87話 修道院のフローラン
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あれから一週間が過ぎ、俺達は東の国、ベルバド王国に着いていた。
そこは王国といってもライオネスの拠点、ゴーストタウンからそれほど離れていない事もあり、周辺国の中では被害を間近に受けた国でもあった。
歩いてみるとお世辞にも賑わっているとは言えない街並だった。
今まで見てきたロザリア王国や都市ザナルガルドに比べると、財政もよくないようにも思えた。
商人もおらず、俺たちのような旅人も見当たらない。
街を子供達を連れて一緒に歩いていると、中央通りから少し離れた場所に修道院があり、中には何人かの子供たちがいた。
俺がここに来た目的、それは救助した子供達をこういった施設に保護してもらうことだった。
辛いことだが、俺はこの子達の親ではない。
守ってやりたい、色々してあげたいことが沢山ある。
けど、俺も他にやらないといけないことがある。
だからこの子達を連れて旅を続ける訳にはいかない。
俺は子供達とメンバーを少し離れた場所に残し、その足で修道院を訪ねた。
「すいません。 ここの修道院の責任者さんはいますか?」
すると奥から一人の六十代と思われるくらいの物腰柔らかそうなお婆さんがゆっくりと歩いて出てきてくれた。
「はい。 私がここの修道院の責任者のフローランと申しますが、旅の御方が何の御用でしょうか?」
俺は単刀直入に用件を聞いてみることにする。
正直に言って無理なら他を当たるしかないと思ったからだ。
「フローランさんに聞きたいことがあります。 ここにいる子達は保護した子ですか?」
ユウキの質問にフローランさんは一度子供達を見た後、ユウキの顔を見直し、訳ありそうな顔で答えてくれた。
「ええ。 仰有る通りです。 この子達は全員親をなくした子達です。 まだ他にも何人かおりますが」
五、六人遊んでいる子達以外にもまだ見えないだけで何人かはいるみたいだな。
とても元気そうに遊んでいる子供の姿が見える。
「なら、フローランさん以外に従業員さんは何人います?」
少し考えた後フローランさんはゆっくりと答えた。
「後3人ほどですが……」
質問の意図が分からず、フローランは首を傾げようとするが、少し離れた場所に異様に多く集まっている子供達を見て顔色が変わる。
「もしかして、後ろにいる子供達は……」
フローランさんは後ろの子供達に気付き固まっている。
そりゃ、そうなるよな。
あれだけ子供達がいたら。
「ええ。 そうです。 全員身寄りのない子供達と、言いにくい事ですが辱しめを受け、心にキズを負った女性達です」
そこには90人近く大人の女性を含め、子供達がいたからだ。
「申し訳ありません……。 ここには収容するだけの施設も、人間も足りておりません……。 ですので……」
「ここ以外で、これだけの人数を収容できる施設は他にありますか?」
「そ……それは……この場所以外でも似たような施設は幾つかありますが、どこも同じようなもので……」
「なら、人数を分けて収容は出来ますか?」
「他の施設の状況は分かりかねますので……直ぐの返答は……」
そう困った顔をし、濁した言葉を続けてフローランさんはやんわりと断ろうとしていた。
普通断るだろう。
急に突然来られて、突然大勢の子供達を引き渡すと言われても俺だって断りたくなる。
それに俺はフローランさんを困らせたかった訳じゃない。
話してみて分かったことがある。
この人は間違いなくいい人だ。
前世で、施設で育ってきた俺には確信にも似た感覚がある。
さっきからフローランさんと二人で話す俺達にも目もくれず遊んでいる子供達をみて分かったこと。
その純粋に遊ぶ子供達の姿を見て、この施設はしっかりと愛情を注がれて育ってきていると。
「ただとは言いません。 俺からも援助は出します。 施設の改装に必要な費用だったり、足りない物の買い足す費用も、お金の事ならなんとかしますので」
「と、言われましてもこれだけの人数を収容し何年も維持するためには施設も人間も、食費も何もかも足りていない状況でして……」
確かにこの子達が全員巣だって行くには10年以上かかるだろう。
そうなれば俺の稼いできたお金も流石にすぐ底を尽きることになるな……。
少し考えた後に俺はフローランさんに提案してみることにした。
「なら、全て事足りるようになればいいのですね」
困り果てたフローランさんはユウキの突飛な言動に戸惑いを隠せなかった。
「それは、どうすると……」
「ええ。 王様と直接交渉して来ます」
俺はニコッと微笑みフローランさんに返事を返した。
一瞬の沈黙が訪れた後、我に返ったフローランさんが顎が外れそな程驚いていた。
「な、な、な、なんですってぇぇ!!」
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