39話 新たな旅立ちへ
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ユウキ達にとって長い一日が進み、そして夜を迎えていた。
授与式も式典も無事終わった四人は宿屋に帰ってきて、やっと一服就いたところだった。
「はぁ~。 疲れた」
部屋の椅子にだらしなくユウキは腰掛け、深いタメ息をつく。
本当に慣れない事をすると疲れるものだ。
会社でもプレゼンテーションをするときは緊張したけど、それとは全く別次元ものだった。
ハンス国王を始め、王族、貴族、騎士達に囲まれ派手に授与式と式典で祝福されたが、こんな時の対応なんて知っているはずもない。
前世の知識なんて凡人の俺には何の役にもたたなかったぞ。まるで生きている世界が違うような感覚だった。
俺はその中で授与式の事を思い出す。
「でも三人ともいきなりAAA級に昇格するなんて思いもしなかったな」
「あのライオネスを討伐したんじゃ。 当然じゃろう」同然:同様、同じ当然:あたりまえ
「目標だったAAA級にこんなに早くなれたなんて、ほんとに最高」
「信じられませんね。 私たちがハンターAAA級の英雄なんて」
このライオネス討伐の功績はAAA級に値するものだと、ギルドから正式な通達が出たのだ。
ハンス国王からは、これから航海も必要になるだろうとロザリア王国の皇族のみ持っている特別な無料航海証とライオネス討伐をした名誉を貰った。
「それも俺のまたの名が光の道化師ユウキ」
「私は一騎当千シャルル」
「私が剣聖ニーア」
「なんか俺の名前は自分で道化師って言ってるだけあって代わり映えしなかったけど二人はカッコいいよね」
「戦いの中で名前負けせんようにしっかりと精進するんじゃなぁ」
「そうだよな~。 俺も白けさせないようにしっかりとマジックを磨こうかな!」
「ユウキ……それは確かにあってるけど世界を救うことにも目を向けてね」
「大丈夫ですよ。 いつもユウキ様は色々考えてくれていますから」
「そうかぁ? こいつはいつも楽しいこととエロい事しか考えとらんぞ」
「う…………」
俺は図星を突かれ反論する言葉もない。
俺はこの世界では楽しくハーレム生活を満喫したいからだ。
その為には安全に楽しく暮らせる世界を先に作らないとな。
ん……。そう言えばキラ様に世界に貢献するという約束があったけど結構今回は貢献したんじゃないか?今度二人きりになった時に聞いてみよ。
そう考えているとシャルルが俺の前にやって来て、ぴったりとくっついてくる。
「今日から私もユウキと一緒だね」
「えっと……? シャルルちゃん?」
そう言いどこからか聞こえてくるゴロゴロという音と共に猛烈に甘えてくる。
「口だけとはいえ夫婦になったんだから同然でしょ?」
「え! うん。 そうなんだけど実家には帰らないの? それに皆のいる前ではちょっと……」
シャルルは身体を密着させて強調した胸を押し付けるようにくっついてくる。
凄い幸せなんだけど、他の二人の視線が痛い。
「シャルルや。 甘えるのは二人きりになってからにせぃ。 見ているとイライラする」
「そうですよシャルル。 それに私も妻なんですから」
そう言って二人はシャルルを離そうとするが本人は全然聞く耳がないみたいに離れようとしない。
「堅いことなんていいじゃない。 妻になったんだから、ずぅっと、一緒に片時も離れずにいたいのよ」
「え? てことは……」
「もぉっ。 最後まで言わせるの? 今夜は朝まで一緒にいるってって事 」
「シャルルちゃん………。 じゃぁ、俺と………」
頬を赤く染めて恥じらいながらも大胆な事を言ってくるシャルルに対し、隣から怒りに満ちた顔でバチバチと電撃音が鳴り響かせている人物が一人いた。
まずいよ。キラ様の機嫌が悪くなってきている。
シャルルちゃんは仲間になったばかりだからキラ様が沸点が滅茶滅茶低いのをまだ知っていないんだ!
