごく良いものなんだろう。
「……まぁ、すぐに決めろとは言わない。でも……少しくらい、楽しんだってバチは当たらないと思うわ」
そう言ってその人は行ってしまいました。
安全性は高いとはいえ、ゲームをすれば死ぬ可能性はゼロではない。生きることに専念すべきだって、わたしの冷静な部分が言ってる。
だけど、このまま耐え忍んで死ぬくらいなら、楽しんでみるのもいいのかな……。
0話を追加したのは、「もう少し誰か1人にスポットライトを当てた方が良い」と指摘が入ったので、急遽0話を作りました。
恐らく登場回数もかなり増えると思います。