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75話 不安要素

遊びに来てくれてありがとうございます。


少しの間、短編で更新していこうと考えています。


お付き合いくださると嬉しいです。

 キラ様と約束を交わした後、ニーアは考えていたことを皆に言った。


「私は今回、ユウキ様をなるべく戦闘に立たせたくないと考えています」


 ユウキ様がどういった考えがあって殲滅すると言ったかは分からない。

 真意を訊いて確かめる事も出来たかも知れないけど、あの時のユウキ様は普段の様子からは想像も出来ないほど真剣な顔付きだった。 いえ……あの様子は只事ではなかった。

 でも何度か様子を伺っているうちに私は訊くチャンスを逃してしまった。


 仲のいい恋人でも、長年連れ添った夫婦でも訊きづらいケースはある。それが正にあのときだった。

 たまたまあのとき全員が訊かなかったのではなく訊けなかったのだ。


「いいけど、ユウキの戦力なしで戦うのはかなりキツいところがあるわよ。 私のイフリートを喚んで戦闘に参加させたとしても長時間は持たない。 多分1回につき精々10分が限界」


 アイリはユウキの替わりにイフリートを召喚させて戦わさせると提案するがイフリートには時間制限がある。

 前回千体の魔物を討伐した時とは違い、同じ千体でも野盗とでは戦いが全く異なってくる。

 しかも今回は殺戮集団の本拠地ゴーストタウンになる。

 当然向こうは住み慣れた場所での戦闘。

 相手は地の利を活かし戦闘を有利に進めようとしてくるだろう。

  それに魔物のように単純に相手は一直線に向かって来ることはこない。

 相手はA級も交じっている。 戦闘に長けた奴は用心深いのが予想できる。

 時間を掛ければこちらの人数も把握され、長期戦にさせられる。そうなればこちらが不利になる。

 その事は全員が分かっていたことだった。


「ニーア。 その作戦はいくらなんでも無謀よ。いくら私達が強くなったからといっても敵地でユウキなしで戦ったら、無傷では済まない、下手したら誰かが死んじゃうわ」


 シャルルはリスクある作戦に警告する。もっと違う作戦がないかと。


「そうなんですが、これは私の勝手な憶測なんですがユウキ様は野盗と戦った事がないと思うんです」


「はあ? 嘘でしょ? ハンターをやってなくても1度や2度位は旅の道中に少なくとも戦闘経験するでしょ。 ハンターなんてやってればそれこそしょっちゅうじゃない」


 アイリはニーアの言ったことが信じられず聞き返すが、それを裏付けるようにキラが話した。


「本当じゃよ。 アヤツは野盗と戦った事がないぞい」


「うそぉ。そんな人本当にこの世界にいたんだ」


 シャルルもキラの台詞に驚いて反応した。


 この世界には魔物が多く存在しているが、野盗も同じように多く存在していたからだ。

 15年前の魔王による世界侵略戦争後、魔王は封印され世界に平和が訪れたかと思われた。 だが実際は違った。

 世の中に希望が溢れ反った訳ではなかった。

 壊された家、なくなった家族、失った職、魔王が世界に与えたダメージは計り知れないものがあった。

 必死に頑張り、復興を目指す者達がいるなかで、希望を失い闇に染まっていく者も多くいたのだ。


「アヤツは対人戦など殆ど経験がない。 人間じゃないが前回の魔族討伐が初めての経験じゃっただろう」


「魔族と人間とじゃ全然違うでしょ。それにしても意外ね。 あの強さは百戦錬磨かと思っていたけど、野盗も倒した事もないなんて」


 アイリは少し呆れながらもユウキらしいとも思いながら答えた。


「野盗と戦う時は確実に仕留めるつもりで戦わないと、こっちが殺られるからね。 情に熱そうなユウキには確かに一番力が発揮出来ない戦いかもね」


「シャルルの言う通りです。 優しいユウキ様が一番苦手とする戦い………。 それが今回の殺戮集団の殲滅戦です」


 ニーアはユウキの事が心配だった。

 今回の戦いで多くの野盗を殺す事になる。 心優しいユウキが、自らの手で人を殺めるのに心が無事なはずがないと。

 そして、それをすることで何かが変わってしまうのではないかとニーアは不安を過らせていた。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


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レビューもお待ちしてますので是非宜しくお願いします!

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