いつものイヤな予感しかしない!そう思って頃には、もうとき既に遅し。
「えーい! 何を二人でイチャイチャイチャイチャ!! 二人ともさっさと離れんかぁ!!」
次の瞬間、猛烈に怒り狂ったキラ様の電撃が俺達二人に向かって飛んでくる。
バリバリバリバリバリィ!!!
「うわぁぁぁぁぁ!!! シャルルちゃん退いてくれぇ!!」
「えっ!?」
その電撃に気付いたシャルルは寸前の所で身を翻し、ムダに瞬足を使って俺の側から離れる。
「よっ……っと」
バチバチバチバチバチバチィ!!!!
「ぎょわぁわぁわぁわぁわぁ!!!!」
二人に放った電撃は無惨に俺一人だけに直撃する。
「ふふ。 私には止まって見えるわよ。キ・ラ・さ・ま 」
そう言ってシャルルはドヤ顔をキラ様に向ける。
世界最速のシャルルには不意でもつかない限り当たらないわと自信を覗かせる。
「ちっ!! いちいちムカつく子娘じゃなぁ!!」
「俺は……何も……してないのに……」
「貴様は連体責任じゃ! このジャジャ馬をしっかりと手懐けておけよ!!」
丸焦げになり椅子から転げ落ちた俺はシャルルちゃんに土下座をして頼み込む。これ以上キラ様を怒らす訳にはいかない。
「シャルルちゃん……。今日の所は実家に帰ろう……。 じゃないと俺の体が次の日を迎える前にばらばらになっているかもしれない……」
人生初めての土下座がこんなところで使うはめになるとは。
ユウキにそう言われて渋々変事をするシャルル。
「…………は~い 」
そう言って扉の前に歩いていく。シャルルは振り反って三人に挨拶をする。
「改めてこれからみんな宜しくね。 じゃあね。おやすみ、ユ・ウ・キ 」
そう言って静かに扉を開け出ていった。もしかして、これから毎日こんな日が続くのか?
「ふぅ……。 これはこれで………」
「ミジンコといいアヤツと言い、これから大変じゃぞ」
ニーアちゃんは反論する。
「キラ様、私のどこが大変なんですか」
「お前はミジンコ並にアホじゃろが」
「…………」
黙り込むニーアちゃん。ほんと最初からだけど、扱いがひどいな。
キラ様が肩から大きくタメ息を吐き、愚痴にも近い言葉を溢した。確かに大変になるかもしれないと不安がよぎる。
「……これから頑張ります」
そしてシャルルちゃんの事を少し分かってきたぞ。
彼女は典型的なデレデレタイプの子だ。
周囲を問わず、何処でも甘えてくるタイプ。
俺の言うことも何でも聞いてくれそうなタイプだ。
それに対し、ニーアちゃんはクールデレだな。
最初はクールでお堅いイメージだけど、時間とともに打ち解けてデレデレしてくる。
特に二人きりになるとデレッとする。これも俺の好きなパターンの萌えなんだよな。
「嵐も去ったことじゃし、ニーアは先に風呂でも入って来い」
「はい。 では、先に入って来ますね」
ニーアはキラ様と一緒に使っている部屋に戻りシャワーを浴びにいく。
二人きりになったところで、さっき頭をよぎった世界貢献の事を思い出す。
「そう言えばキラ様、今回の一件で俺は世界に貢献できたんじゃないの?」
「ん…………? その事か。 確かにライオネス討伐をした功績はでかい。 それは報告しといたる。 後はマリア様が決めることじゃ」
「ありがとうキラ様。 宜しく頼むよ。 俺がこの世界で再び暮らせるように」
「ああ。 そうじゃな……。このままいけば、この世界で無事に生を全う出来るようにしてやるわ」
そう言ったキラ様の顔は少し遠くを見ているような、何か違うことを考えているような顔をしていた。
「キラ様?」
「いや、何でもないんじゃ………」
「さて……。ワチも部屋に帰ってゆっくりでもするかの」
そう言って自室に戻って行った。
少しだけ違和感を覚えたが、俺にキラ様の考えは分かるもんでもない。俺の考えがキラ様に読まれる事はあっても、逆は出来ないからだ。
そう思い、俺は深くは考えないようにした。




