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51話 帰還

読んで頂きありがとうございます!

  キラキラサーカス団はナチュカに2日掛けて帰っていた。

 慣れた旅路も馬車がなくなると途端に全てが苦痛に変わってしまう。

  見渡す限り景色も前世とは全く違って壮大で美しい自然が広がっていたが、道は全て整備されているわけでもない。馬車で来た道をキラキラサーカス団は徒歩でひたすら歩いていた。


 すると今まで気付かなかったが、歩きにくい場所も結構ある。


  それに対して不満があるわけでもないが、前世で整備された道しか歩いて来なかった俺はどうしても前世と比べてしまう時がある。

  この世界で道がちゃんと整備されていればもっと楽に移動ができるのにと。


  例外で獣のタイガと獣人のシャルルちゃんは涼しい顔で歩いていたが……。


「はぁぁ。 やっとナチュカに着いたぞ……」


  暫く歩いているとホンの小さくだが、1km位先にナチュカの街が見えてきた。


  この世界に来てから俺は前世よりも数段体力も力も付いているだろう。

  それはこの俺が一番実感している。


  だけど、歩きはダメだ。 1度でも馬車の楽さを覚えてしまったら歩くのが途端におっくうになってしまった。


「くそぉ。 こんな時に車かバイクがあれば……」


  そう呟いてみるが、考えても俺には開発する技術も知識も持ち合わせていない。出せるのは簡単な手品の品くらいしかない。

 異世界生活でありがちなバイクや車を作ることは不可能なのだ。

 

