40話 得意分野
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あれから二日後の朝、俺達はこのロザリア王国から旅立つ為に準備を進めていた。
「ニーアちゃん準備はいいかな?」
俺はニーアちゃんに頼んでおいた食料の調達を聞いていた。
「はい。 次の街までの食料も買って起きました」
「おぉ。 ニーアにしてはやるではないか? そう言えばオヌシ料理だけは得意だったからな」
「だけは余分ですよキラ様」
そう言って買ってきた食料の中身をごそごそとキラ様は確認する。
「は~。 野菜から肉まで色々入っとる。 どれも料理したら旨そうじゃな」
「ニーアちゃんの料理はいつも絶品だからなぁ。 早く食べたいなぁ」
ユウキの言葉を聞き、ニーアは照れながら変事をする。
「そうですか! なら作る際は腕によりをかけて頑張りますねっ!」
「やった。 ありがとう! 楽しみにしてるね」
幸せだなぁ。まさか、死んでもこんな日が再び訪れるなんて。
俺にもこの二つの世界で彼女が出来る事が、いや嫁まで出来てしまうなんて。神様には感謝しなくては。
そんなこんなをしていると、シャルルが部屋に入ってくる。その後をゆっくりとタイガも入ってきた。
「おはよぉ。 みんな準備はできたかな?」
「グルルゥ」
「ああ。 シャルルちゃん、タイガもおはよ。 今日出発だけど、ちゃんと旅の話は御両親は納得してくれたかな?」
少し過保護だと言っていたお母さんに許しを貰えるか俺は心配していたが返答は意外なものだった。
「お母さんにはユウキと結婚するから一緒に着いて行くって言ったらすんなりOKしてくれたよ」
「っふぅ!!!」
シャルルちゃんの超ストレートな言葉に俺は思わず言葉にならない言葉を洩らす。
そこは『腕を磨く為に世界を回ってくる』とか『英雄達と一緒に世界の平和を目指して旅に出てきます』とかじゃないのか。
「そ、そっか。 なら御両親に一言挨拶をした方がよくないかな?」
「母さんは顔くらい見ておきたいなって言ってたけど、また帰ってきた時にちゃんと挨拶するからって言って出てきたから大丈夫だよ」
「……ローソンさん、いや、お父さんは何て?」
「聞いた瞬間はビックリしていたけど、その後は滅茶滅茶喜んでいたよ。 娘を宜しくお願いします。 目的を果たしたら一緒に飲みましょうと」
不安ではあったけど御両親は、今回の一件でシャルルちゃんの実力をちゃんと認めて貰えた訳だ。じゃないと危険な旅になんて許可がおりる訳ないもんな。よかったねシャルルちゃん。
「御両親には了解も頂いたことだし、目的を果たしたら挨拶するとしてキラキラサーカス団は次の街へ出発しよう!」
「「「「 おー!!! 」」」」
こうして旅に出た俺達は、北の街ナチュカを目指した。
そこは五日ほど行った所にあり、キラ様が言うにはその先には目的の邪気スポットがあるとのだった。
「でも大分旅が楽になるよね。 王様の計らいで馬車も用意してもらったから歩かなくて済むんだから」
「おぉ。 それはそうじゃ、これでいつでも昼寝も出来るし、楽になるわ」
「キラ様は肩に乗ってるから元々関係ないじゃん。 文句ばっか言ってるだけで」
「なんじゃと!」
「いえ。 何でもないです!」
キラ様の機嫌が悪くなりそうなのでこれ以上この話題を続けるのは止めておこう。
そして、暫くしただろうか。徐々に日が傾きかけようとした頃にキラ様の指示で夜営の準備をする事にした。
女性三人は馬車で寝れるのだが、俺は邪魔になるので自分用のテントを張る為に準備を進めていく。
そして向こうではテキパキとニーアちゃんが料理の準備を進めていた。
キラ様とタイガはそれを楽しみに見ているが、シャルルちゃんは何をしていいか分からず戸惑っている様子だ。
「ニーア。 私に何か手伝う事ってある?」
「えっと。なら、この野菜のヘタを取って皮剥きをお願いします」
