50話 本当の仲間
いよいよ50話突入しました、皆さんのおかげです。ありがとうございます!
ベヒモスと魔物達を討伐したユウキ達は夜営をしていた。
既に食事を終えていたのだが、全員が激しかった戦いの余韻を引きずっていた。
邪気スポットが改めて危険な場所だと思い知らされたからだ。
本当は帰りたかったのだが、馬車もベヒモスに壊され、戦いも思いのほか時間がかかり、何よりも全員が疲れていたので今日は帰る事を止めたのだ。
痛恨に痛かったのはナチュカに帰るのに歩きで2日もかかるなんて、全員がもう馬車なしでは生活出来なくなっていたことだ。
「はぁぁっ。 今回もホントに疲れたわね。 あのベヒモスのタフネスにはウンザリした!」
シャルルはタメ息をつきながら戦いの事を振り返る。
「シャルルちゃんお疲れさん。 ベヒモスはホントに強敵だったね。 あの魔族のせいで今回もとんでもない目にあったし」
「おぉ。 そうじゃ。 アヤツのせいで一歩間違えば街が大変な事になっとったかもしれんしの」
魔族はベヒモスを操り、他の魔物を従え街を襲撃しようと企んでいたからだ。
理由としては魔族が恐怖や不安など負の感情を餌にしているからだ。
今回は俺達の手で何とか阻止が出来たが、毎回これは正直勘弁してほしい。
それに気になること。
またしても魔符があったからだ。そして魔族の出現と。
「魔族が邪気スポットにいたのは知っとった。 が、摩符が何故かヤツラの手元にあった……」
キラ様が眉を潜めて呟いたが、魔族が魔符を持っていたのが信じられないといった様子だ。
「キラ様は今回の件はどう思う?」
俺にはこの世界の事がよくわからない。
邪気が溢れれば今回みたいに動物が邪気を宿し、魔物に変わる。
そして魔物は人を襲い、喰らう危険な存在になる。
それを意図的に増幅させるのが摩符というとこまでは分かった。
だけど前にキラ様は摩符を作り出すのは魔族には出来ないと言っていた。
でも実際は魔族が確かに摩符を持っていた。あれを拾って来たとは考えづらい。
「分からんのじゃ。 何故アヤツが魔符を持っていたのか。 魔族には作り出せん代物じゃと思っておったから」
するとニーアがキラ様に質問する。
「あれが人から貰ったものだとしたらどうなんでしょうか?」
「「「 !!! 」」」
ニーアの言葉に全員が驚く。まさかそんな言葉が出てくるとは思っていなかったからだ。
「ミジンコのくせに中々考えた事を言うではないか………」
「確かにその説は有力だ。 作れなければ貰えばいいだけの事」
「なら、魔族と人間が、もしかしたら繋がっているということね?」
「可能性はある……」
見えてきたもの。そして俺達が倒さなきゃいけない相手は、魔族だけではないかもしれないという事だった。
「まぁ。 魔族には聞いてる暇ないからな。 いずれまた戦っていけば分かってくだろ」
「そうですね。 次も同じように魔族が所持しているようであれば、ただの偶然ではなく繋がりが濃厚になりますからね」
「おいおい。どうしたんじゃニーア! 頭が冴えとるじゃないか?頭でも打ったか?」
「打ってませんっ! たまには私だってちゃんと考えて言う事もありますよ」
「あぁ。 ホントにたまにな! たまにっ!」
ほら。ニーアちゃんがシュンとしちゃったじゃんよ。
横をチラリと見るとアイリちゃんは黙っている。今回の戦いで疲れたのは分かるがもっと違うことを考えているような顔だった。
「どうしたのアイリちゃん?」
「えっ? ……ちょっと………考えてた」
俺がアイリちゃんに声をかけると皆がアイリちゃんの方を見た。
それはキラキラサーカス団に入るテストをアイリちゃんにすると言っていたからだ。
皆も気にしていたのだろう。俺がどうするのかを。仲間にするのか、それともパーティーから外すのか。
言葉に出さなかったが何となくいつもと空気が違っていたからな。
「入団テストの事が気になるかい?」
その言葉聞くとアイリはビクッと反応する。きっと聞くのが怖いのだろう。
そして、そのアイリにキラ様は予想外の心無い言葉をかけた。
「のぉ。 アイリ。 ワチはユウキの肩からずっとオヌシを見ておったが、オヌシは今回の戦いで何回死んだ?」
「そっ………それは………」
「ユウキがおらんかったら10回は死んでおるぞ」
「えっ、ええ……。 そうね……」
「キラ様……」
ユウキはキラ様を止めようと言葉をかけようとするが、キラ様は話を遮るなと合図を出してくる。
ニーアちゃんもシャルルちゃんも空気を読んで黙って真剣な面持で聞いている。
なんだよ。 キラ様はアイリちゃんをイジめてどうしようっていうんだよ。俺にはキラ様の深意がわからなかった。
「今回のコカトリスの件もそうじゃ。 ユウキが助けに行くと言わんかったら今頃お前さんはコカトリスの腹の中じゃったぞ」
「ユウキが………私を……?」
知らなかった。 でもバカなアイツなら簡単にそう言うかもしれない。だってアイツはこんな役に立たなかった私ですら背負って戦うようなお人好しな男だから。
「オヌシは今回の戦いで何が出来た?」
「……………」
何も言えなかった。 強がりで何かを言い返せる程の事を私は何も出来ていなかったから。
「この戦いで分かったじゃろ。 これから一緒に旅をすればこんなケースがザラに起きる。それでもオヌシは一緒に旅をしたいんか?」
「私は…………」
ああ……分かったわ……。
この話の流れはダメな流れだ。
キラ様は私を嫌っている。
前のパーティーでもあったように一人でもこんな人が出てくると皆して同じような態度に変わっていく。
