表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/99

45話 漆黒の魔道士

読んで頂きありがとうございます。少しでもよかったと思われた方がいましたら、ブクマ登録と評価をして頂けると大変嬉しいです。よろしくお願いします!

キラキラサーカス団はニーア主導で食事を作る為に準備を進めていた。

新鮮な内に料理を食べましょうとニーアちゃんが声をかけてきたので俺達はそれに従ったのだ。



あんな旨い料理を作ってくれるニーアちゃんの意見を、俺達は断る道理もない。



ニーアちゃんは討伐したコカトリスを包丁を使い見事に捌きながら料理を進めていく。



見ていて思う。本当に手慣れたものだな。

動きに一切の無駄がない。下手したら職人のレベルまできているんじゃないか?



「ほぉぉぉっ!! こいつはマジで旨そうじゃな!!! 食べるのが楽しみじゃぁ!!」


そう言ってキラ様はタイガの背中に座り、スプーンとホォークをカチカチと音を鳴らして料理が運ばれて来るのを待ちわびている。


シャルルちゃんはというと、気を失っているアイリちゃんの破れた服を着替えさせる為に場所を移動して着替えさせていたのだ。


俺的には全然OKだったのだが、皆の視線と意見が冷たかったので別の場所でやって貰っていたのだ。


シャルルちゃんも小柄だから、シャルルの替えの服をアイリちゃんに着えさせれるだろう。

だけど俺は知っている。アイリちゃんとシャルルちゃんとでは違うところがある。


それは、シャルルちゃんは乙パイが大きい事だ。


アイリちゃんにシャルルちゃんの服を着替えさせたら、きっと胸元がスカスカになってしまうだろう。


大きいシャツから見える胸元のチッパイも、考えると乙ってものだ。


ふぅ。楽しみだ。

俺は胸を弾ませ料理とアイリちゃんが目覚めて来るのを待った。


そしてシャルルが着替えを終わらす頃、気を失っていたアイリが遂に目を覚ましたのだった。


「ん………? あれ? ここは? 私は生きて……?」


「あ、目が覚めたのね。 急に動かないでね」


目覚めたアイリにシャルルは優しく声をかける。


「私はシャルル。 貴女がコカトリスに拐われて捕まっていたところを私達が助けたんだよ」


「えっ? あのコカトリスを?! 貴女達が?」


そう言いアイリは混乱し顔を上げる。


考えが追い付いてこない。何故彼女が一人しかいないのか。


しかし、見渡しても彼女以外遠くに数人人影がある位で後は誰もいない。てっきり他のギルドに要請を頼んで、大勢で救出しに来たかとアイリは思ったからだ。


ナチュカのギルドにはB級のハンターは金色(こんじき)の翼を除き、後はみんなC級ハンターばかりでA級クラスの魔物を討伐しようとした場合、ナチュカのハンターだけではもう勝てない。

