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52話 最強の装備への勧め

読んで頂きありがとうございます。

 ナチュカに帰ってきた次の日、俺とアイリちゃんは商店街が並ぶ大通りを一緒に歩きながら買い物をしていた。


  内容としては、コカトリスに奪われてしまったアイリちゃんの魔法強化アクセサリーを買いに行くのと、アイリちゃんがキラキラサーカス団のステージで着る衣装を探しに行くためだった。


 まぁ。ステージで着る服は、まだ具体的には考えていないのだが……。


 どうせなら可愛い衣装を着て欲しい。


  具体的には言うのであれば前世の時に好きだったアイドルグループの乃⚪坂48や、A⚪B48みたいなフリフリの可愛い衣装だ。


 あんな可愛い衣装を着てステージに上がったら本当にアイドルみたいな扱いを受けてもおかしくないはずだ。


 それくらい、うちの3人は別格に可愛いからな。



 横にトコトコ歩くアイリちゃんを見ながら様子を伺う。


 昨日のギルドを後にした時に、金色(こんじき)の翼のメンバーに別れの挨拶をしてくると言っていたからだ。


 この世界に来てから俺は他のパーティーと手を組んだこともないからな。


 バカにされた悔しさもあり組む気には到底なれなかったが。


 今となってはそれが俺にとってはよかった。


 だけど、俺と他のメンバーは違う。


 気持ちが分からない。どう思っているのだろうか?


 世話になったパーティーを出るのに感謝の気持ちで一杯になるのか。


 それとも気の合わない連中と別れれて清々すると思うのか。


 割りきって組んでいるのか………。


 確認したいのだがアイリちゃんの顔を覗いても答えが読めない。


 そうなると訊くしかないわけだ。


「そう言えば、昨日はちゃんと金色の翼のメンバーには挨拶は出来たの? 」


 ユウキがアイリに訊ねると少し答えにくそうに下を向きながらアイリは話した。


 やっぱり、平静を装って隠していたんだろう。あまりいい別れではなかったらしいな。



「ええ。 ………辞めてきたわ。 メンバーのガイアには色々よくしてもらったけど、今回の件で私と同じ事を話す気だったみたいだから丁度よかったわ……」


「そうか……。 まぁ、合う合わないもあるからな。 アイリちゃんなら大丈夫だ。 うちのパーティーなら同じようなキレッキレキャラのキラ様がいるし、一人増えただけで似たようなもんだよ」