「ええ……」
シャルルはぎこちない手つきで包丁を触り、ヘタを取ろうとするが中々出来ずに苦戦をする。
「あっ、いった!」
「大丈夫ですか? 慣れないなら私が……」
「ううっ。 ごめんなさい」
シャルルは手に取った包丁をニーアに返す。
「ニーアはなんでこんなに得意なんじゃ? オヌシは普通出来んキャラだと思っておったが」
「はい。 始めは私も出来ずに苦戦してましたが、人よりも倍ちかく夜営を繰り返しているうちに徐々に出来るようになりました」
「」狩りの不器用さが逆に料理を得意にさせたと言う訳か。 やればオヌシも出来るようになるもんじゃの」
「なのでシャルルも練習していけば上手に作れるようになりますよ」
そうシャルルにニーアは優しく言葉を返し、少し落ち込んだシャルルはタイガの隣に腰掛け晩御飯が出来るのを一緒に待った。
そして待ちに待った晩御飯が運ばれてき、俺達は頂きますと互いの口に運んでいく。
「あ~。 やっぱりニーアちゃんの料理は最高だよ。 何を食べても美味しいや」
「コヤツにも尻以外でちゃんとした特技があってよかったのぉ」
「ガゥ。 ガゥ!!」
「ありがとうございます。 そういわれると嬉しいです。 これからも頑張るので任せて下さい」
そう言って勢よく箸が進んでいく中、一人だけ神妙な面持ちで箸を止め答える。
「何これ……ホントに美味しい」
自然に出た言葉の後にシャルルに違う感情が湧く。戦闘力では互角でも、ユウキの胃袋を確実に掴んだのはニーアの方だったからだ。
「完全に……完敗だわ……」
敗北宣言をしたシャルルに追い討ちをかけるようにキラ様がたたみかける。
「なんじゃシャルル。 さっきの事といい、オヌシは料理がまったく出来んのかぁ?」
前回に雷を交わされたことを余程根にもっているのだろう。ここぞとばかりに責めてくる。
「うっ……。 そうね……」
「かぁ~っかっか! ワチでもコヤツ程ではないがちょっとした物なら料理位出来るぞぃ! 神の世界で勉強したからな! ヌシには何が作れるんじゃ?!」
「………魔物の丸焼き」
「かっかっか!!! それは料理とは言えんじゃろがぁ!」
バカ笑いしてキラ様はドヤ顔でシャルルに決めこむが、料理を手伝わない地点でキラ様も出来ないのと一緒だろうに。
ムカついた俺はシャルルちゃんを守るためにキラ様に反論する。
「キラ様言いすぎだろ。 キラ様だって人の事言えないだろ。 料理はしない、片付けない、食いっぱなしの出しっぱなし。 典型的な口先ばっかのダメダメタイプじゃないか 」
「ぐぬっ!」
「料理を手伝いもしないでシャルルちゃんをバカにするのは止めておいてくれるかなぁ! そんなこと言うなら、これからはキラ様も手伝ってもらうからな!」
俺も少しいつもの鬱憤を勢いに任せて言ってしまったが、今回はキラ様が悪いので仕方ない。
わなわなと拳を振るわせながら聞いていたキラ様も、限界が訪れたのか、ついに爆発する。
「う、うるさぁぁぁーいっ!!! このクソユウキがぁ!!」
ドコォォォォォォォ!!!!!
怒りに任せたパンチがユウキの顔面に見事に直撃する。
「ぶぼぉぉぉぉっ!!」
食べ終えた食器もろとも吹き飛んで、ユウキは無惨に大の字に伸びた。その姿を見てキラ様は満足げな顔をするのだ。
「はぁぁぁぁっ。 スッキリした! なんかモヤモヤしとった気持ちが一気に取れたわ! 」
1日座りっぱなしも、キラ様もストレスが溜まるのだろう。俺がストレス解消に使われた訳か。
「ど……どう致しまして……」
こうして食事は終わり、シャルルはニーアには負けていられないと、次の日からご飯の作り方を少しずつニーアに教えて貰っていくのだった。
そして、俺達は当初の目的地ナチュカに着き、次の邪気スポットを目指すために準備を進めた。
出発前にナチュカ周辺の魔物達の情報を確認したかった為、ギルドに立ち寄ると、なぜか中は慌ただしかった。




