1:出会い(3)
『は??』
私もオーク達も、彼の突拍子もない発言の意図を理解できず、ぽかんとしていた。
「あの…勇者様?今そういう冗談は…。」
「冗談?俺は至って真面目だが?」
「いやいや!意味わからないですよ!?言動の整合性が取れてないですよ!?」
すると彼は、やれやれといった風に深いため息をついて、こう言った。
「なるほど。確かに、お前達には俺のスキル《童貞特権》の説明をしていなかったな。」
「おんりぃ…ろん…?」
「《童貞特権》。それが俺の唯一持ちうるギフトスキルだ。このスキルは、俺の特定の感情の昂りに応じて、経験値の付与やパラメータの上昇を行う事ができる。」
彼の説明を聞く限り、このスキルはとても有用性のあるものに感じるが、彼の先程の口ぶりはどこか自分のスキルを良くは思っていないようだった。
(何か理由があるのかな…?)
そんな事を考えていると、いきなりオークのリーダーが怒号をあげた。
「ブヒィ!?クソ強いスキルじゃねぇかブヒ!?何故それを最初から使わんブヒ!?舐めてんのかブヒッ!」
「いや、だから最後まで説明を聞けや。」
「テメーのその白々しい態度、イライラするんだブヒ!もう聞く耳持たんブヒッ!!怒りのコントロールが効かんブヒィ!」
「リーダーッ!?」
下っ端2人の静止も聞かず、オークのリーダーは両手にナイフを携え、男に襲いかかった。
「ブヒブヒィ!!制御不能ブヒィィ!!」
しかし男は、ナイフの連撃をものともしない。
「単純な奴め。お前のその愚行を例にして教えてやる。いいか?俺はお前達との交戦直前に俺のスキル《童貞特権》で、自然治癒の値を上昇させた。だからお前達の攻撃を受け、傷がつこうが血が吹き出ようが、受けたダメージを自然治癒が上回る。つまりお前達は俺に微塵もダメージを与えられていないのさ。」
オーク達はそれを聞き、顔を歪める。
「クソッ!やっぱり強スキルじゃねーかブヒ!お前…最初っから腹の中で俺達を嘲笑ってたんだろブヒィィィ!!!」
その発言に、男も顔を歪める。
「いや、フザケンナ!?テメーら俺のスキルの制約を何も知らねぇくせに、よくもまぁ抜け抜けとそんな事言ってくれるよな!俺は最初、このスキルは特定の感情をトリガーに発動すると言ったよな?」
「い、言ってたブヒ。」
男にキレ返され、オーク達は引き気味だ。
「そんでそのトリガーってのが厄介だ。」
男は急に睨みをきかせ、真面目な面持ちになる。
「い、いったい何がトリガーなんでブヒ?!」
「それはだな…。」
ピリついた雰囲気の中、男は自分の股間を指し示した。
「こいつだ。」
私やオーク達が恐る恐るそこに目をやると。
『ッ!』
それを見た全員が息を飲んだ。オークのリーダーが声を震わせ、尋ねる。
「ま、まさか、そいつがトリガーだとでも言うのかブヒィ…!」
「ああ、そうだ。」
男は淡々と返答する。
「信じられんブヒ…。つ、つまりコイツの言うトリガーってのは、この状況下でのーーーーー
ーーーー勃◯ッ…!?」