そして最後は居場所がなくなって追い出される。
今回のキラキラサーカス団だって同じだ。
ここに私の居場所は作れない。
いつも最後はそうだ。
結局、いつもと変わらなかったな。
「そうね……。 残念だけど今の私じゃ役不足だったわ。だから辞退……」
あ~あ。これからまた街に戻ったら金色の翼に戻る事になるけど、あのパーティーのガイアも流石に今回の戦いで私には付いて行けないってきっと言うだろう。そしたらまた一人身ね。旅に出てまた違うパーティーに入って……
そう考えた時だった。
「…………違うだろ」
「えっ?」
「本当に言いたいことはそんな事じゃないだろ」
そう口に出して言ってきたのはユウキだった。
「パーティーに入りたかったんじゃないないのか?! アイリちゃんが強くなるために俺達に見せた顔はそんな顔じゃなかっただろ」
「それは………」
見ていたキラ様も口を挟んでくる。普段強気なアイリから、ハッキリとした返事が返ってこなかったからだ。
「ワチが聞きたかったのはそこじゃ。 肝心なオヌシに覚悟がないのならこのパーティーを降りた方が身のためじゃ。 でなければ……」
「本当に死ぬぞ」
キラ様は真剣な顔でアイリに言った。口は悪いが、これもキラ様の死んでほしくないという優しさから言った台詞だったのだ。
その言葉に、周りに一瞬の沈黙が出来る。 今回の戦いでも死ぬほどの戦いをしたからだ。
「私が入ったところで………戦力になんてならないわ……」
私の全身全霊の魔法が効かなかったのよ。
この先の戦いで、あんな敵がまた出てきたら役に立てるとは到底思えない。
だから……
「なったさ。 アイリちゃんがベヒモスを窮地に追い込んだから俺達がとどめを刺せた」
「あの魔法があったから、戦局を変えられたっ!!」
「 っ!! 」
あの魔法以外、何も戦場で役にも立てなかった私を、アンタはそうやって全部許すって言うの?
「でも、また今度も魔法使いの私は敵から狙われて足を引っ張る事になるかもしれない……」
「だったら守るさ。 俺が何度でも」
なによ……。
なんなのよ。
なんでコイツは引いてくれないのよ。
「次もコカトリスのように遠くに拐われる事が起きるかもしれない。 そしたら、あなた達はきっと私を助けになんて来ない……」
「何処にでも、 何処まででも俺は助けに行くさ」
どうして私にこだわるのよ。
他にもいるでしょ。可愛い魔法つかいくらい。
なんでアンタはそんな私を必要とした目で見てくるのよ。
なんでそんなに必至なのよ。
「コヤツは本物のバカじゃからの。 本当に何処までも助けに行くぞぃ」
ギルドの連中は誰も助けに来なかった。
こんな口先だけでみっともない姿しか晒さなかった私を、アンタはメンバーに加えるっていうの?
本当に本当のバカじゃない。
こんなのこと言うのなんて、世界中探したってアンタくらいしかいないわよ。
「こんなワガママな私なんて、誰も受け入れてくれないわよ!」
そうよ……。
こんな本物のバカでもいつかは愛想尽かして私の元から去っていくんだから……。
アンタの純粋さが………
アンタの優しさが………
アンタの真っ直ぐ過ぎる目が……
私の乾いてしまった心に優しく水を流し込むように……
忘れてしまった大切な気持ちが溢れだして来てしまう。
だから……
お願い………私に、これ以上優しくしないで……。
「…………受け入れてるさ』」
「だって、もう仲間だろっ!!!」
「 !!! 」
そう言ったユウキ以外のメンバーを見ると、誰もが温かい顔でアイリを迎えようとしていた。 キラ様も先程とは違う優しい普段の顔だったのだ。
「ワチもお前さんの本心を聞きたかっただけじゃ。 だからちゃんと言うてみぃ」
優しい顔でアイリに話しかけるキラ様はそう言ってアイリの返事を待ってくれていた。
「ううっ………」
信じられなかった。
今までワガママを言ってきた私を受け入れてくれるパーティーなんて何処にもいなかった。
目標だけ高い、うるさいだけの魔法使いはいらないと言われきた私を、このキラキラサーカス団の皆は受け入れてくれるって言うの……。
だったら……私は……。
「今回の戦いで、もう充分過ぎるくらいアイリちゃんの凄さは皆が知ったさ。 だから………」
そういってユウキはアイリに手をさしのべた。
「俺からお願いするよ。 俺達のパーティーに入ってくれアイリちゃん」
嬉しかった。
私を必要としてくれたのが。
初めてだった。 ちゃんと仲間と言われたのが。
「うっ……ううっ……うん。 入りたい。 私もキラキラサーカス団の一員にして欲しい!」
「ああ。 だったら俺たちを信じてくれ 」
「ううっ……。 うん………」
ユウキから差しのべられた手を取りアイリは涙を流した。
「俺達は誰も見捨てたりはしない。 だから必ずアイリちゃんを助ける。 だからアイリちゃんも俺達が困ったら助けてくれ」
本当は言ってほしかった。 私がいつの間にか何処かに置いてきてしまった言葉。 本当に信頼出来る仲間。 アンタ達なら、全てありのままの私を背負って戦ってくれる事が出来る。
「ええ……。 信じるわ。 私もあなた達を全力でサポートして守るから」
「だったら俺達に付いて来てくれ」
「ええ。 勿論付いて行くわ! 私の夢、大魔道士になるために!」
「ああっ!! いずれ俺達がさせてやる! だから大船に乗った気でいてくれアイリちゃん!!」
その誓いは固く、結してもう壊れたりはしない!!
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