その場合、他のギルドや王国に救援要請を出すしかなかったからだ。


しかし、そんな要請を出したからといってもすぐ来るわけでもない。


最低でも手続きやら何やらで二日はかかる。


それが即日来たのだ。てっきりアイリはコカトリスに捕まった時に自分は死んだものと思っていたのだ。


「ふぇ、よかったぁ。 ………うぇぇん」


助かった事に安堵の涙を流すアイリに、シャルルはそっと優しく抱き締めた。


「怖かったでしょう。 でも、もう大丈夫だから」


「うん。 うぇぇん。 ありがとぉぉ!!」


本来これをユウキがやりたかったのだろうだが、シャルルに先にとられてしまう。


泣いてある程度落ち着いたところでシャルルは声をかけた。


「向こうで皆が食事を作って待っているわ。 アイリちゃんも一緒に行きましょ」


「うん。……分かったわ」


そう立ち上がろうとすると自分の服装がいつものと違う事に気付く。


「って、あれ?私の服は?」


「あぁ、貴女の服はビリビリにコカトリスに破られてしまったから私の手持ちの服に着替えさせて貰ったわ。

それと身体にも少し傷もあったから各部に薬草を塗り込んでおいたから。

少し染みるけど少しすればすぐ治るから」


「あぁ。 そうだったんだ。 なんか色々とすいませんでした」


自分の身体を一通り見た後、全部シャルルにやって貰った事に申し訳なさそうに御礼を返し、二人はユウキ達の元に着いた。


「おぉ。シャルルちゃん。 それと初めましてアイリちゃん」


戻って来た二人に挨拶をするユウキ。


「あ……あなた達は?」


皆の顔を見て、アイリは助けに来た人数に驚く。


「えっ? ってかあなた達以外、他にハンターはいないの?」


「そうじゃ。これだけじゃ」


「えっ! う……嘘でしょ??」


「本当ですよアイリちゃん。 私達だけです」


皆が本当と言うが、当の本人は現実を理解出来ずにいた。


信じられない。あの狂暴なコカトリスをたかが少人数で倒すなんて、余程腕のあるハンターチーム位しか出来やしないはず。

そんな凄腕のハンターチームを私は知らない。


「ところで、自己紹介がまだなんだけど、アイリちゃんいいかな?」


俺はとりあえず簡潔に済まそうとする。このままダラダラ話すのもなんだしな。


「えっ!! あぁ、ごめんなさい。 ちょっと信じられなくて。

私から紹介するわ。 私は魔法使いのアイリ。ここら辺では名の知れた、またの名を漆黒の魔道士よ! どんな敵でも私の魔法で一撃なんだから!」


「ふむ。 聞いたことないな」

「ないわね」

「ないですね」


俺もこの世界に来て日がまだ浅いからなぁ。勇者マルスと賢者シーダ様の名前位は知ってても他の有名なハンターまで名前を覚える事に気を回してる余裕なんてなかったからな。


「う~ん。 ごめん、知らないや」


「知らないのかよっ!!

結構この大陸では名が知れてるとは自分では思っていたんだけど、私もまだまだね」


漆黒の魔道士か。強そうな名前だな。するとそこそこ強いんだろうか。


「なら改めて俺はキラキラサーカス団の団長を努めてる道化師のユウキだよ」


「うむ。 ワチはそのユウキの使い魔をしとるキラじゃ」


「私が剣士のニーアです」


「改めてシャルルよ。 そしてこっちが相棒ホワイトタイガーのダイガ」

「ガルルゥ」


「キラキラサーカス団って、あなた達ハンターじゃなくてサーカス団なの?!」


「あぁ。 そうだよ。 サーカスをしながら各地を回って旅をしているんだ」


「助けて貰っておいてあれなんだけど、なんでそんな訳分かんないチームが…………ん? キラキラ……サーカス団?」


考えた後、アイリはハッと気付く。


「キラキラサーカス団って、あ……あなた達もしかしてライオネスを倒した新たな英雄のっ!?」


「そうじゃ。 ワチ達がヤツを粉微塵(こなみじん)にしたキラキラサーカス団じゃ」


「ウッソ! ……でもこれで納得したわ、全てが繋がった。 こんな少人数でコカトリスを倒せるのも頷けたわ」


「まぁライオネスを倒したのは女性組の三人のキラ様とシャルルちゃんとニーアちゃんだけなんだけどね」


「ぇ! えぇぇぇぇっ!! どうなってるのよ。 あなた達の強さは」


この大陸では俺達もかなり知名度が着いたな。ギルドの時の反応といい、アイリちゃんの反応といい、授与式を受けといて正解だった。

確信した。この世界で俺達はもうすでに上位組にいる。前世ではパッとしなかった俺が、この世界では既に勝ち組に入ってきている。


「まぁ、そんなことはいいじゃない。 アイリちゃんも丁度料理が出来たとこみだいだから一緒に食べましょ」


「えっ……ええ……」


現実離れしたキラキラサーカス団の強さに戸惑いながら、状況を受け入れるアイリの元に料理が運ばれて来る。


「さぁ。 皆揃った事だし食べよう。 いただきまぁす!」


「「「 いただきまぁす 」」」


箸を進めてくと、いつもと反応は皆同じだが、アイリもニーアちゃんの料理の上手さに驚く。


「なんか、随分美味しい料理ね。 いつもこんなに旅の最中に作ってるの?」


「そうですよ。 腹が減っては戦は出来ぬって言葉があるくらいですからね。食事には気を使ってます」


おいおい。その台詞は前世のことわざだろう……。誰かが転生した時に持ち込んだだろ。


「なんて料理なの? こんなに美味しい料理なんて街でも食べれないわよ?」


「ああ。 これはですね、コカトリスのモモ肉を使ったトマトソース添えと、こっちがコカトリスの胸肉とブロッコリーを使ったチリソース炒めで、シンプルですが最後のがコカトリスの焼き鳥です」


「ってこれ全部コカトリスなのっ!?」


金色(こんじき)の翼を率いてコカトリスと戦って、挙げ句連れ去られて酷いことをされたアイリは、初めて自分が殺されたかもしれない相手がまさか料理されてるなんて思ってもいなく、そしてその恐怖から強烈にトラウマになってしまっていた。


「うっ!! コカトリスはダメェ………おっうぇぇっ」


「ちょっ、アイリちゃん!? ここで吐いちゃダメだ! 向こうで吐こう!」


おいおい。こんな美味しい料理がダメとかどんな口してるんだよ。でも吐かれるのはまずい、急がないと。


俺はアイリちゃんを急いで木陰に連れていきうずくまったアイリちゃんの背中を擦る。


「大丈夫か、アイリちゃん?」


「ヴぇぇ…………。ありがと。 でも、私の背中を男が気安く触らないでくれる?」


「ああ、ごめんごめん!」


俺はサッと手をどける。


……………なんかイメージと違うな。


うん。でもこの子の事、少しずつ分かってきたぞ。すごい可愛いけど口が滅茶苦茶悪い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://www.tugikuru.jp/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