95話 キラの役目
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たまにしか元の等身大にならないキラ様は、妙に大人びていて、魅力的で可愛いいというより美しく見えた。
多少温泉効果は入っているかもしれないが、キラ様のスペックはこの世界の中でもかなり高い方だと思う。
ただ、見惚れている訳にはいかない。
そんな事を思っている場合じゃないんだ。
普段はキラ様はこんな事絶対しないキャラなんだ。
その事を俺が一番知っている。
俺は違和感を覚えたキラ様に本音をぶつける事にした。
「なぁ、キラ様。 なんかあっただろ?」
「むっ」
気付きはしないだろうと思っていたのか、一瞬肩が反応した後にキラ様は言葉を返した。
「まぁ。 ……そんなとこじゃなぁ」
そして少し間を置いた後、遠くを見るような目でゆっくりと俺に話そうとした。
俺の中でどんどん不安が膨れ上がっていく。
こんな顔をしたキラ様は一度たりともなかった。
何かの終わりを告げるかのようなそんな雰囲気すら漂ってくる。
その言葉を選んで話すかのようなキラ様の口ぶりが俺の鼓動を急速に速くさせていった。
「オヌシと一緒に旅をして、魔物や魔族を討伐したりしていくうちにワシは確信したよ。 オヌシが罪人ではないとな」
何のことだ?
「それがどうしたんだよ。 そんなこと始めに言ったじゃないか。 それに今更罪人じゃないって分かったところで何も変わらないだろ」
俺はこの世界で幸せに暮らすために、その為に貢献してポイントを稼いでいる。
それがたまたま選ばれし者で、強力な能力があったから、後からやらなきゃいけない事や約束が増えただけでそれがどうしたって言うんだよ。
「ワシは最近緊急でマリア様にオヌシが罪人ではないと正式に連絡を入れた。 そして遂に返事が返って来た。 だから近いうちにオヌシの元へマリア様が現れる事になるじゃろう」
なんだよ。
そんなことだったのかよ。
単に俺の不安は思い違いだったのかと、そう思った。
「よかったじゃん。 俺はこれで晴れてこの世界で幸せに暮らせるようになるんだから」
多分、貢献ポイントもそこそこあったと思うけど、免除されるならそれはそれで有難い話だからな。
「何を言っとる。 オヌシは本来逝くべき所にいくはずが間違えてこの世界に来たんじゃ。 だったら本来の場所に収まるのが話の流れじゃろうが」
「え……? 本来の場所?」
唐突な話過ぎて俺の頭が付いていかない。
どういう事だ?
それはもう一度俺が転生するってことなのか?
「それにマリア様からは一言こう書いておった。 連れて行くと……」
「 !! 」
「待て! じゃが、まだ早まらんでほしい。
そう書いてはあったが選択肢は2つあるはずじゃ。 1つ目は手紙の通り天界に転生すること。 2つ目はそのままこの世界に残ること。 じゃがそれはマリア様が決める事じゃ。
今の段階では分からんから先にオヌシには伝えておこうと思うてな。 急に来て、もしマリア様に決めろと言われても決めれんじゃろうし、迷っておったら強制的に天界に連れて行かれるかもしれんでの。 その時になったら答えれるようにだけはしておくのじゃな」
俺はキラ様に始めに会った時に説明して貰った事を思い出していた。
「キラ様始めに言ったじゃないか。 俺はこの世界で強く結びついているから、この世界で強くなれって。 あれはなんだったんだよ?」
「あれはオヌシが良からぬ事を考えてもムダだと思わせる為に言った事じゃ。 それに本来ならこの世界でしか本当に生きれんのじゃ。 じゃがユウキ、オヌシは例外じゃ。 天界に行くはずの人間じゃったからな」
俺の言葉が止まる。
確かにそうだ。
ここは罪人が罪を改める為に来る世界だった。
そしていずれ起こる大規模な厄災に備え、貢献して強くなれと。
確かにそうポンコツ女神に教えられた。
「だとしたら……訂正してくれって言ったら俺はどうなるんだ?」
「オヌシの想像通り、マリア様と一緒に天界に転生するじゃろう」
キラ様は俺の方に振り向き、真剣な顔をしてこう言った。
強気なキラ様。
ワガママなキラ様。
短気なキラ様。
どれも俺の知っている顔じゃなく、初めて見せた顔だった。
「すまなかったユウキ。 ワシがもっと早くオヌシが罪人ではないと気付いておればこうはならなかった」
「ちょっと意味わからないよ。 なんでキラ様が謝るんだよ。 いつもの強気なキラ様はどこいったんだよ? ほんとらしくないよ」
俺の伝えた言葉にキラ様は顔色一つ変えることなく謝罪を続けた。
「ワシが全ての判断を遅らせたせいじゃ。 シャルルも、アイリも、あの時にはもうワシは気付いておったんじゃ。 じゃがマリア様に報告をワシは出来んかった。 オヌシとの旅が楽しくて報告すれば旅が終わってしまうと、そう思ったら手が止まってしまったのじゃ。
それがオヌシが天界に行くとしたらアヤツらとの別れを辛くさせてしまう事になってしまった。
そして、もし仮にこの世界に残ったとしても大厄災が世界を襲い、15年前の魔族侵略戦争のように辛い現実がオヌシを待っている事になる。
どちらを選んだとしてもハッピーエンドにはならん事になってしまいそうなんじゃ。
じゃから……すまんかった」
そう言って深々と俺にキラ様は頭を下げた。
何だよ。
そんなことかよ。
だったらやることは一つしかないじゃないかよ。
「キラ様、謝る必要なんてないよ。 俺はこの世界に来て後悔もしていないし、むしろ感謝してるくらいさ」
「ユウキ……」
「ポンコツマリアが来たとしても俺の言うことは一つだけだ。俺はこの世界に残ってハーレムエンドを迎えてやるってな!!」
その言葉にキラ様は呆れた顔をし、少し笑ったのだった。
「かかっ。 まったく、オヌシはとんでもなくアホじゃな…。 それにマリア様じゃろうが。
だったら、ワシも思い残すことはなさそうじゃな」
「そうだよ。そんなキラ様が謝ることなんてないよ。全部マリアが悪いんだから。 だから思い残すことも……」
思い……残す?
「え……?」
俺の思考が止まる。
あまりにも自然に言われたその台詞に。
「なんでそうなるんだよ? おかしいだろ」
「オヌシは当初罪人としてこの世界に来た。 だから罪人を扱うワシがオヌシに付いたんじゃ。 だが、結果は違った。 オヌシは世界を救える者、選定者じゃった。
じゃからこの世界に残る事になれば、ワシではなく本来の案内人が付く事になるじゃろう。 そうなればワシとの旅は今回で最後になるという訳じゃ」
「何……だって……」
俺の不安は、正にこの事だったのだ。
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