70話 未来のない子供
遊びに来てくれてありがとうございます。
少しの間、短編で更新していこうと考えています。
お付き合いくださると嬉しいです。
俺達は次の目的地を死神の森に決めて馬車を走らせていたが、その途中にあるゴーストタウンと呼ばれる元モルコ王国を目指した。それはキラ様から話を聞いていくうちに寄らなければならない理由が出来たからだ。
モルコ王国はライオネスに滅ぼされて5年位は経っていて廃墟とかした建物は見る影もないくらいひどい有様になっていると聞いた。
そして、その廃墟の中では奴隷のように扱われている子供達が大勢いるとのことだった。
俺はその話を聞いたとき胸が張り裂けそうなほど心が痛くなるのを感じていた。
前世ではあり得ない話が、この世界では普通に起きている。
「そんな小さな子達を奴隷にしてどうするんだよ……」
国も手を出せずに無法地帯と化した場所で、人権を無視した行為が平気で行われている。
しかも、それが年端もいかない子供なんて。
あんな殺戮集団に捕まったら、想像もつかないような夢も希望もない日々をただ繰り返す事しか出来ない事は容易に想像がついた。
隣にいたキラ様は、ユウキに気を使ってか、目を反らしてこの世界の辛い現実を突き付けた。
「アヤツラは拐って来た子供を、小さいうちから奴隷として教育していく。 逆らえないように暴力と恐怖をすり込み、逃げたり反逆を考えることを止めさせる。 そしてついて来れずに死んだ子供は見せしめとして吊し上げられ飾られる。 小さい子ども達には逃げる勇気も逆らう勇気も全て奪われてしまうんじゃ」
「びどい……。 本当に人間のする事とは思えせんね……」
キラ様の話に、ニーアは悲痛な言葉を漏らし、それと共に全員が言葉を無くしていた。
「ぐっ……ひどすぎるだろ……」
「ユウキ……顔色悪いけど大丈夫?」
アイリちゃんが心配して声をかけてきてくれたが、俺には余裕を見せて返事が出来ないほど鼓動が速くなっていた。
「あ……ああ。 ………大丈……夫」
あまりに辛すぎる内容に、手で抑えた胸に大きな風穴が空くような痛みが走る。それと同時に記憶が甦るかのようにそれが何なのかを思い出した。 俺はこの痛みを知っている。 これは俺が前世で経験したことがある。
俺もだった……。
俺も幼少期の時に全てを無くした。
両親に捨てられ、小さいながらに全てを失った。
愛が一番欲しかった時期に両親は俺の前から突如姿を消し、そして何もかもを失い、全てに絶望し、俺は辛い現実から目を背けるように心を閉ざした。
『 絶望 』
その時と、この痛みは同じだ……。
随分と忘れていたイヤな記憶が俺の中に甦っていた。
ゴーストタウンにいる子供達は未だ絶望の中にいる。
じっとりとかいた冷たい汗が俺にまとわりつくように張り付き、気持ちが悪くなり吐きそうになる。
身寄りのない俺は児童養護施設に入れられ、優しい一之瀬先生に育てられた。でも、それが救いになった。
俺にとって一之瀬先生は本当の母親以上に愛を与えてくれた先生だった。それが俺の中の根本にあり、少しずつ前に進む勇気をくれた。 そして希望をくれた。 いつしか夢を持つようになり、それに向かう挫けない心をくれた。 そして愛というものが他人からでもちゃんと与えて貰えるんだと教えてくれた先生だった。
俺は一之瀬先生に救われた。
だが………この世界では違う。
俺は頑張ればどうにかなると思って生きてきた。
全てが報われる訳じゃない。だけど頑張って何かを努力すれば、たとえ僅かでも道は開いていけると思っていた。
そうやって自分で道を切り開いてきたつもりだった。
だけど、捕まった子供達は違う。
頑張っても何も報われたりしない。
たとえ、どれだけ死ぬ程頑張っても、その頑張りは結して報われたりすることはない。
全ての行為がムダ。 努力をしたところで全てムダになるのだ。
頑張ってやってきた行為は、あいつらが次に拐ってくる可哀想な子供達を増やす為の手助けにしかならないからだ。
負のスパイラルに入れられた子供達は生きるために選択肢なんてものは一つも用意されてはいないのだ。
絶望と地獄が今でも容赦なく子供達に牙を向けている。
俺の中に例えようのない怒りが支配していく。
「俺に何が出来るなんて分からない。 ただライオネスが死んだ今でも苦しんでいる子供達がいるのを見過ごしてはおけない」
俺が持っている常識なんてこの世界では一切通用しない。
ほんとに痛感させられるよ。 前世はどれ程幸せな世界だったかって事に。
理不尽な世界から唯一救いだす方法。
だったら、もうやることは一つしかない。
目には目を、歯には歯を。
あいつらに言葉は通じない。 何故なら人でもなければ動物以下の下衆野郎だからだ。
気づくと、俺は知らないうちに震えるほど拳を握り締めていた。 ゆっくりと開くとその手のひらにはうっすらと血が滲んでいる。
気分が悪い………だがやらなくちゃいけない。
俺はそう決断し、その事を皆に伝える事にした。
「ゴーストタウンに行って、殺戮集団の一味を殲滅する」
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