「似てないわよ! あんな短気で口の悪い神の使い魔と一緒にしないでよ。 イラっとするわ!」


「あっ………はい」



 可愛いだけでやっぱり同じじゃねーか。

 手がすぐ出ないだけで沸点の低さは五十歩百歩だよ。


 キラ様は魔力解放するとグラマラスに変身するが、アイリちゃんは華奢(きゃしゃ)のロリッ子だからな。

 タイプは違うが、これはこれでちゃんと良さはある。



 よく見ると本当に可愛いんだよな。

 ショートヘアーの黒髪はサラサラで、風が吹くと綺麗な髪がなびいて、同時にほんのりいい香りもしてくる。

 金色の翼のガイアも惚れてたって言うだけはある。

 胸はチッパイで少しだけ残念だが、形は発展途上で申し分なかった。

 足もスラッと伸びていて、くびれもシャルルちゃんやニーアちゃん程ではないが主張し過ぎない程度にはある。


「ロリッ子………」


 アイリちゃんを連れて服屋を色々回りながら考えていこうと思っていたが……


 ああ、何か天から降ってきたぞ。


 これしかない。


 思い付いた瞬間から選択肢はこの一択しかなくなった。


 アイリちゃんには絶対あれが似合うはず。



 適当にブラブラしようとしていたユウキだが、考えが固まったので先に服屋によることにしよう。


 俺は商店街に並んだ服屋をもう一度しっかり見渡してみる。

 すると少し離れた一角に怪しい服屋があった。


「あれはもしかして……」


「あれってどれよ?」


 するとアイリも怪しい店に気づきユウキを一旦止めようとするが、ユウキの足はその店に向かって一直線に進んでいく。


「ちょっ、ちょっと! あんな怪しい店に入るつもりなの!?」


「そうだよ。 あそこにはきっとあれがある筈なんだ!」


「嘘でしょ! あんな怪しい店に何が置いてあるのよ?! まともな服なんてないわよ!」


 なかば強引にアイリちゃんを怪しい店に手を持ち引っ張って行き、店のドアを開けた。

 予想はしていたが普通の小洒落た感じの店内ではなく、何故かタロットカードが店の入り口に売っていて、奥に向かって奇抜な服ばかりが店内には並んでいる。


「(ちょっ、なんなのよこの店は? ここで何を買おうって言うのよ)」


「アイリちゃんのステージ衣装を探しているんだよ」


「(こんなとこに、ステージで着るようなまともな衣装なんてないわよ! 早く帰るわよ)」


  そう会話をしながら入り口から服を物色しながら奥に進んでいくとユウキの手がピタリと止まる。


「これだ……」


 手にとって衣装を確認してみる。


 真っ黒なドレス、独特なかわいい神秘的なファッション。

 まるでお姫様かお人形のような少女的な要素も兼ね備え、暗黒をイメージさせるロリッ子の最強の装備。


「そう………ゴスロリだ!」


「ゴスロリ?」


「ゴシック&ロリータのファッションの略さ。 要はアイリちゃんのようなお姫様みたいに可愛い子が着る服さ」


「可愛い……お姫様……」


 よし、手応えありだ。

 女の子はお姫様に憧れがあるからな。ウエディングドレスやパーティードレスを着たいと思うのは当然の心理なはず。


「そうだよ。 神秘的なファッションだろ? これは普通のヤツには簡単に着れないのさ、暗黒をイメージしてるからね。 アイリちゃんの漆黒の魔道士の魔女のイメージにピッタリじゃない?」


「暗黒………魔女……」


 迷ってる。お姫様と暗黒、魔女のワードに!


「ならさ、とりあえず着てみようよ? 着るのはタダなんだし!」


「ちょっ…………イヤよ……」


 そう言ってユウキは一番奥にある試着室に服を持たせ強引に押して行く。


 イヤそうな顔を少ししているが、この反応は本当はイヤじゃない。明らかに意識してる。


 イケる!


 絶対にイケるっ!


 試着室に強引に押し込んだユウキはアイリちゃんの着替えさせる事に成功した。


 ここまでこればこっちのもんだ。


 逃げ道はなくなったからな。


「ささっ! サクッと着替えちゃおうよ!」



 ごそごそ…………



「なんで私がこんな服を………」



 何だかんだブツブツ言いながらもちゃんと着替えてるな。


 やっぱり、ちょっとは気になったんじゃないかよ。


「どうだ? アイリちゃん着替えた?」


「まだよ……もう少し……」


 俺は早く開けたい気持ちを抑え、試着室の前で待った。


 どれくらいだろう。


 30秒だろうか?


 それとも1分だろうか?


 ようやく待ちに待ったスライド式のカーテンが開く。


「お………お待たせ……」


 恥ずかしそうに顔を赤らめ、フワッとスカートを持ち上げて俺に見せてくるアイリちゃんは最高に可愛かった。


「す……素晴らしい………」


 俺の見る目には狂いはなかった。


 俺はアイリちゃんの前に(ひざまず)き、王子を真似てみる。


「嗚呼………姫よ……。 貴女は今、この世界のどの宝石よりも輝いて見える。 その輝きはダイヤモンドよりも美しい……」


「なな……なによ、 いきなり……


「可愛いよアイリ……」


 俺は立上がりアイリちゃんの顔の距離が30㎝位まで近付く。


 こんな台詞は勢いが大事なんだ。


 少しでも恥ずかしさが表に出れば全て台無しになる。


アイリちゃんの顔を見つめると顔が紅くなっていき、いつもより目が潤んでいる。


もしかして、これはひよっとして……


 俺はアイリちゃんの肩に優しく手を置くとゆっくりと顔を近付けていく。


「目を……閉じて………」



 冗談の芝井のはずだったが、アイリちゃんとチューが出来そうじゃないか。


こんな雰囲気なんて滅多に作れない。ならそのまま勢いで……



「(なっ……ちょっと……本気なの……!?)」



 すると抵抗していたアイリの肩の力が抜け、ゆっくりと目を閉じ顔を上げてきた。


 えっ!これって………やっぱりそういう事だよね。


「なら……頂きます」




 ………………




「な訳ないだろっ!!」


 ドスゥゥッ!!!


 俺のみぞおちにそれはそれは容赦ない膝蹴りが入る。


「っおふっ!!!」


 激痛が腹を襲い、その場に俺は倒れ込んだ。


 この蹴りはキラ様より容赦なさ過ぎるぞ……


「調子に乗り過ぎよっ!!」


「ずい……ま……せん…」


 顔を上げると、アイリちゃんのシルクで出来た可愛い黒のパンティーが見えた。


 衣装と同じ色。


 今日はなんて日だ……。 最高についてる。


「黒………色……」


「は……?」


 俺の視線に気付いアイリちゃんはワナワナと震え始め、容赦なく顔を踏むのだった。


「変態……死ねぇ――っ!!」



 ドゴォォォ!!!


「ごっふぅぅっ!!!」

読んで頂きありがとうございます。


少しでもよかったと思われた方はブクマ登録と評価して押して頂けると本当にうれしいです。


レビューもお待ちしてますので宜しくお願いします!!

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