60話 煉獄谷の精霊王
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いきなり仕事が忙しくなって更新遅くなってすいません。
俺達は以前コカトリスを討伐した森も、ベヒモスとその他1000匹の魔物と戦った森も抜け、ひたすら北の煉獄谷に向かっていた。
ナチュカの街を出る時に、前の戦いで馬車を壊されたので、馬車をもう一度買うか、それともドランコという足の速い走竜にするか悩んだが、最終的には荷台が後ろに引ける馬車に決定した。
まぁ、特に馬車に不満があった訳ではないし、使いなれたのにしておいた方が無難だと皆の意見が上がったからだ。
そして出発してから4日経ち、煉獄谷にキラキラサーカス団は近付いて来ていた。
「なんか森を抜けて開けたと思ったら、どんどん何もなくなってくな……」
辺りは草原から少しずつ緑がなくなって殺風景になっていくことにユウキが気づき呟いた。
「この先、馬車で後1日ほど進んだ所に煉獄谷があるわ。 そこの近くまで行くと辺りは灼熱で本当に何もなくなるわ」
「私もタイガも暑いのは得意じゃないんだよね……」
「ガルルゥ」
「私も苦手です……」
「なんじゃオヌシら情けないのぉ。 ワチは逆に暑いのは得意じゃぞ」
そう言ってキラ様は一人「フフン」と自慢げな顔をする。
そうなんだよな。 キラ様は鬼だからな。
鬼といえば色々な地獄にいるからな。火焔地獄や焦熱地獄、炎熱地獄とやたら熱を扱う地獄が多い。
きっと鬼の種族は遺伝子が熱に強いんだろう。 だからケロッとしていられるんだろな。
「はぁ……。 かという俺も暑いのは苦手なんだよな……」
「オヌシも情けないぞ。 しっかりせいよ」
「はいはい。 気をつけます……」
俺はキラ様に適当に返事をし、その場をやり過ごす。
今はまだ暑さを感じないが、煉獄谷はどれくらい暑いのだろうか。 前世では真夏でもクーラーの効いた職場で朝から晩まで仕事に明け暮れて暑さを感じる暇なんてなかったからな。
日本の真夏でもかなり暑かったと思ったけど、ここのイフリートがいる場所は煉獄谷というくらいだからな、相当暑いんじゃないか?
むしろ、よくよく考えたら近付けるのか?
「なあアイリちゃん? 煉獄谷って普通に入れるのか?」
「普通には入れないわよ。 耐性プロテクションをかけて入るわ」
「炎耐性ってことだよね?」
「そうよ」
「ワチはいらんけどな!」
「キラ様はいいよ。 でも俺達はそうはいかないでしょ。 それがないとどうなる?」
「一瞬で焼失して死ぬわ。 現地は間違いなく100度以上の灼熱よ」
「マジ……かよ……」
暑い次元を通り越して死ぬのかよ。耐性でもない限り魔法つかいがいなければ誰も近付くことすら出来ないじゃねえかよ。
俺達はアイリちゃんの不吉な言葉を聞き、不安を抱えながら煉獄谷に向かった。
そして、次の日。 俺達は煉獄谷に到着いていた。
「暑い………」
「暑いわね………」
「暑い………です」
「…………」
「そうか? ワチまだ全然平気じゃ!」
キラ様以外、言葉すら発する事を止めようとするシャルルちゃんとニーアちゃん。タイガもさっきからずっと舌を出しっぱなしになっている。
「ここから先は馬車を置いて一時間程歩いて谷に行くわよ」
「まぁ、そうなるよね」
馬も辛そうにしている。 これ以上引いて行ったら嫌がるし、下手したら死んでしまうだろう。
「じゃあ、とりあえず耐性魔法をかけるわ……」
アイリは詠唱始め、キラ様以外に魔法を掛ける。
~ 全身炎耐性防御 ~
「おお………」
「「 !! 」」
優しく光の衣が全身を覆い、暑さが和らいでいく。
すげぇな。 マジで暑くない! いきなり快適になった! 全身の怠さがなくなり、息まで快適に出来る。マジで魔法って偉大だと思ったのだが……
だが、それも束の間だった。煉獄谷につく頃にはプロテクションをかけているにも関わらず、キラ様以外全員が熱さに苦しむ事になっていたからだ。
「くそっ、これだけの魔法をかけても死ぬほど熱いんだな……」
「ほんとに魔法がなかったら一瞬で死ねますね……」
全員が滝のような汗をかいて現地に到着した。
マジでこんなとこに何時間も滞在なんてしてられないぞ。命がいくつあっても足りゃしない。
「ここが……煉獄谷………」
回りには何一つ植物や生物が生息していなかった。すぐ目の前の大きい谷底を覗くとマグマがボコボコと音を立て蠢いている。落ちても死ぬし、魔法が解けても簡単に死ねる。
そう。 ここは正に煉獄谷の名前に相応しい場所だった。
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