76話 誓い
遊びに来て頂きありがとうございます。
少しの間、短編で更新していこうと考えています。
お付き合いくださると嬉しいです。
「それでもユウキには戦闘に参加するべきだと私は思うわ。 この戦いで甘さを捨てた方がいいわ」
アイリは真剣な眼差しで言った。ユウキの強さはアイリも間近で散々見てきたからだ。甘ささえなくなれば勇者達に匹敵するほどの強さになるのではないかと。
「私もアイリちゃんの意見に賛成ね。 今のうちにユウキも慣れておいた方がいい。 これからこんなような事は散々起こるだろうし。 対人戦はハンターなら避けて通れない」
「シャルル……アイリちゃん……」
二人が意見するなか、ニーアだけは全く違った。
本当にそうなのでしょうか?
殺しあう事がユウキ様にも必要だと?
殺し合うことでユウキ様が強くなると?
殺し合うことがユウキ様にプラスになると?
この戦いは私達ハンターにとっては普通かもしれない。
でも、きっとユウキ様は、誰もが笑って、笑顔で明日を迎えられるような、そんな日常を見据えている。
殺戮集団を手にかけることすら躊躇するようなお人好しなんです。
ニーアは両拳を握りしめ、勇気を絞り出した。
だが、握った拳は震えていた。
空気を変えるのは好きじゃない。
それでも言わないといけないことがあった。
伝えたい想いがあった。
その結果、亀裂が生じたとしても、流されるまま返事を反すことが出来なかった。
「違う……。
そうじゃないんです。
死ぬほど甘いのが、底無しに甘いのがユウキ様の1番の強さじゃないですか。
その甘さに……その優しさに……私達は救われたうちの一人だったんじゃないのですかっ!?」
ユウキ様は苦しんでいる。 私達に気を使って見せないようにしているだけで、今も何かにずっと苦しんでいる……。
「私はあの時、何もかも失ってしまいそうな時に、唯一優しく手を差し伸べてくれたのはユウキ様ただ一人でした。
あの時のユウキ様は有名でもなければケタ違い強かった訳でもない。
そんな人が、ただ一人私の為に一生懸命になって、私の為だけに時間を掛けて手伝ってくれて、生きる意味を失いかけていた私に光をくれたのは、その甘いユウキ様、ただ一人だけでした!
何処までも広がる青く透き通るような青空のような、澄んだ心の持ち主がユウキ様なんです。
だから私は………ユウキ様の心を曇らせたくない……。
不必要に人を殺め、ユウキ様を悲しみに染めたくない。
私は、ユウキ様の笑顔を守りたい。
私達を救ってくれた英雄を。
今度は私達が救いたい。
ユウキ様を思う気持ちが皆さんと同じなら……
そのためなら………私は二人に嫌われてでも今回の作戦を二人にお願いしたいんです……」
傲慢かもしれない。
嫌われるかもしれない。
でも、それでも譲れない想い。
ユウキ様の光の力はこんな時の為に使うものじゃないって。
私はそう考えているんです。
「ニーア………」
アイリとシャルルは普段温厚なニーアがこんなにも感情を表に出して訴えかけるのは初めてのことだった。
「ミジンコのわりに頑張って言っておるじゃないか。 オヌシの言うことはあながち間違いでもないかもしれんぞ」
異世界から神の間違いでこの世界に来たイレギュラーな存在のユウキ。
この世界の常識が通用しないからこそ、それがアヤツの強みかもしれないとキラも感じる部分があったからだ。
「確かにそうね………。 私達も同じだったわ。 死を覚悟した絶望の中から手を差し伸べてくれたのはあのユウキだった」
「ええ……。そうだったわ」
シャルルは道化師として優しいユウキの事を思い出していた。
アイリも同様に底無しのユウキの優しさを沢山注いで貰っていたことを思い出していた。
「私達が、今こうして綺麗な夜空を見上げられるのは全部アイツのお陰なのよね……」
アイリはそう呟き夜空を見上げた。
馬車の中から見上げた夜空は何処までも美しく、この世界が邪気で満ち溢れてきているとは想像つかなくなるほど果てしなく星が夜空に煌々と輝いていた。
「綺麗ね……」
「ええ。 こんな日が迎えられるなんてあの時は想像もつかなかったわね」
「私達は嫁として失格です……。
ユウキ様にあんな顔をさせるなんて。
ユウキ様が一番苦しんでる時に嫁の私達がユウキ様を笑顔させてあげられないなんて」
「そうね、そうだったわ。 私達はアイツの嫁なのよ。 こんな時に手を差し伸べてあげられなくてどーするのよ」
アイリはニーアに心打たれたのか立ちあがり力強く言った。
私は知ってます。
ユウキ様がやったことはどれも簡単なことじゃない。
決して自分の為じゃない。 誰かの為に必死になれること。
その優しさは
人の気持ちを変える程に、心が温かくなるんです。
「ユウキ様は私達の光なんです。
勇者マルス様のように強くもなければ、賢者シーダ様のように賢くもない。いつも楽観的で戦いのことなんてこれっぽっちも考えない方なんです。
でも……それでいいんです。
その道が険しいのなら私はユウキ様の剣になります。
ユウキ様がいつまでも輝いていられるように、私は……私の全てを投げうってでも全力で剣を振います。
それが私の、今の戦う理由です。
だから二人には力を貸してほしいんです」
頭を下げてニーアはシャルルとアイリに頼み込んだ。
だが、意外な反応が返ってきた。
「はぁ。 当然でしょ。 仲間なんだから」
「それは私も同じくね」
二人はニーアの前に手を差し伸べ、それに気づいたニーアは固い握手を交わした。
「だったら、私達はユウキの駒となり剣となるわよ。 アイツの足りないの部分は私達が補えばいい」
「皆さん……。 ありがとうございます……」
ニーアは想いが伝わった事に感謝し、涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
「今度は、私達がユウキ様を助ける番です」
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