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81話 卑劣な罠

遊びに来て頂きありがとうございます!


少しの間、短編で更新していこうと思います。


お付き合い下さると嬉しいです!

 二人の前には信じがたい光景が広がった。

 目の前には武器を持たされた10歳児ほどの子供や、捕まって慰みものにされたであろう女性が戦闘に駆り出されていたのだ。


「こんな子達まで……」


 ユウキは怒りに歯を食い縛りながら感情を必死に押さえ込んだ。

 そして子供達には恐怖心を抱かせないようにゆっくりと話した。


「武器を捨てるんだ。 僕達は君達を助けに来たんだ」


 その言葉を聞いて一人の小さい女の子が口を開いた。


「なら、あなたが先ず武器を捨ててちょうだい!」


「!!」


「コヤツら……」


 予想外の展開にユウキも考えてしまった。


 くっ。


 どうすればいい?


 確実に罠だ。


 何処かで糸を引いている奴がいる。


 だが、今武器を置く訳にはいかない。


 置いたら助けるはずの命も助けられなくなる。 それこそ敵の思うツボだ。


 それにもう一つは俺達が子供に手にかけれるかどうかの反応を伺っている。


 建物に隠れて見えないが大勢いる気配はする。


 子供達には汚い事をやらせて、自分達は安全な所から高見の見物かよ。

 本当に卑怯者どもが……


 二人に暗雲立ち込めた状況を察したかのように雨が降り始めた。



「キラ様……」


「うむ」


 俺は振り返り猛ダッシュを決める事にする。


「今は逃げようっ!!!」

「了解じゃ!!」


 ダッシュでその場を逃げようとすると無数の殺意に気付く。

 いち速くユウキは確認すると数本の矢が子供に向けて放たれていた。


「なっ!!」


 咄嗟に持っていたカードを矢に向けてユウキは投げつけた。


「くっ!」


 スパッと音を立てて数本の矢に見事に命中したカードは勢い止まらないまま、建物に突き刺さった。


「くそ。 逃げ出すなら子供の命はないぞって事かよ」


「どうやらそうみたいじゃな……」


 ユウキは拳を握りしめ、怒りに震えた。


 これが殺戮集団の狂戦士のやり方。


 人の甘さや、弱さにとことん浸け込み、弱いものを利用し、人を人とも思っていない。 種族の違う魔族より下手したらもっと質が悪い。


 本当にもう人間の形をしているだけで、人間じゃないんだな。


「だったら正面から戦ってやるよ!!」


「オヌシ、わかっておるのか! 前には子供達がおるんじゃぞ!!」


「分かってるさ。 子供達には手は出さない。 怪我をさせずに狂戦士らを攻略する!」


「んなのどうやってやるんじゃ!」


「聞こえるか!! 隠れてコソコソしてる卑怯者供!! お前たちの罠に乗ってやるよ!!」


 ユウキは大声でそう叫んだ後、覚悟を決めたような顔をした。


 ジリジリと迫ってくる子供達にユウキは武器を持たないまま近づいていく。


「皆やめるんだ。 子供はこんな危ない刃物は持っちゃいけない。 今すぐ捨てて欲しい。 俺は君達を助けに来ただけなんだ」


 丸腰のまま子供達に近づき、ユウキは説得するが子供達の勢いは止まらない。


「そんなことは嘘だ! お前達は私達を殺しに来たんだ!!」


「違う!! 俺達は君達を本当に助けに来ただけなんだ!!」


「だったら何で腰にぶら下げた剣を渡せないの! 殺す気がないならいらないでしょう!」


 ブンブンと身体に似合わない剣を扱う女の子の攻撃を交わしながらユウキは腰の剣に手をかけた。


「ほら見ろ! やっぱり手をかける……えっ! 」


「これで……少しは信用して貰えるかい?」


 ユウキは腰に下げた短剣を小さな彼女の足元に転がした。


「ユウキ、オヌシ……」


「子供達には刃を向ける訳にはいかないだろ……」


 子供達が戦う理由は分からない。


 だが、見たところ殺意に満ちている訳でも洗脳されている訳でもない。


 明らかに嫌々握っているのだろう。


 戦い慣れてない感じからすると今回が初めてなのかも知れない。


 だとしたら何かの弱みを握られていてもおかしくないし、アイツらなら平気でやってくる手法なのだろう。


 いくらでも卑劣なやり口で人を落とし入れてくる奴等なんだから。


 そう思っている時だった。


 不意を突かれたのか、ぬかるみに足をとられた瞬間、ユウキの脚に痛みが走った。


「ぐっ……」


 見ると一人の小さい男の子のナイフがユウキの右太股を刺していたのだ。


「ダメだよ……ナイフはこんな使い方をする為の物じゃない。 これは食べ物を切る為に使ったりするものだよ」


 震えながらナイフを離した子供にユウキは優しく話しかけた。


「い、痛くないの……?」


「これくらい痛くないさ……。 鍛え方が違うからね。 だから怖がらないでほしい」


 屈んで小さい男の子の目線に合わせてゆっくりとした口調でユウキは話した。 すると思いが通じたかのように周りの子供たちの動きが鈍くなる。


「本当に……助けに、お兄ちゃん達は来たの?」


「そうだよ。 だから信じて欲しいんだ。 必ず助けるからこんな危ない武器なんて持たないで欲しいんだ」


「うそ……」


 武器を持っていた子供達はユウキの言葉にうたれたのか、武器を下ろしかけた瞬間だった。


 一本の矢が雨の音に消されたのかユウキの死角から飛んできていたのだ。



 ぐさぁ……!



鈍い音とともに身体にめり込む嫌な感触が響き渡った。


「え……?」



 見ると目の前にいた男の子の背中を矢が貫き、ユウキの胸にまで深く刺さっていたのだ。

  小さい男の子は口から吐血し、前のめりに倒れ込んだ。 ユウキは咄嗟に支えたが、ユウキも同じ様に口から吐血し、胸に刺さった弓からは血が滴り落ちていた。


「ぐっ……こはぁ……」


「ユ……ユウキぃ!!!」


 その一本の矢は、ユウキに致命傷を与える程のダメージになったのだ。


 それを放ったのはA級指定にされているハイエナ兄弟のブチだった。


「ヒヒヒッ。 一匹仕留めたぞぉ」


 60メートル程離れた建物の影からブチは気持ち悪い笑いをあげ、神の使いキラも手にかけるつもりでいた。



 だが、パチンッと小さな指の音がした瞬間だった。


「ヒッ?」


 ブチは警戒を誰よりもずっとしていた。 さっきと何も変わっていないはずなのに、目の前には弓で仕留めたはずのユウキが目の前に立っていたのだった。


「いい夢は見れたか?」


「は?」


ブチはユウキに幻術ミラージュをかけられていたのだ。


最後まで読んで頂きありがとうございます!


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凄い励みになりますので!

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