「ガッテム!!」


 そうブツブツ呟いていたユウキを横から見ていたアイリちゃんが声をかけてくる。


「何をさっきからブツブツ言ってるのよ。 歩き過ぎて頭でもおかしくなったの?」


「なってねーよ!! 歩いてるだけで頭がおかしくなる奴なんで何処にいるんだよっ!?」


「ここにいるでしょ。

 ブツブツブツブツと頭がおかしくなって念仏でも唱えてるかと思ったわよ」


「唱えてねーよ! 誰が何のために念仏唱える必要があるんだよ!」


 そう言ってアイリはユウキの顔を見つめる。 その顔は前みたいにツンとした表情ではなく、何処か意地悪めいた顔をしている。

  仲間として旅をするようになってから心を開いてくれたのか、冷たくされるのはなくなっていた。


 くそっ!ちょっとかわいいじねーか。


「俺は歩くのが好きじゃないと気付いたから楽な方法を考えていただけだよ」


「ふーん。

  楽って馬車以外何かあるの?」


「例えば空を飛ぶとか? 飛べれば馬車もいらないし、街の移動も一瞬だしな」


「あはは。

  バカユウキの考えそうなことね。

  そんな浮遊魔法なんてこの世界にないわよ」


「んだよ。 知ってて言ってるんだよ!」


 本当は知らない。だが、悔しいから俺は知ってる振りをした。


「なら、いつか空飛ぶ魔法でも開発してくれよ。 んで俺をアイリちゃんの背中に乗せて飛んでくれ」


「んな訳ないでしょ! 誰がアンタを背負って飛ぶのよ! 重くて飛べないでしょ!」


 持っていた杖を勢いよく下げ、ユウキに突っ込みを入れてくる。


「空がダメならやっぱ馬車しかないんかぁ」


「馬車以外にもあるぞい」


 俺の肩に暇そうに乗っているキラ様が街の方を見て言う。


「ナチュカにも、たしかあったはずじゃがドランコって乗り物が」


「ドランコ?」


 俺は聞きなれない言葉に、質問にして反す。


「何それ? ドラゴンのこと?」


「まぁ似とるが正確には走竜じゃな」


  ふーん。 そんな乗り物があるんだ。 まぁ、ドランコでもウ⚪コでもどっちでもいいから俺を楽にさせてくれ。


「走竜は馬よりも速くて強い。元々肉食竜じゃからな。 賢いから人の言うことをよく聞くヤツじゃ。 それに弱い魔物なら乗っとるだけで近づいてこん」


「いいじゃん。 ムダに戦闘にもならないし。 それにしようよ」


「いいんじゃが、馬よりも乗り心地が悪く、荷物も大して乗せれん。しかも一人一匹じゃ。 馬車のように後ろに荷台を転がして行けんぞぃ」


「なるほど、一長一短だな……」


「まぁ、実際に見て決めればいいじゃろぉ」


「そうだね、何日か滞在してくから暇な時に見に行こう」


  乗り物は次の旅に出るまでに決めておけばいい。


  俺達はナチュカに着いたその足で、そのままギルドに向かう。

  アイリちゃんが無事の報告と邪気スポットの魔族と魔物の討伐の件もかねて。


  街の中の商店街を抜け、俺達が西区にあるギルドに到着しようとした時だった。

  見るとハンター達が大勢集まっている。

 その数300人位はいるだろうか? 何やら緊急を要する面持ちで話をしていた。


 うーん。 何となく想像ついてきたけど、俺は一人のハンターの男に声をかけた。


「どうしたの? こんなに大勢集まって………」


「ああ、今からコカトリスの討伐をしに行くんだ。

  ここのハンターだけじゃ人数が足りなかったからな。

  ギルドからも要請して貰って他からも集まって貰ったんだ。

  まだ拐われた子も無事かも分からんし、馬車で助けにいった英雄のパーティーも未だに帰ってきてねぇって話だし……」


「え……え~と」


  間違いなく俺達の事だ……。

  馬車を壊されたから、帰るのに往復で3日もかかったからな。

  救助要請は元々ギルドからも出てたとは思うが、助けにいった俺達もダメだと思われてるなこりゃ。


「もう助けて来たよ……。 ついでに邪気スポットに現れた魔物も討伐してきた」


「そっか。 そいつは助かったぜ。

  あんなコカトリス相手に俺達が何人集まっても倒せる気がしてなかったんだ………って

 え―――――――――――っ!!!」


  俺達の顔をまじまじと見て信じられず大声を出す。よく見るとそこには知った顔のアイリもいたからだ。


「ごめんなさい。 皆集まって貰って。 この通り私は無事だわ。 キラキラサーカス団の皆に助けて貰ってきたから」


  騒ぎの中からギルド譲のククルと金色(こんじき)の翼が大勢いるハンター達を掻き分けてながらやって来た。


「アイリさん無事だったんですか?!」

「アイリ無事かっ!!」


「ええ。この通り無事よ。 皆に心配掛けてごめんね。 もうコカトリスは討伐しなくても大丈夫だから」


「と言うことで、俺達が倒したよ。 あの頭の悪いコカトリスを」


「マジか……本当に行って助けてくるとは……俺はてっきり戻って来なかったから、 全員死んじまったかと……本当によかった」


「ええ。 本当に帰って来るのが遅かったので英雄の貴殿方でもやられてしまったのではないかと思ってしまいました」


「あんな鶏にワチ達が負けるわけないじゃろ。 それよりも気になる事があった……」


  そうキラ様がギルド譲ククルに言った後、ククルの指示で救助要請は解除してもらい、散り散りにハンターが去っていくなか俺達はギルドの客間に案内された。


  小綺麗にされた部屋に置かれたソファーに俺達は座らされ、目の前にある机にククルがお茶を持って来て、落ち着いたところで詳しい話をしようとしていた。


  少し飲むと普通のお茶だったが、旅の疲れもあり、ほんの少し癒してくれたようなそんな味がした。


 すると部屋の奥から筋肉質で強そうなギルド長が出てきた。


「私はギルド長のボルボだ。 今回のコカトリスの討伐の件は我々も前々から困っていた事なんだ。

  本当にキラキラサーカス団の皆さんには助かった、ありがとう。

  それと金色の翼のメンバーの一人まで緊急で救って頂いてなんとお礼を言っていいのやら……」


「その件はいいんだ。 俺達にも収穫があったから」


「それよりも気になる事があったぞい。

 邪気スポットにはもっと厄介な暴飲暴食の怪物ベヒモスと魔族がおった」


 それを聞いて受付譲のクルルとギルド長のボルボが血相を変えて慌てて立ち上がる。


「なっ! 何だって!! 怪物のベヒモスと魔族がっ!?」


「ああ。それと側には魔物が約1000匹」


「せ……1000匹だとぉっ!!」


  それを聞いて腰を抜かすボルボとククル。

  ナチュカのギルドでは到底対処出来ない国家レベルの案件に発展していたからだ。


「ど、どうすればいいんだ……」


「まぁ、それも全て俺達が討伐してきたんですけどね……」


「なにぃっ!!」


「ほ……本当ですか!? アイリさん!」


 腰を抜かしていたククルが体勢を戻し、アイリ真実を確認する。


「ええ。 本当よ。 もう少し遅ければ街が襲撃されていたかもしれないわ……」


「なんてことだ。 邪気スポットは危険で誰も近づくハンターがいなかったから分からなかったが、まさかそんな事になっていたのか……」


「今はもう近付いてもいいのでしょうか?」


 不安そうな顔をしてククルとボルボが聞いてくる。


「いいよ。 近くの魔物は一掃しといたから、暫くは安全だと思う」


 その言葉にボルボは安堵のタメ息を吐く。


「そうか。 なら、ククルは調査団を派遣して調べるんだ。』

『はい!」


 そう言ってギルド長のボルボは立上がり、俺達に深々と頭を下げた。


「何から何までありがとうございました。 ロザリアギルド長のガーランに聞いた通りな方々だった。 正に英雄そのものだ」


「それほどでもないですよ。 それよりも確認したいことがあります」


「何でしょうか?」


「アイリちゃんのことです。 俺達とパーティーを組んで魔物討伐を手伝ってもらいました。 その中にA級ランクの魔物も何匹も交じってました。 それで確認がとれたら昇級を検討して欲しい」


 横で聞いていたアイリも急な話に身を乗り出す。


「アンタ、色々ギルドにも規約があるんだから考えて物言いなさいよ」


  そんな事は俺だって分かっている。 手順を踏まないと昇級出来ない事くらい。でも……


「考えるまでもないだろ。 それくらいの事をアイリちゃんも一緒にやって来たんだ」


 あれだけの事をやって来たんだ。それなりの対価を要求してもバチはあたらないだろ。


「ユウキ……。 なら、私からもお願いします。 無茶なお願いかもしれませんが……」


「ええ。 分かりました。 確認が取れ次第、こちらも前向きに検討させて頂きます」


 そう言って俺達はギルドを後にし、ギルドからの返答を待つことにした。


 そして俺は溜まったストレスをナチュカの街で発散し、堪能することにした。


読んで頂きありがとうございます!


少しでも良かったと思われた方はブクマ登録と評価して頂けると大変嬉しいです。


レビューもお待ちしていますのでよろしくお願いします!

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