62話 選定者
読んで頂きありがとうございます。
仕事で忙しく長編が書けない為しばらく短編で更新していこうと考えています。
すいませんがお付き合い下さい。宜しくお願いします。
「「「 なっ!! 」」」
一同の顔色が変わる。 それは全員がそこまで寿命が取られるとは思っていなかったからだ。
そんな無茶苦茶な要求を誰が飲むんだよ。
俺は暑さもあってか、心の底から込み上げてきた怒りをイフリートにぶつけた。
「随分無茶苦茶な要求をしてくれるなイフリート。 俺達人間は生きる寿命がただでさえ短い事を知っていてそんな要求をしてるんだよな?」
「ユウキ……」
この要求ばかりはアイリちゃも即答で返事が出来なかった。
イフリートは顔色一つ変えず怒っていたユウキの言葉を聞いていた。 ユウキの感情論では解決出来ない事を知っているからだ。
「無茶な要求ではない……。 それが選定者じゃない者が扱う唯一の方法なのだ」
「我等、精霊は自然界のエネルギーで出来ている。 それくらいは知っているだろう? 力を持たぬ者に直接我等の力を使うには契約を交わせば不可能なのだ」
くそっ。 過去にも賢者しか扱ってこなかったのも、そう言った理由があったからかよ。 今回確信に近いものがあったけど宛が外れたな。
「自然エネルギーの生命体の存在くらいは知ってるさ。 ただ焔の欠片を貰っても選定者しか扱えないってのは初めて聞いたけどな」
魔法使いはいても聖霊使いはがいないのは、この世界で聖気を扱えないのが原因なんだろう。
だったら俺は魔法は使えないが聖なる気は扱える。
俺はイフリートに答えた。
「だったら………俺がその選定者だよ」
「なに………?」
イフリートも一瞬ユウキの言葉の意味が分からなかった。
しかし次の瞬間、イフリートの想像を遥かに越えることになったのだ。
俺は気を解放していく。アイリちゃんを助けてやりたいという想いを気に乗せて。
こんなとこでつまずく訳にはいかない。
アイリちゃんには大魔法使いになるって夢があるんだ。
そしてユウキの全身に神々しいくらいに聖気が宿っていく。
それを見てイフリートは驚いた。
「おお…………これは深き闇をも討ち滅ぼす光……。 正に貴方は神に選ばれた存在……。 これほどまでに美しく強い光を放った者は過去に一度も存在しないかったが……」
「じゃろうな。 ワチとてこれほど強い光を放つ者には出会ったことがない」
肩に乗っていたキラ様も同じように呟いた。
そうなのか?
俺の扱う聖気は勇者や賢者より強いのか? いまいちピンとこないけどな。
偉そうにしていたイフリートは俺を見た途端態度を変え、姿を3メートル程に小さくして俺の前にひざますくように頭を下げた。
「先程は失礼した……。 貴方様は紛れもなく選定者。 そしてこの世界で初めてのエレメンタルマスターの資格を持つ者……」
「えっ!?」
何それ?聖霊使いになれるってこと?
「ちょっと、それってどういう意味?」
アイリも訳が分からず聞き返してくる。
「これほどまでに聖なる気を宿す者はかつていなかった。 であれば聖気を使い我を使役して使う事ができるということだ」
「つまり召喚出来るってこと?」
シャルルちゃんが横からイフリートに答えた。
「そうだ…………」
まじかよ。 おれが望んでいない形でイフリートが召喚出来るって話になったな。 本当はアイリちゃんの魔法を強化したいんだけど。
「契約を交わせば使えるのか? だけど俺の魔力は少ないから何回も召喚したりできないぞ」
「いいのでございます。 貴方様は世界を正す存在。 重要なのは魔力より聖気が強ければ少ない魔力でも我を呼び出せます」
「寿命はどうなるんだ?」
気になる事を聞いてみる。俺も寿命が縮まって早く死ぬのはごめんだからな。
「関係ございません」
替わりに聖気を使うからなのか。とりあえずは安心だな。
「だったら……」
俺は少し考えた。 強力なイフリートを使役出来るのは間違いなく大きなメリットだ。連発は出来ないが戦闘で役に立つだろう。
だが本来はアイリちゃんの魔法強化が俺達にとっては目的だったからな。焔の欠片使えないとなるとやることは限られてくる。
「アイリちゃん…… 俺は………」
「いいんじゃない? 使役すれば?」
少し羨ましそうにアイリちゃんは俺を見て答えたが、俺はそんな風に言って欲しくてここへ来たんじゃない。
アイリちゃんを最強の黒魔道士に近づける為にここに来たからだ。
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