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33話 もう1つのの可能性

読んで頂きありがとうございます。中々書けない日が続いてますが頑張って書いてますので応援宜しくお願いします!!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」




「俺の聖なる気が本物なら使い道は一つじゃないだろう! 奇跡を起こさせてくれ!!」




 ユウキは黄金に光る手のもう1つの可能性を信じた。




 ニーアに力を与えた時、自分の生命力と同時に聖なる気を渡したからだ。




 それは力を与えるのと同時に傷付いた者も回復させられるのではないかと。




 直接刺した傷口からユウキの聖気が勢いよく注ぎ込まれていく。




 それは魔法ではない、聖なる気がローソンの身体に深く染み渡っていく。




 そしてその力は、失ってしまった筋力も、視力も、肉体すら本来の力を取り戻していく。


 生命エネルギーが満ち溢れ、細胞が活性化し、出血も止り、傷口すら急速に塞がっていく。




「うぁ………ぁぁ……ぁぁぁぁ!!!」


「父上、お願い!!生きてえ!!」




 シャルルは光を放つ二人に、父上がどうか助かりますようにと祈りを捧げる。


 そして、二人を包んでいた神々しい光は薄くなり。ローソンを包んでいた神々しい光は止んだ。




「はぁ。 はぁ。 ……よかった。 どう……ですか? まだ本来の力じゃないので無理は……しないで下さい」



「こ……この……力は……?」




 目を開けたローソンは信じられなかった。


 意識が朦朧(もうろう)とした中でかつて1度だけ出会ったことのある勇者様の気配は感じた。


 しかし気付いたら傷口は塞がり、酷使して痩せてしまった身体も、失ってしまった視力も回復してエネルギーが満ち溢れていたからだ。




「父上ぇぇ!!!」




 本当に奇跡が起こったかのようにシャルルは喜んだ。


 魔法でもここまで回復させられるのは賢者様位しかいないからだ。


 抱きついて泣くシャルルにローソンは状況が全く把握出来ない。




「何が起こっている? なんで私の身体は別人のように元気になっている? それに貴方は、勇者…さま?」




「ふぅ。 一先ず説明は後です。タイガも……」




 そう言うと、ユウキはタイガの元に行き、タイガに声をかけ頭を優しく撫でる。




「タイガもよく頑張ってくれたな。 ありがとな」


「グルルルルゥ」


「ふぅぅぅっ。 痛いけど少しだけ我慢してな」




 そう言うとローソンの時と同じように傷口に手を差し込む。そして聖なる気を流し込んだ。




「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」




 タイガも同じように身体が活性化され、本来の生命力が戻っていく。


 二人を包んでいた光は止み、光の先では、タイガは立ち上がってユウキの顔をしきりに舐めていた。


それは感謝しるしだった。


 二人に割って入ったシャルルは、タイガも命を繋ぎ止めれた事に感激する。




「タイガも良かったぁ!! ほんとに、良かった……」




 抱き締めたタイガを横にユウキは立ち上がる。




「はぁ……はぁ……。 本当に……良かった。 俺はこれから戦いに行くよ」



 そう言って歩き出そうとした足取りはふらつき今にも倒れてしまいそうな程力を消費していた。




「えっ? ユウキっ!!!」




 シャルルに抱き締められたユウキは力なく支えられる。




「はは……。 ちょっと、力を使いすぎたかも……でも大丈夫だから」




 はにかんで笑うユウキに、シャルルはすぐ気付く。




「ユウキ……あなたの魔力は……………」




 それ以上言わなくても、誰もが分かるほどに魔力が枯渇しかかっていた。


 シャルルは撰ばれた者は特別な存在だと思っていた。


 だからユウキも勇者マルス様や賢者シーダ様と同じように、何でも出来て、どんな状況でも簡単に覆す程の存在だと思っていた。


 しかし、ユウキを見てそんな幻想は吹き飛んでしまう。


 二人を救ったユウキはまともに闘えない程、力を失いつつあったからだ。


 シャルルは青ざめ言葉を漏らす。




「わたし……のせいだ」




 しかし、その言葉にユウキが反応する。




「……違うよシャルルちゃん。 これは俺の意思だよ。 俺が自分で望んでしたことなんだ」



「でも……」




「どの世界でも死ぬときは簡単に死ぬんだ。 だけど死んだらもう会うことも、話すことも、一緒に出掛けたりすることも、もう出来ないんだよ……」




 それはシャルルから見てユウキは哀しそうな顔で、どこかで一度体験したことがあるかのよな口振りに思えた。




「俺もシャルルちゃんが尊敬してるお父さんと、相棒のタイガを死なせたくなかったんだ」




「だから、俺はもう少しだけ頑張るよ……」



 その言葉を聞いて、シャルルはの涙を流した。


なんで貴方はこんな私のワガママの為に、自分の力を犠牲にしてまで頑張れるの?


戦場まで来ていきなり私を助けて、父上もタイガも、皆助けて。ほんとに反則だよ。ムチャクチャだよ。


 それはライオネスの前で流した悔し涙ではなく、父上に会えなくなる悲しさで流した涙ではなく、感謝から出た涙だった。



「ユウキ。 ……ありがとう。あなたに出会えてよかった……」


 最後の力を振り絞って戦おうとするユウキに、シャルルはもう一度強く確かめるように抱き締めた。



「こんな気持ちになったのは生まれて初めてだよ。 大好きだよユウキ。 最初で最後の私が愛した人 」


ユウキのおかげで覚悟が出来たよ。


「最後にあなたに会えてよかった」


「シャルルちゃん……」



 顔を寄せあって見つめあう二人は、確かめるようにキスを交わした。


 すると………




  パァァァァァァァ!!!!




「「 えっ? 」」




 見るとユウキの黄金の手が反応している。



「こっ、これはゴールドフィンガーが共鳴している?!」



 ニーアちゃんの時と同じように頭の中で強制的にスキルを発動させようとしている。


 少しだけ戸惑うシャルルにユウキが話す。



「シャルルちゃん。もしかしたら……この境地を打開する方法が一つだけあるんだ……」



「え? う……うん。 私に出来ることなら何だってするよ」



「それは、この力なんだ」



光輝く手を見せてシャルルに説明する。



「この力が使えるのは体力的に後一回が限界なんだ……。

だから渡したら俺は力を失って戦えなくなってしまう。

本来は俺が行ってライオネスを倒すはずだったんだけど、それよりも、可能性のあるシャルルちゃんに賭けたいんだ。

俺の為に、この力を使って戦ってくれるかい?」




「ううん。 ユウキの為だけじゃない。 この国の未来の為に私は戦うよ」



「なら、俺の最後の力をシャルルちゃんに渡したい。 そのためにはちょっと覚悟が必要なんだけど、聞いてくれるかな?」




「あの奇跡の力を? 私はどうしたらいい?」


「それは……ごにょ……ごにょ」





「えっ? ……うん。 ………大丈夫……分かった」


 恥ずかしがりながらも承諾するシャルル。




「なら、善は急げ……だ。 光のカーテン! タイガ少しの間、外の見張りを頼むよ」


「ガルル!!」


 返事をしたのち二人は黄金に輝く光のカーテンに包まれていく。


 残された少ない魔力を使って全ての望みをシャルルに託す事にしたユウキは、全力でシャルルに聖気を注ぎ込む!




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