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38話 未来予想図

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「「「 ええっ!!! 」」」


 キラ様のあまりに突然の台詞に3人が声を合わせて驚く。


 そりゃそうだろう。二人とも正式には付き合ってと言葉を交わした訳でもない。それを飛び越えて結婚しろと言われたら誰でも戸惑うわ。


 しかも、二人共なんてこの世界では一夫一婦制が普通なのか、それとも一夫多妻制が普通なのかが俺には分からない。

 旅の道中そんなこと意識して街を見たことなんてなかったから分からない。


「でも、このマール大陸では一夫一婦制で……」


 そうニーアちゃんが言いかけるもキラ様は3人に言う。


「これからの旅で、必ずユウキの黄金の手の力を借りる事になる。 それほどにユウキの力は絶大じゃった……」


 確かにそうかもしれない。限界を超えて力が上がるらしいのだから。

この際この力の事を限界突破(リミットブレイク)とでも名付けておこうか。


「じゃが、この力は誤ると国の驚異になりかねない。 簡単に譲渡出来るコヤツの聖気を、赤の他人にコヤツが乱発したら、それを悪用される危険もある。 そこでじゃ……」


 そこまで深く考えてなかったな。簡単に譲渡出来るこの力は使い方を間違えると確かに悪用されかねないな。

 こっそり花街に行ってこの手を使って女の子と楽しく遊んで来ようとしていた事は伏せておこう。

 ひょっとして、そこまで見透かされてたんじゃないのか。



「怪我人を治療する目的以外で使うなら、結婚すると決めた相手にしか譲渡を使えなくしとけばコヤツも悪さ出来ん。 使うときは覚悟を決めて人を選ぶといい」


「いやいや、勝手にキラ様が話を進めてるけど、二人の気持ちもあるじゃん! いきなり結婚って言われても……」


 そう言い、二人に意見を求めるが二人共いつになく真剣な顔をしている。


「それに、コヤツの力は力を宿した女が強ければ同時にコヤツも強くなるみたいじゃ、これも遊び人の力の影響を強く受けとるせいなら、職業柄使う事も免れん訳じゃ。 だから好きになったが最後状況を受け入れろ」


未知の遊び人の能力に強引に受け入れろと要求するキラ様。確かに考えても答えのでないことに考えを回すのは時間の無駄ってものだ。


「キラ様何故それを? 自分でも魔力量が増えてるのにさっき気付いたのに……」


「戦ってもいないのに魔力が増えとれば気付くじゃろ。 ワチはオヌシの使い魔じゃぞ」


 キラ様の勘の良さには本当に驚くな。いつも変な所で勘が鋭いんだからこれからは行動も言動も気をつけよう。ついでに妄想も。


 やはり、俺の考えてたみたいに心を通わせて譲渡した彼女には俺自身も恩恵を受けれるということで間違いなさそうだ。


「と言う訳で、遊びでは使わせんから、これからの旅を考えると、コヤツのスキルのせいでこうなってしまった以上、悪いが妻になる覚悟のないヤツは途中下車してもらう事になるが、二人とも覚悟はあるんじゃろな?」


 俺のせいって。まー確かにニーアちゃん、シャルルちゃんと同時に関係をもってしまった事には罪悪感を感じるがいきなりハードル上げ過ぎだろ。そんな簡単に決断できないぞ。


 すると二人は答える。答えは初めから決まっていたかのように。


「はい。 それが選ばれたユウキ様の務めであれば私はそれを受け入れます。 ただ平等に愛して欲しいです」


「え?! ニーアちゃんはいいの?!」


「勿論です。 私はあの時からユウキ様以外考えられません」


 さらっと出た言葉にユウキは驚く。そして続いてシャルルちゃんも答える。


「私は……」


「シャルルちゃんは考えなよ! お父さんの騎士団に入って一緒に国の役に立ちたいって以前言ってたよね! 旅をしたらその夢の事も諦める事になるよ!」


 以前洒落た店でデートした時に父上を尊敬し、共に上を目指したいという話を熱く語られたのを思い出し、俺は勢いで返事をしないように問いかけるが……


「別に私も構わないわ。 ユウキの事を愛してるから。 私も一緒に行く!」



「………」



 そうシャルルは言い、さっきよりも強く抱き締められる。うれしいけど、対抗心剥き出しで抱き締められるもんだから骨がきしんでるよ。これ以上煽られると本当に骨が折れる。


「だってこの世界を救う為にサーカスをしながら旅もしてるんだよね? 父上を越えるなら世界を回りながら色々学べるじゃない?

世界を救う位の事をするなら同然父上よりも強くなれるよね?」


「う、うん。 それはそうだけど……」


 確かにそうだ。一つの事にこだわるのも大事だが、視野を広くした方が将来的には上手くいく事も多いのも事実。


 だけど心変わり早すぎないか?女の子ってこんな時の決断力が凄いな。迷いがなさすぎる。


「この大陸では一夫一婦制じゃが、西のゴロン大陸は一夫多妻制じゃしな。 そこで責任もって戦いが終わったらユウキが甲斐性を見せることじゃな。 それに二人にあんな事をしておいて、はい。 サヨウナラなんて事は………」


 ユウキの方を見て冷ややかな視線を送る。当然の事だろうといった顔をして。


「ないないないっ!!!! 勿論そんなつもりでやってないよ! 俺はいつでもちゃんとは考えてるよっ!」


 冷汗をかきながら即答する。


「ニーアちゃん、シャルルちゃん、二人の事は大好きだし、ちゃんと勿論考えてるからね」


「はい。 ユウキ様よろしくお願いします」


「一生大事にしてよねユウキ!」


「はは……」


 なんか話が一気に解決したけど、どっと疲れたな。これからは心を入れ換えて二人の事を大事にしなくては。


 未来の事なんて前世でも考えた事ないのにこの世界では本当に簡単に決まっていくな。


「決まりじゃな」



 そう言うとキラ様は係員を呼ぶ。


「もうすぐ授与式が始まる事になっておる。 その後は式典がある。 シャルルは正装に着替えとるがユウキとニーア、オヌシらはそのままではおかしいじゃろ」


 俺もニーアちゃんも正装なんて持ってない。同然だろう。旅をするのに正装なんて邪魔でしかない。こんな事になるなんて思ってもない訳だから買うはずもない。


「借りられるのですか?」


 係員が二人の前に来て案内をする。


「勿論で御座います。 英雄の御二人にはとびきりの服を用意させて頂きます。 では、こちらに……」


 係員に連れられて着替えに向かう時に改めて思った。


 強引にキラ様に話を進められたけど、結果的に丸く納めて貰った。

もし逆に俺だったら炎上していたかもしれない。


 そう思うと今回大きな借りをキラ様には作ってしまったな。

とりあえず何も反す物もないから後で御礼を言っておこう。


そう思いながら俺達は着替え終え、授与式に向かうのだった。




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