98話 それは突然に
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あれからキラ様と別れた後、俺は素直に宿屋にストレートで戻って寝る事にした。
色々な事を思ったが、深く考えても仕方ない事と、リラックス出来たのか、強い眠気に襲われたこともあり直ぐにベッドに入り込むと深い眠りに落ちたのだった。
しかし、それは突然に、何の前触れもなしにやって来た。
朝方、突如現れた神々しい程の光に包まれた、忘れもしない見覚えのある者にユウキは浅い眠りから強制的に目覚めさせられたのだ。
ベッドから起き上がったユウキは目を細めて見るが、光が強すぎるせいで人すらも確認出来ずにいた。
地味な嫌がらせかよ。
「くっ……。 なんなんだよ朝っぱらから……それにその光を止めろ。 眩し過ぎて目がおかしくなりそうだ」
「ああっ!! それはすいませんでしたね。 この世界では私の存在が強すぎて上手く調整が出来ないのです」
光を放つのを止めた者を俺は確認すると確信する。
整った西洋人に近い顔立ち、髪は銀髪で腰まであるほど長く、身体から放つ自分の光に反射してキラキラと髪が透き通る程に輝いている。
今回も同じ様に白い衣を纏って、大きな翼を背中にコンパクトにしまいこむようにして、俺の目の前にその女は申し訳なさそうに立っていた。
「あんたはポンコツ女神のマリアだろ。 忘れもしないよ」
「ええ。 その通りです。 宮沢 勇樹。 貴方を迎えに来ました 」
俺は出会って早々に嫌味の一つも言ってみたが、女神マリアは文句を言われるのを察していたのか顔色一つ変える事はなかった。
そして一歩前に出て何かをするのかと思った瞬間だった。
「まず、貴方に謝罪をしたい。 本当に今回はすいませんでした。 多大な迷惑をかけてしまったことに深く謝罪し、お詫びをさせてほしいのです」
そう言って、女神マリアは俺に深々と頭を下げた。
「へ………?」
あのポンコツ女神が俺に謝罪?
前は一言も俺の言葉にまともに耳すら傾けなかった女神が?
あまりの変わりように唖然としてしまう。
「どうしたんだよ。 以前とは全然言葉使いも、態度も対応もまるで違うじゃないか? 心境の変化でもあったのか? 」
「あれは貴方が罪人と思っていたからです。 本来であればこれが私なのです。 勘違いで貴方を間違えてこの世界に転生させてしまいました。 その事に対し申し訳ないと……」
そうポンコツは言って、ゴチャゴチャと理由を話し始めた。
人によって態度も口調も変えるのは女神としてどうなんだよ。
上に立つ者としておかしくないか?
まぁ、でも俺からしたらそんな事はどうだっていい話だった。
今回はもっと重要な事があるからな。
「俺の話を聞いてくれるなら、話たい事がある」
その言葉に反応しマリアは言葉を止め、ユウキの次の言葉を待った。
「それは何でしょう? 可能な限り答えさせて頂きます」
「キラ様から聞いたよ俺は天界に行くと。 だけど俺はこの世界に残りたいんだ」
「 !! 」
女神マリアはビックリした顔で目を見開いた。 マリアからしたらユウキがこの世界に残りたい理由が見当たらなかったからだ。
「何故です? 貴方からしたらこの世界は魔物が溢れ、危険な魔族がいて前世よりも圧倒的に危険なはずです。 申請は済ませてあります。だから残る理由なんて……」
「あんたからしたらそうかもしれない。 でも、俺にはこの世界で守りたい人が出来たんだ」
すると異変に気付いたのか、部屋の中に飛び込むように入ってくる四人と一匹がいた。
「マリア様!!」
「「「 ユウキ!! 」」 」
タイガを含め五人は俺を守るように囲んでマリアと対峙したのだった。
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